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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
308/411

単独異能者

「現存する敵対勢力……その詳細などはありますか?」


 ユティスの問い掛けにオーテスは資料に目を落とし、


「能力や構成員などについては現時点でこの資料に記載されている事柄のみ……つまり、ユティス様が把握されている情報と同じレベルです」

「他にも切り札があると考えて良いのでしょうね」

「だと思います。西側を大きく傷つけた勢力と共に、警戒し続ける必要があるでしょう」


 そう述べ、オーテスはさらに続ける。


「マグシュラントについては後で語るとして、次は西側諸国に仕掛けた残る敵対勢力について。といってもこちらはたった一人で動いていますが」


 言った後、新たに資料が配られる。それは現時点で把握できた一人で行動する異能者の情報だった。


「現時点で、名前など詳細についてはわかっていません。突如現れ被害を残していく……その対象も異能者であったり、あるいはまったく関係のない人間であったりと、狙いも不明瞭です」

「これは私達の国の見解ですが」


 オーテスに続いて口を開いたのは、レオ。


「戦った騎士によると、我を忘れているように見えたそうです」

「暴走しているということですか?」

「常に暴走というわけではないと思います。西部の方々は知っておいでかと思いますが、明確に異能者を狙ったケースもありましたから。なので私達の見解としては、暴走状態と平常の状態が交互にやってきているのではないか、ということです」


 レオの言葉に幾人かが頷いてみせる。同意ということのようだ。


「どちらの時間が長いかなどについては不明確ですが……彼は平常時に異能者を狙っている。そこは会話をした者の証言などから、間違いないかと思います」

「彼についてもマグシュラントの関係という認識でいいのか?」


 ナサが口を開く。それに対しオーテスは首を左右に振った。


「そう決めつけるのはまずいと思います。その狙いが何なのか……決定的な違いは単独で動く者は異能者を狙う以外に何か計画的な行動をとっているわけではない。他の二勢力……例えばイドラという人物については、国々を巡り目的を成そうとしていた。けれど単独で動いている者は異能者の噂を聞きつけそこへ向かい攻撃をしている……どちらかというと場当たり的な動きです」

「――何か、異能者としての役割があるのかもしれません」


 と、ユティスが発言。そこでオーテスが、


「役割、ですか?」

「資料に記載してありますが、異能者同士を戦わせようとするまったく違う勢力が存在しています」


 ユティスはそう前置きをする。ラシェン侯爵は彼らとつながりがあるにも関わらず、今回彼らに関する情報をここで提示するべく資料にも記載した。


「彼らについても何をしているのかわかりませんし、警戒すべき勢力だとは思いますが……一度、ロゼルスト王国内の戦いで彼らと取引をした際、単独で動く人物を倒したなら、この戦いがなぜ行われ、どういう意図があるのかを話すと明言していました」

「……彼らと再度接触することは?」


 オーテスの問い掛けにユティスは首を左右に振る。


「現在は姿を消しました……僕らは政敵を倒すため。そしてその勢力はその政敵を僕らに倒して欲しくて情報を提供した形でした」

「なぜそうした場に出てきたのでしょうか?」

「僕らの政敵もまた異能者でしたが、記憶を操る能力を持っていました……その能力がどうやら、彼らにとって都合の悪いものに変容したらしく、協力を。彼らの言動からすると、戦闘能力を持たないことが問題だったようですね」

「……そうした存在がいることの是非については置いておくにしても、彼らは直接異能者同士が戦って欲しいと」

「そのようです。これは推測ですが……彼らは異能者同士を戦わせ、誰が一番なのかを決めようとしているのかもしれません」


 その言葉に会議の場が沈黙する。誰が一番なのか――そんなことをして意味があるのか。


「……彼らは今回の会議についてどう思っているのでしょうね」


 フレンが口を開く。ユティスは「わかりません」と答え、


「協調関係を結ぼうとしている以上、彼らの意には反することになる……面白くないと思っていてもおかしくはない」

「そして戦えば彼らの思うつぼだと」

「そういうことになりますね」

「……色々と話がややこしくなっているので、整理しましょうか」


 と、オーテスが述べる。


「異能者を狙う勢力は残る二つ。そして今回の席上にいる異能者達と、それを監視する勢力……現在は攻撃的勢力と私達がどう向き合うか。そして監視する勢力はどういう動きをするか観察している、といったところでしょうか」

「そういう見解で良いと思います」

「わからないことが多いため、モヤモヤした感情もありますが……ともかく、この席上で一つ決めなければいけないことがあります。それは私達が今後どうすべきか」


 来た――そんな風にユティスは心の中で呟く。


「情報交換を行うことで連携を図るといった結論が無難……ではありますが、異能者との激突はそれこそ今日か明日か、という可能性もゼロではありません。こうして集まることができるのも下手すればこれが最後かもしれません。だからこそ、この場で決めなければならない」


 そう告げるとオーテスは会議の席上にいる面々を一瞥し、


「具体的な案はありますか?」


 ここだ、とユティスは思い――静かに手を上げる。


「これは提案というよりは、ロゼルスト王国彩破騎士団の考えですが」

「構いません、どうぞ忌憚なくお話しを」


 オーテスが促す。それにユティスは頷き、会議の席上で語り始めた。


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