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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
304/411

会議の場

 各国の代表が集まり、会議の席が開かれることになったのはユティス達が町に到着してから五日後のことだった。


「話し合いが上手くいくことを祈っている」

「ラシェン公爵の方も」


 ユティスとリザ、エドルは宿を後にして、改めて行動を開始する。ちなみに護衛にはこの国の騎士が伴う形となる。


「さて、どうなるかしらねえ」


 どこか悠長にリザが言う。一方エドルなんかはやや視線が下で、どこか不安そうな表情。


(何が起こるかわからないし、そういう顔つきになるのは仕方がないか)


 リザの場合はおそらく「悩んでも仕方がない」という開き直りから来ているのだろう――それほど経たずして会議の席に到着。元々国政に使われる議事堂の一つであり、今回の会議のために貸し切りという形になっている。

 中へ入ると国の騎士や役人と思しき人物が色々と動き回っている様子が。ユティスはさてどうするかと悩みながらそうした人々に視線を送る。


 今回会議の席上の警備はゾディア王国の方々が行うこととなっている。他国の人間が立ち入らないようにするための処置なのだが、もしこの中に敵対勢力の間者でも紛れ込んでいたら――


「ご心配には及びませんよ」


 その時、まるでユティスの内心を把握しているかのような声が飛んできた。

 横を向くとそこには一人の男性騎士。ゾディア王国の人間であることは装備を見れば一目瞭然であり、濃い金髪と黒い瞳が爽やかな印象を与えてくる。


「ゾディア王国騎士、オーテス=ランクオンと申します」

「……ロゼルスト王国彩破騎士団副団長、ユティス=ファーディルです」


 自己紹介をするとオーテスは柔和な笑みを伴い、


「お話はしかと伺っております……どうやら騎士達に疑いを持っておられるようで」

「……ご不快かと思いますが、騒動があったため警戒していると思ってもらえれば」


 ユティスの言及にオーテスは「当然です」と応じ、


「こうした場ですから、あらゆることを想定し動くのは当然でしょう。しかし心配はいりませんよ」

「何か根拠があるんですか?」

「はい」


 応じ――彼の瞳に変化。それはまさしく『彩眼』だった。


「……あなたは――」

「私がゾディア王国の代表者、ということになりますね。会議にも参加させていただきます」


 ニッコリと語るオーテス。


「そしてユティス様の懸念ですが、これは私が異能を持って間者がいないと判別できるため、大丈夫と言ったわけです」

「異能、ですか?」

「はい。私は簡単に言えば異能発動中は他者の魔力の動きを読み取ることができます」


 読み取る――魔力に関わる異能というわけか。


「これは戦闘に対し魔力の流れでどういう魔法や技を放ってくるのか予測する、などに使えるわけですが……それ以外にもう一つ、感情を読み取る技法もある」

「感情を察することができるため、少なくとも後ろ暗いような感情を抱く人間がいないとわかっている……こういうことですか?」

「そうですね。私の異能について疑われるとどうしようもないのですが……ここはゾディア王国が責任を持ってやりますので、よろしくお願いします」


 礼を示すオーテス。それと共にユティスは彼がこうやって語る目論見を理解する。


 ゾディア王国としてはあくまで中立の立場。中立だからこそ会議の席で主導的な役割を果たしている。

 なおかつオーテスが「感情を読み取る」という能力を所持しているということは、嘘などについてはあっさりとわかるわけだ。つまり後ろ暗い考えを抱いていても彼にはわかると。


 これはおそらく牽制的な意味合いもある。要は「下手に嘘をついても意味がないどころか不利になるぞ」というわけだ。ゾディア王国としては中立を維持することで主導権を握りたい――ということだろうか。


「今回私が司会進行をやることになります」


 続けてオーテスが語る。


「ゾディア王国代表という立場ですが、この国で会議が行われている以上は、私達が議事進行をすることになりますし、私以外にいないとも思っています」

「立場的にそうなるのは理解できますが、そちらとしては色々と主張したいこともあるでしょう。議事進行役になったらそうしたことができなくなるようにも思えますが」

「異能者同士の話し合いなわけですが、私としてはあくまでゾディア王国の中立としての立場を優先とする……国の利益などについてもほとんど考えていませんので、ご安心ください」


 そう彼が語る間にも準備が進められていく。ユティスとしては「わかりました」と答える他なく、ひとまず彼とは分かれ、会議室へ入ろうと足を向ける。

 騎士の案内に従って訪れた場所は、円卓が設けられた広間。そこには先に到着していたのかリュウトやレオが待っていた。


 ただし双方とも一人であり、リュウトの友人であるシズクや、レオの主人であるコーデリアはここにいない。別の場所で国の役人同士が火花を散らし、交渉を加速させているところだろう。

 彼らは小さく会釈すると、それっきりで会話が途切れる。まだ他の参加者は登場していないが、それほど経たずとも来ることになるはず。


 ユティス達はレオやリュウトと離れた位置で座る。もし多数決などが発生した場合はできる限り連携して対応する――これは事前に打ち合わせた通りなので問題はない。


(問題は他の国々がどう考えているのか)


 円卓は広く、参加者は相当いると考えられる。レオやリュウトと手を組んだわけだが、そうした連携が無意味なほどの人数。

 単純な多数決だけでは勝てない可能性がある。だとするならいかに支持を集めるか――ユティスは息をついた。最初から謀略を含め頭を働かせなければならない。頭痛のタネは増えるばかりだ。


 そんなことを思いながらユティスが待っていると、扉が開く音。視線を転じると、新たな異能者が姿を現していた。


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