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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第十話
302/411

騎士団としての主張

「他に協議しておくことはあるかしら?」


 コーデリアが問う。ユティスからは特になかったのだが、


「なら、私からいいですか?」


 手を上げたのはリザ。


「先ほどあなたが言った通り、今回は国同士の思惑もある。けれどこの場に集まった面々は、多少なりともその辺りを考慮して動く、という解釈でもいいのですか?」

「……あくまで自国の利益に沿った上で、だけれど」


 コーデリアは応じる。彼女としてもそうとしか答えようがないのかもしれない。


「私は異能者レオと共に今回この会議に出席する……しかし、全権委任というわけでもないし、別に代表者がいるのよね」

「なるほど……ユティスさん、私達のスタンスは――」

「そうだな。ラシェン公爵も事前に語っていたし、その辺りのことを先に言っておきます」


 ユティスはそう前置きする。コーデリアやリュウトは視線を注ぎ言葉を待つ構え。


「まず、僕らロゼルスト王国……というより彩破騎士団としては、何よりも異能者との戦いを優先したい。自国だけでなく、他国で戦いがあった場合でも、できることなら協力したい」

「ただあなた方は相当大きい力を抱えている」


 コーデリアが言う。ユティスとしても懸念しているのはそこだった。


「はい。僕らは敵対勢力の一つを打ち破り、名声を得た……それにより今回の会議において多少なりとも発言力が上かもしれませんが、その名声により他国としては介入されるということを警戒するでしょう」

「彩破騎士団としては異能者との戦いを優先したいことから、まずはそこをどうしても確約したいと」

「発起人であるラシェン公爵も同じ考えであり、おそらく根回しもやっている……けれど彩破騎士団が直接乗り込むということは、他国としてもあまり好ましくないと思われるのも仕方がない」


 そう言うと、ユティスは嘆息する。


「ただ、技量面を含め、実力について多少誤解の部分もあります。例えば十万の兵団を破ったことについて。確かに僕の異能で剣を生成し十万の大軍を倒したのは事実ですが、それは入念な準備と、僕の魔力と土地が上手く結びつく場所などを予め国が調査していたからできたことです」

「あなたの異能は、それほど即効性があるわけではないと」


 コーデリアの指摘にユティスは頷く。


「はい。もう少し踏み込んだ場合、彩破騎士団は少数精鋭……異能者と戦える力を有してはいますが、例えば大軍団と戦うような能力を所持しているわけではない」

「なるほど。自分達が他国に足を踏み入れても、国をひっくり返すことができる戦力ではないと言いたいのね」

「そうです。加えてこちらの動向を逐一調べ、なおかつ首都など政府機関などが存在する場所などには許可なく立ち入らないなど、制約をつけてもいい。おそらくそういう形でしか大陸をまたいで活動することは現段階では難しいでしょうし」

「――敵としては、政治中枢を狙うとは思うけれど」


 そこでリザは肩をすくめる。


「さすがに中央が危険だと主張しても、許可はできないでしょうね。もし許可が下りたのであれば、惨事が起きた後、かしら」

「西側諸国の被害も、そうした対応に遅れたという点で被害が拡大したのは事実」


 今度はコーデリアが口を開く。


「人は被害を受けてから、過ちに気付くものよ」

「悲しいですね……ともあれ彩破騎士団のスタンスはご理解頂けたかと思います」

「ええ、そうね……つまり、私達を始めリュウトさんに対しても、今ユティス様が言ったことを認めてもらうよう賛同すればいいということ?」

「平たく言えば、そうなります」


 ユティスとしては賛成意見者が出てくれば、他の国々も賛同しやすくなるのではないか――と思う。ただここは異能者同士の話し合いだけで解決できる問題ではない。ラシェン公爵を始め、事務方の努力次第ではある。

 ただそれでも、異能者同士である程度意見をまとめていれば、説得力なども上がり話が通りやすくなる可能性はある。


「他に要望というのはあるの?」


 コーデリアの問いにユティスは首を左右に振る。


「僕からは、政治的な要素はないですよ」

「そう……ラシェン公爵もその辺り譲歩して動くのかしら」

「わかりませんが、あの人も敵対勢力の恐ろしさを理解していますし、そんな感じで動く可能性は、あります」


 同意しながらユティスは思案する――彩破騎士団の風通しを良くするというのが今回の大きな目的ではあるが、これをできる限り進めるとなると、ロゼルスト側としては色々と譲歩しなければならないかもしれない。

 ラシェンは「任せろ」と言っていたが、どこまでやれるのか。本来こうした国際会議の場では、幾度か交渉を重ねて話を進めていく方がいいはず。けれど敵対勢力がいつ動くのかわからない現状で、二度三度開催するというのは得策ではないし、対応に遅れが出るかもしれない。


「……リュウトさんは、どうです?」


 ユティスが問う。彼は頬をかき、


「正直、一回の学生身分でできることはたかがしれていますし、要求するとか以前にきちんと話についていけるか不安なくらいですけど……ただ、異能者との会議で決まったことについては、できる限り尊重しようとは思っています」


 そこでリュウトは難しい表情を見せた。


「東西の騒動について、ネイレスファルトは理解し、その脅威も認識していますからね……おそらくロゼルスト王国と同様、敵対勢力に懸念し、対応に尽力する方向で動くと思います」


 実際、ネイレスファルト自体が騒動で色々と被害も遭っている。それを考えれば彩破騎士団の動きに政府側も賛同してくれる公算は高い。


「わかりました……こちらとしては現状、今の要求だけでいいです。後はこれを持ち帰って、どうするか検討し、会議までに連絡を頂ければ」

「できるだけ良い返事ができるようにするわ」


 コーデリアが言う。ユティスは「頼みます」と告げ――この場はお開きとなった。

 部屋を出て廊下を歩く間に、リュウトは大きく息を吐いた。


「なんだか、緊張しました」

「私なんか口を挟めなかったわよ」


 シズクが言う。それにユティスは柔和な笑みを浮かべ、


「僕達はもう国の代表者みたいな形で、さっきの会話はまさにそれでしたからね。ただ異能者同士の会議の場合はたぶん趣が異なると思いますし、そう肩肘張らなくても良いとは思います」

「そうだといいですね」


 彼が返答した時、ユティス達は店を出る。そしてリュウトは手を上げ、


「ユティスさん、また会議の席で」

「リュウトさんも」


 そうしたやりとりを交わし、ユティス達は別れた。


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