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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第九話
295/411

領地にて――

「まず、各国に連絡を行って異能者を一箇所に集め、会議を開くという形で打診している。いずれ異能者同士の戦いが生じる際、どのようにすべきか……そういったことなどを協議したいところだ」

「でも各国の思惑もありますよね?」


 ユティスの疑問にラシェンは深々と頷く。


「そうだ。だから一筋縄ではいかない……と思うところだが、実際は決して難しくない」

「どうしてですか?」

「異能者を殺して回るような存在がいるからな。彼らを利用し、協調関係を結べばいいし、最優先議題とすれば集うだろう」

「つまり会議の大きな議題としては、異能者の敵対勢力をどうすべきか。あるいはどう連携すべきか、ということになりそうですね」

「そのような形で間違いない」


 ラシェンは応じた後、自身の見解を述べる。


「異能者同士、どのような立場なのかなど、不明瞭な点が多い上に国々もどう扱っていいかわからない面が混乱を助長させていた。つまり異能者に対し国がどう対応するのか。そして異能者同士がどういう考えなのかを明確にすることで、敵対勢力以外の戦いを避けるというわけだ」

「各国が異能者とどう向き合うかについては、僕らではなく国の重臣達が話し合うべきですよね?」

「そうだな。よってこの会議は異能者とそれ以外で話をするべきだ」

「……そういった面々が一度に集まるとなれば、危険な面もありますよね」

「確かに、な。とはいえそこは私達が腐心すべきことだ。最善を尽くす」

「どのくらいで実現しそうですか?」

「わからない。ただいずれ国々を蹂躙するような戦いが起こるとわかれば、各国も腰を上げざるを得ないだろうから、開催できないということにはならないだろう……加えて敵対勢力の被害を受けているところもあるようだからな。近隣の国々は了承しているため、できることならスムーズにいきたいところだな」

「わかりました。その点についてはお願いします」

「うむ」

「外のことについては以上ですか?」

「ああ。国内の問題については……おおよそ解決したと言っていい。ヨルク殿も話をしたと思うが、おおよそレイテルの陰謀ということで片がついたからな。魔法院側も全面降伏であるため、まとめ上げるのにさしたる障害はないだろう」


 ――主導的な立場にあるサフィ王女が彩破騎士団側というのも功を奏しているだろう。よって異能者との戦いで今後邪魔立てしてくる勢力は、国内にいないと捉えていい。


「国内の情勢が落ち着いたため、しばらくの間はゆっくりできる……その間に今回の戦いを通して得た技術などを練り上げ、次の戦いに備えてほしい」

「はい」

「あとは、そうだな……彩破騎士団についてだが、増員などはするか?」

「増員、ですか」


 ユティスは思案する。確かに人が多い方がいいのは事実だが――


「……少し、考えさせてもらえませんか?」

「そう深刻に受け止めなくてもいいぞ。人が必要ならば銀霊騎士団に頼るという手もあるからな。二つの騎士団で役割を変える、というのも一つの手だ」

「そうですね」


 ともあれ、もし採用するにしてもリザやアシラと対等に戦える人物ということになるわけだが――ハードルは高いかもしれない。


「ふむ、その辺りはおいおい考えていけばいいだろう……さて、こちらの話はこのくらいにして、だ。ユティス君、領地に戻る件についてだが」

「もしかして、何か問題が?」

「いや、情勢が落ち着いているし、こちらから反対するようなことはない。ゆっくりしてくれればいいさ」

「そうですか……もしかしたら騎士団の面々を他にも連れて行くことになるかもしれませんが」

「誰が行くかだけは伝えてもらえればいい」

「わかりました」


 そうして会話が終わる――ユティスの思考が領地に戻った後のことに向いた。






 ――戦いの処理が一段落して、ユティスは頃合いを見計らい自身の領地へと戻る。とはいえここで暮らすということではない。異能者との戦いが終わるまでは、間違いなく王都が拠点となる。


「セルナがなんだか上機嫌なんだよな」


 ユティスは呟く――今回同行したのはフレイラとティアナ。そしてセルナも帯同し、お茶会の準備を進めていた。

 これを提案したのはユティス本人。招待したのは他でもない――自分の家族。


「これで少しは仲が戻ればいいけどね」


 フレイラが言う。けれどユティスは苦笑した。


「溝を埋めるには時間が掛かるとは思うよ……今回のお茶会で全てが元通りになるとは思ってないし」


 そう言いながらユティスは空を見上げた。


「それに、色々と戻らないものもあるからね……フレイラ、お姉さんとロイ兄さんは――」

「姉さんは小さく首を左右に振った。でも謀略に手を染めていたから、って理由でもないかな」

「そっか……」

「状況も変わってしまったし、私のこともある。前みたいにはいかない、かな」


 フレイラはそう言いながら苦笑めいた表情を浮かべる。ユティスがそれについて訊こうと思った矢先、視界に見知った人物達が映った――兄弟達だ。


「ユティス様、私達が一緒でもいいんですか?」


 ティアナが尋ねる。それにユティスは肩をすくめた後、屋敷を指差した。


「他に親族じゃない人だっているんだ。それにフレイラやティアナは家族とも関わりがあるからね」


 告げたと同時に屋敷の扉が開く。そこにはヨルクが。


「お、来たようだな。さて、始めるとしようか」

「……あの人が仕切るつもりなのかな」

「さすがにそれはないと思いますよ」

「何にせよ、ユティス達だけだと堅苦しい雰囲気になりそうだし、あの人がいて良かったんじゃないかしら」


 そんな感想を口々に述べた後、ユティス達は歩き出す――そうして、ファーディル家の領地は穏やかな午後を迎えることとなった。


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