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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第九話

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せめぎ合い

 ケインの異能によりユティス達は完全に動きを拘束された。よってテオドリウスとの戦いはジシスとアシラに託された――いや、


(あの二人が敗れた場合、こちらに抵抗する余地はなくなるかもしれないな……)


 彩破騎士団でも随一の剣術を持つアシラと、数え切れない戦歴を持つジシス。この両者は近接戦闘という部分において彩破騎士団の主軸を担うと言っていい。その両者が敗れれば、おそらくユティス達だけでは対抗できず、援軍が来るまでもたないかもしれない。


 銀霊騎士団との戦いで体の調子が戻っていないフレイラや、ログオーズとの戦いで魔力を消費したリザではテオドリウスに対応するのは難しいだろう。かといって余裕のあるティアナも聖騎士候補という肩書きはあれど、その剣術はアシラなどと比べれば下であると当の彼女も認めている。


 もしテオドリウスが勝利したのならば、ヨルクが来ない限り形勢は圧倒的に不利になる。それはつまり――


 テオドリウスが仕掛ける。剣戟が放たれると同時、ジシスがそれを最初に抑える。町中に金属音が響き、一時両者はせめぎ合いとなる。

 ここでアシラが横手に回り仕掛ける――彼の技量ならばほんのわずかな時間があれば斬撃を加えるはずだが、テオドリウスはそれをすぐさま判断すると、異能によりジシスを無理矢理後退させる。


 だが、異能を使えば剣術で使用する分に魔力を使うことはできないはず――しかしアシラが斬り込んできたところにテオドリウスは即座に反応。双方の斬撃が激突するが、膂力で押し込まれるようなことにはならず、テオドリウスとアシラの攻撃は完全に拮抗する。


「……異能を完璧に使いこなしておるな」


 ジシスが呟く。それにテオドリウスは肩をすくめながらアシラの剣を大きく弾いた。


「当然だ。こうして熟練した戦士を相手に応じれる――その証明にはなったな」


 ――先ほど異能を用いてジシスの攻撃に対抗したわけだが、彼の矛を押し返した後、即座にアシラへ応じるべく異能を解除して対応した。つまりテオドリウスにとってみれば異能のオンオフについては即座に可能であって、さしたる問題ではない、ということ。


 同時攻撃を行えば――というのはそもそも二人が異能の的になる。かといって一方がリザのように攻撃を無理矢理受け止め対応するにしても、異能を用いれば進むも退くも自由自在。

 なおかつリザのように片方が犠牲になって、という手法も使えない。テオドリウスは相手の動きを制限できる以上、身を挺して相手の隙を作っても確実に潰されてしまう。


(思った以上に厄介な異能だな……)


 攻撃や防御についてのアドバンテージをテオドリウスが握っているような状況下。これに対抗するにはどうすればいいのか。

 ジシスやアシラに攻略法が見いだせるのか――それにかかっている。ただ相手としても援軍の到着は避けたいはずであり、テオドリウスとしてもどこかで攻勢に転じなければまずい。


 もし勝機があるとすれば、それはテオドリウスが攻撃を行い隙が生じた時――


(けど、僕ですらそう予想できるのに彼が対策をしていないはずはない……)


 胸中でユティスが呟く間に今度はアシラが仕掛ける。鋭い一閃で、その刀身に凄まじい魔力が乗っているとわかる。

 まともに食らえば一撃で――しかしテオドリウスはそれを異能により押し留めた。


「この異能は絶対だ。力押しは通用しない」


 冷酷に告げる。アシラはもしかすると身体強化を利用し強引に突破しようとしたのか――けれどそれは実らず。

 多種多様な異能の中で、テオドリウスの持つ異能の特性は極めてシンプルだが、その特性はやはり脅威。テオドリウスは闘士として相性が悪いと語っていたが、そんなことはない。むしろ彼の能力は闘士に与えられてこそ発揮されるもの。


「試行錯誤するつもりなのかもしれないが、さすがにその余裕を与えるのはまずいな」


 テオドリウスが評する。やはりここは短期決戦――しかし攻勢に出れば当然隙も生じるはずだが。

 相手が仕掛ける。目標はジシスであり、まず両者は正面から剣と矛でぶつかった。


 結果、互角であったのか一瞬動きが止まったが、テオドリウスの異能がジシスの体を吹き飛ばす――


(――待てよ?)


 ここでユティスは疑問が湧いた。異能と剣術において魔力を行使することは相反しているはず。なのになぜジシスの攻撃を受け止め、ノータイムで異能を使っているのか。

 頭の中に突然湧いた考えだったが、ほんの一時でユティスは答えを見出した。


(異能によって、自分の体そのものを押し留めている……?)


 最初打ち合った瞬間は自らの剣術で対応しているだろう。けれどどこかのタイミングで異能発動に切り替えている――それを決して悟られないようにしてるくらいに異能と剣術の切り替えはスムーズ。


(ということは、付け入る隙はないのか……?)


 いや、待てとユティスは思い直す。仮にテオドリウスの攻防が全て異能によるものだとしたら――だが豊富な経験を持つジシスがそれを捉えることはできるはず。それに最初の激突には多大な力が必要だ。その部分はやはり異能よりも自らの力を利用するはず。


 しかしどこかのタイミングで異能の力に切り替え、ジシスやアシラの意表を突く。単純な剣術勝負では数の上で不利な以上、テオドリウスは確実に剣術から異能に切り替えて攻勢に出ている。


(そのタイミングを捉え、隙を見出すか……あるいは――)


「相当、鍛錬したようじゃな」


 ジシスが声を発する――おそらく、ユティスと同じ考えに至った。


「剣術と異能……どこで切り替えているのか、皆目見当がつかない」

「闘士としての実績によるものだな。微細な魔力を操ることができるようになったのは、ひとえに闘士として腕を磨き続けたからだ」

「なるほど……じゃが、手がないわけではないな」


 ジシスが言う。何か突破口を見つけたか。対するテオドリウスは肩をすくめた。


「ハッタリか、それとも……まあいい、こちらとしても手法は浮かんだ。ここで終わらせてもらう」


 テオドリウスもまた自信に満ちた表情で述べる……仮に両者の言葉が本当であれば、次の勝負で片が付くかもしれない。


(ジシス、アシラ……)


 二対一で有利な状況にも関わらず、ユティスは不安に思いじっと二人を見据える――そして、テオドリウスとジシス、両者はまったく同じタイミングで足を前に踏み出した。


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