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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第九話
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闘士覚醒

 リザが異能により行使した力は、身体強化――そうユティスが確信させられるほどの、勢いある動きだった。


「――情報から色々できるのは知っている」


 ログオーズは即座に反応。リザが放った拳をまずは正面から受けてみせた。


「ただ、致命的な欠点……というか弱点もある。異能を使用する際、強力な能力を活用しようものなら当然、それだけの魔力を消費する」


 リザは拳を引くと、今度は蹴り。だがログオーズは回避した。


「そしてお前もテオと同じだ。異能がどれだけ強力であろうとも、一度に行使できる能力は一つだけ」

「――で、それがどうしたの?」


 リザが問う。なおも攻め寄せようとした時、ログオーズが先んじて仕掛けた。

 斬撃――それもまたユティスには捉えられない一撃。ただ真っ直ぐリザへと向かうのは間違いなく、食らえば窮地に追いやられるが――


 直撃する寸前で剣が止まった。何事かとユティスが思った時、気付く。

 二人の横手に回ったティアナが『顕現式』により生み出した弓に『幻霊の剣』で生み出した矢をつがえ、構えていた。


「……撃ち抜かれたら死にはしないが、戦闘不能にはなりそうだな」

「ええ。この特性もあなた方は理解しているのでしょう?」


 ティアナが問う。ログオーズは答えなかったが、矢に注目する視線から、その威力が如何ほどか把握している様子。


「イドラ、流れ矢に当たったらシャレにならないぞ」

「わかっているさ」


 後方からイドラの声。ティアナとしてはあわよくば彼に狙いを定め――という目論見だって抱いているはずだが、さすがに警戒されるか。


(そもそも、彼自身戦闘能力が皆無だと思ってはいけないな)


 闘士でなくとも魔具などを利用し戦闘手段を所持していると考えて間違いないはず。ただティアナの矢が狙いを定めたら、イドラがどういう魔具を所持しているか、検討をつけることだってできるかもしれない。


(ただ、そうした余裕はありそうにないか……)


 ログオーズの実力は果たして――彼は一度引き下がる。そしてリザとティアナが改めて対峙した時、


「……あまり時間を掛けると、そちらは援軍が来るだろうな」


 ログオーズが声を発した。


「特に聖賢者……ヤツが来てもおかしくない。彩破騎士団の人数が少ないことを踏まえれば、現在はこちらを逃がさないよう結界の強化をしている段階で、そちらに人員を割いているとみるべきか」

「その考えは正解だろうな」


 テオドリウスの発言。見ればアシラやジシスはなおもテオドリウスと向かい合い、膠着状態。


(……とはいえ、時間が経てば不利になるのは相手だ)


 結界を完璧なものにして、援軍が来たら総攻撃を仕掛ける……現状が維持されればそういう戦い方で問題ないだろう。とはいえその狙いは相手も気付いているはずであり、


「テオ、どうする?」


 口を開いたのはログオーズ。それに彼は、


「……どちらが先か、だな」

「ならこっちがやろう」


 即答。そこでユティスは思い切って彼に話し掛けた。


「――そちらの陣営に加わったのは、理由があるのか?」

「俺については深い意味などない」


 と、ログオーズは肩をすくめた。


「こちらとしてもそれでいいさ」


 イドラが続ける。力を得られるから――つまりは、そういうことなのか。


「彩破騎士団のような高尚なものは持ち合わせていないさ……もっとも、テオはこの活動を通して色々とやりたいことはあるみたいだが」

「それを話してくれるってことは、なさそうね」


 リザが述べる。それにテオは視線を外さぬまま、


「喋るつもりはないな」

「そう……残念だわ。で、さっきの話だけれどログオーズ、あなたが先に本気を見せるってことかしら?」

「まあそうだな。どっちが先に本気を出すのかって話だが……一つ注意点がある」


 ここで魔力がズグン、と震える。


「俺で終わってしまったら、テオの本気は見られないぞ」

「あなたは私が倒すから問題ないわよ」

「ほざけ」


 直後、ログオーズの体に大きな変化が。褐色の肌が漆黒に覆われ始める。それは異様な光景であり、やがて全身が漆黒によって包まれた。


「それじゃあ、始めようか」

「それもまた、魔具を取り込んだ力かしら?」

「その通りだ……さっさと終わらせるぞ!」


 絶叫。それと共に石畳の道を踏み砕く勢いでログオーズは前進する。

 狙いはリザ。即座に彼女は応戦し、身体強化を施し真正面から受ける――直後、弾き飛ばされたのはリザ。


「っ……!?」

「はははは! 無駄だぞ!」


 哄笑を上げながらログオーズはさらに追撃しようと迫る。


「異能で強化しようとも、この俺の力を超えることはできん!」

「相当無茶な強化を施したようね……!」


 リザは転倒するような無様な結果には至らなかったが、多少なりとも体勢を崩す。そこへログオーズは追撃を仕掛けるが、それを阻んだのはティアナの剣。

 『幻霊の剣』は使用せず、両手に剣を持ってログオーズの進撃に対抗する――が、さすがにリザの異能で耐えられなかった攻撃。彼女もまた、大きく弾かれる。


 とはいえ――リザが体勢を立直す時間を稼ぐことはでき、すかさずティアナの援護に入る。強化された拳がログオーズへ差し向けられる――が、彼はそれを避けきった。


「さすが、と言いたいところだけど」


 そこでリザが笑う。何かを察したような表情。


「攻撃を受けることはないってことは、食らったらまずいとわかっているから、かしら?」

「――次が控えているからな。無駄に怪我はしたくないというだけの話だ」

「そう。少なくともあなたの力は防御能力に特化したものではないってことね」


 リザの物言いにログオーズは一度後退し、彼女とティアナを見据える。


「心理戦をやるつもりはないぞ」

「こっちも別にそういう意図はないわ……けれど、重要な情報を得たわね」


 リザはどこまでも笑う。それはまるで、勝機を見出したかのようなもの。


「ティアナさん、私が独断で動いていいかしら?」

「構いませんが……どうするおつもりですか?」

「なあに、簡単な話よ。私が隙を作るから、それに乗じて渾身の一撃を叩き込んでちょうだい」

「舐められたものだな」


 ログオーズが言う。けれどリザの不敵な笑みは消えない。


(どんな策があるんだ……?)


 ユティスが内心疑問を浮かべた時、リザが仕掛ける――同時に察する。この戦局の大きな山場が迎えようとしている、と。


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