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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第九話
279/411

異能と剣士

 ユティスはまず援護するべく魔法を起動しようとする――しかし、


(え……!?)


 体が、動かない。いや、それは体がというよりは内に秘める魔力の動きを拘束しているような感覚だった。

 疲労――ではない。視線を転じれば、こちらを射抜く少年の姿。


(異能……か……!?)


 ただその能力はあくまで動くことができないというだけで、それ以上のことは無理な様子。とはいえ出鼻を挫かれた形。こうなればユティスは事の推移を見守るしかない。

 ヒュゴとナナクの二人が一気にアシラへと迫る。傍らにはジシスがいるのだが、その彼に対し反応したのは褐色の闘士。リザの情報に寄れば名はログオーズ。


 そしてテオドリウスはリザとティアナを標的と定め――戦いが、始まる。

 最初に激突したのはアシラ達。先行したヒュゴの剣がアシラへと放たれ――


「ふっ!」


 アシラの息づかいがユティスにも聞こえた。

 両者の剣戟は、ネイレスファルトで遭遇した時と比べて明らかに鋭くなってる。仮にユティスに迫れば、逃げる術はないだろう。


 だが、アシラは――両者の剣をまずはいなした。


「――ほう?」


 褐色の男性、ログオーズの声が聞こえた。その直後、アシラは迫るヒュゴとナナクへ向け、斬撃を放つ。

 その剣は、明らかに二人よりもずっと鋭く、ユティスが知覚することもできないようなもの。ヒュゴとナナクの両者は即座に回避に移ったが――ナナクの対応が一歩遅れた。


 刹那、斬撃がその体に入る。魔具で強化していたはずの彼の体は――アシラの剣戟によって、倒れ伏した。


「なるほど、これほどの力を所持していても、一撃か」


 イドラの警戒するような言葉……とはいえ声色は目前の光景を楽しむかのような雰囲気さえあった。

 続けざまにアシラはヒュゴへと迫る。当然相手は形勢不利とみて即座に後退しようとしたが、アシラがそれを許さなかった。


 彼の一撃が、ヒュゴの体を薙ぐ――その身に剣を受けた相手はあっさりと倒れ伏し、これで二人戦闘不能になった。


「……凄まじい力だな」


 テオドリウスが感服したように告げる。その視線は油断なくアシラへ注がれる。


「魔具で強化した両者を瞬殺か……生半可な実力ではどうにもならないと」

「なら、どうする?」

「……イドラ、いいな?」

「ああ、構わないよ」


 主語のない会話だったが、それによりテオドリウスが前に出る。

 そこへ挑んだのは――ジシスだった。矛をかざし迷いのない一閃。肉薄して放たれたそれは、テオドリウスを両断するような勢いがあった。


 しかし、彼は――左手をかざし対応する。途端に動きを止めるジシス。異能の力――引力や斥力で対抗し、完全に勢いが止まった。


「なるほど、防御にも使えるというわけか……!」

「この異能は魔力に関わるものではない……が、利用の仕方を上手くすれば接近戦において絶対的な力を発揮する」


 テオドリウスが剣を抜く。そして一閃された剣戟は、ユティスにとって軌道を捉えることができなかった。

 ジシスは即座に退こうとしたが――動かない。ユティスは最初自分と同じ少年の異能かと思ったが違う。


(力を反転させ、後退させないようにしたのか……!)


 どういう状況なのかを悟り、思わず声を上げそうになった。けれどジシスのフォローに入ったのは、アシラ。


「ふっ!」


 斬撃はジシスへ集中していたテオドリウスの横から放たれる。それに相手も反応し、意識がそちらへ向いた矢先ジシスが退却を開始した。


「意識を逸らせば、異能は弱まる……か」


 ユティスは目の前の攻防を眺め呟く。というより意識を集中させなければ使えない異能ということだろう。

 実際、そちらに持ちうる力を集めなければならない以上、一人が囮でもう一人が攻撃、という形にすれば十二分に勝機はある。


「アシラ、助かった」

「いえ」


 ジシスとアシラが短いやりとりを交わした後、ジシスはテオドリウスへ語り出す。


「厄介な能力じゃな……加え魔力を集中しておらずとも、こちらに致命傷を負わせられる手はずになっているか」

「この異能は本来、剣士と相性が悪い」


 と、テオドリウスは告げた。


「魔術師ならば後衛である以上は意識を集中するだけの時間もある。だが俺のように効力を発揮させる間異能に力を集中せねばならないものは、俺が本来所有する闘士としての価値が下がる」

「じゃがそれを、鍛錬と武器でカバーしている、と」


 ジシスが応じた――ユティスには判別つかないが、おそらくテオドリウスが持つ剣が切れ味も相当で、魔力なしでもこちらにダメージを与えられるだけの力を持っているということだろう。

 さらに言えば、異能と闘士としての力は瞬時に切り替えも可能なはず。


「……この異能の弱点を補い、昇華した。もっともお前達二人を相手にするには、厄介かもしれないが」


 そこでテオドリウスは、これまで見せたことのないような鋭い眼光を見せる。


「だからこそ、ここで二人を倒すことができれば、俺の最強が証明される」

「ならば、やってみればいい」


 切って捨てるようにジシスは応じるが――双方、動きを止めた。

 二対一であるためかテオドリウスも無闇に攻めようとはしない――異能の特性を理解される前の段階だったのでさっきまでならば奇襲は通じたかもしれないが、現在は苦しいはず。


(膠着状態……となればもう一方は――)


 視線を転じる。ログオーズとリザ、ティアナがにらみ合うような形だった。


「で、リザ。そっちはどうするんだ?」

「どうしようかしらね」


 こちらは最初から動きを止め、双方様子を窺っている。


「言っておくがお前が異能者であることは知っているぞ」

「そう……ちなみにあなたはどうなのかしら?」

「どうだろうな」


 肩をすくめるログオーズ。ここで異能を所持していると厄介かもしれないが……と、リザの気配が変わる。

 間違いなく『彩眼』を使った。


「ほう、来るのか?」


 だが、リザは動かない……またティアナも右手には剣、左手には『幻霊の剣』を握り臨戦態勢に入ってはいるが、リザが立ち止まっているためか彼女もまた動いていない。


「テオドリウス達の戦いが終わるまで待つつもりか?」

「そういうわけではないけれど――ティアナさん」

「はい」


 言葉を聞くと、リザもどうやら踏ん切りが付いた――果たしてどう戦うのか。ユティスとしてはまったく実力が未知数のログオーズがどう立ち回るのかわからないため、不安もあったが、


「――行くわよ」


 宣言。同時、リザが足を前に踏み出した。


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