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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第八話
241/411

騎士団合流

 オズエルが屋敷を調査し始めた段階で、異変が生じた。


「これは……」

「どうした?」


 ユティスが問い掛けたと同時、魔力が屋敷内から発生する。

 何かが起きた。それを認識するには十分な変化だった。


「オズエル、この魔力をどう見る?」

「詳細は掴めないが、少なくとも結界内で何かが起きたのは明白だろう」


 彼は言いながら鉄格子の門に触れる。ユティスにも感じ取れる。門からほんの数ミリ隔てて結界が構築されている。


 オズエルは格子のない空間に触れた。本当なら門を越え敷地内に手を入れることができるはずなのだが、その手は門の向こうへはいかない。


「少し、魔力に干渉してみよう。運が良ければ反応がある」


 オズエルは言うと同時に魔力を――直後、


「これは……」

「オズエル、どうし――」


 ユティスが問い掛けようとした矢先、

 彼の立っているすぐ横に、光が出現した。


 即座に全員が門から退く。それは言ってみれば魔力の塊のようで、さらに光と魔力からユティスは一つ推測する。


「ティアナの、剣?」


 呟いた直後、光がさらに膨らみ、結界を破壊した。


「……っと、どうやら外に出られたみたいですね」


 先んじて外に出たのはティアナ。ユティス達が驚く間に、さらに後方からはリザやイリア。そして――


「――ユティス」


 フレイラが声を上げる。ティアナ達もユティス達に気付き、互いに目を合わせた。


「――怪我は?」


 ユティスは全員を一瞥した後問い掛ける。そこでイリアが負傷していることを察することができた。


「オズエル――」

「わかった」


 彼はすぐに了承し、イリアに近づく。横に移動し治療を始めた段階で、ユティスは口を開いた。


「ティアナとリザは?」

「大丈夫です。ユティス様はどうして?」

「アシラから様子がおかしいと連絡を受けて」

「差し出がましいとは思いましたが……」


 アシラが言う。次いで屋敷を見上げ、


「どうやら解決したようですね」

「いえ、来ていただきありがとうございます……ユティス様、城の方は?」

「どうにか対処したよ。フレイラ、事件についてはどうやら証拠も存在していないし、不問という形になりそうだ」


 そこまで語った時、ユティスはフレイラが握る剣に気付いた。

 見覚えがあった。というより、それは自らが創り出した武器。


「フレイラ、それは……」

「あ、うん」


 彼女は剣を鞘にしまうと、


「えっと、その。この剣は――」

「フレイラ様、ひとまず事情説明は後にしましょう」


 ティアナが言う。後方を気にしている様子であり、フレイラもそれに同意するのか押し黙った。

 よって、ユティスも話を戻すことにする。


「ティアナ……ララナス家の当主は?」

「私達を罠にはめ、それをどうにか撃退したら姿を消しました」

「すぐにここを離れるべきだと思うわ」


 リザが言う。ユティスもそれには同意だったが――ふと、屋敷を見上げる。


「……まだ何か仕掛けてくる可能性はあるのか?」

「わからないけれど、フレイラさんが言うには切り札があるらしいし」

「切り札? それは――」


 ユティスが問い掛けようとした直後だった。

 突如、ティアナが突破したことにより生じた結界の穴――そこから、途轍もない魔力が感じ取れた。


「っ……!?」


 ユティスが一瞬呻く程の濃い魔力。即座にフレイラ達も振り向き、


「まさか……」

「フレイラさん、これが切り札ってやつかしら」


 ティアナが声を上げ、さらにリザが問い掛けると、フレイラは小さく頷いた。


「そう、だと思う……」

「まずいな、これ。こんな街中で騒動を起こすのか?」


 ユティスは思わず言葉を漏らす。これほどの魔力である以上、周囲にも被害が出る可能性は高い――するとフレイラが声を上げた。


「すぐに……周辺の家などに避難を呼び掛けないと」

「避難……わかった。ジシス」

「道中詰所があった。そこに連絡してこよう」


 ジシスは指示に応じるとすぐさま駆け出す。アシラもそれを追おうとする素振りを見せたが、ユティスが止めた。


「アシラはここで待機してくれ……さて、どうする?」


 問い掛けたが結論は一つで間違いなく、代表してリザが言った。


「やるしかないわよね……周囲に被害が出ないように」


 表情は全員意見が一致していた。ユティスは即座にティアナが破壊した結界の穴を見据える。


「もう一度……入ったら出られると思う?」

「簡単な話よ」


 リザが言う。その瞳は、好戦的なものを滲ませている。


「勝てば抜け出せるわ」

「……ま、そうだな」


 ユティスは判断し、女性陣に視線を送る。


「全員、大丈夫か? 罠があったってことは、戦ったんだろ?」

「余力は残しています」


 先んじて答えたのはティアナ。


「私はまだ戦えますよ」

「同じく。それに、マリードとはしっかりと決着つけたいからね」


 リザもまた拳を鳴らしながら語る。そして、


「私も、戦いたい」


 イリア――ではなく、アリスがユティスに表明する。


「お願い、参加させて」

「……オズエル、怪我は?」

「傷はある程度塞いだ。出血量からすると十分動ける範囲ではあるだろう」

「……アリスも彩破騎士団の一員だ。僕は君の意向に従うよ」

「ありがとう」


 アリスが礼を告げる。その後、ユティスはオズエルへ問い掛けた。


「オズエルは?」

「周囲に被害をもたらさないようにするには、外部からララナス家当主が構築する結界の外に色々仕込んだ方がいいだろうな」

「なら、外側で検証をしてくれ。ジシスにはそう伝え、外側で周囲の避難指示を」

「わかった」

「よし、それじゃあアシラ」

「はい、やりますよ」


 剣を握りアシラは言う。そこでユティスは、フレイラへと視線を注いだ。


「フレイラ……」

「当然、私も」


 剣を握りフレイラは応じる。

 だが、その表情に何か別のものが宿っていることを、ユティスは認識する。


(……そうか)


 ユティスはここで理解する。今まで何か感情を隠すような表情を見せることがあった。それはきっと、記憶が少しずつ戻り色々と考えていたからだろう。

 けれど、今は違う。記憶が完全に戻り、ある考えを心に刻んでいるから、そうした表情をしている。


(なら、自分のやることは――)


 ユティスは一つの結論を導き出した後、全員へ告げる。


「行くぞ!」


 号令と共に、ティアナが先頭になり結界内へと動き出す。


 ――ユティスは、フレイラに対しどうするのか頭の中で浮かんでいた。けれどそれは後だ。全てが終わり、その後行動すればいい。

 結界の中へ突入する。同時、まとわりつくような強烈な気配が、肌を撫でた。

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