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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第八話
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宮廷内の混乱

 朝食後、ユティスとラシェンは従者を伴い城へ。馬車から降り城内へ入った直後、ユティスは騒々しいような空気を感じ取る。


「城内もずいぶんと慌ただしいようだな」


 ラシェンも言う――ただ一方、護衛であるオズエルとジシスの二人については周囲を見回すだけで感想などもない様子。


「さて、事情を話すにしても……誰に対して喋ればいいのかわからないな――」


 そんな風にラシェンが呟いていると――正面から人影が。見れば藍色の騎士服を着た、


「サフィ王女?」


 ユティスが声を上げる。すると相手――サフィは近づくと同時に歓迎の言葉を投げた。


「よく来てくれたわ……まず私が話を聞きます」

「サフィ王女が、ですか?」

「大臣他混乱しきっていて、あなた達に使者を送ったにも関わらず対応でき無さそうな雰囲気だったから……もちろん了解はとってあるわ。それに――」


 と、サフィ自身どこか困惑したような表情を見せ、


「話したいこともあるから」

「……わかりました」


 ユティスは承諾し、サフィと共に城内を歩き始める。廊下を歩いていると時折困惑した顔つきを伴いつつ走る文官の姿が見える。ユティスの事を一瞥し声を掛けたそうにする者もいるのだが、サフィがいるためかそれもすぐに収まり立ち去る。


 もしサフィがいなければ今頃質問責めにあっていたかもしれない――そんな風にユティスが思った時、進むごとに見かける人が少なくなっていることに気付く。


 なおかつ、見張りの数が少しずつ多くなる。護衛する騎士達もまたユティスやラシェンを見て聞きたそうな顔をするのだが、やはりサフィがいる以上言及の一つもなく、やがてとある一室の前に辿り着く。


 サフィを先頭にして中に入る――というか、そこは――


「え……?」


 入る直前、部屋の内装を見て躊躇った。どう見てもそこは私室のように見え――つまりここは、サフィの部屋ということだろう。


「私の部屋が一番話しやすいと思って」


 サフィが言う。さらに手招きまでするため、やむなくユティス達も入った。

 中は女性の部屋にしてはずいぶんと小物や雑貨などが少ない。元々武芸をたしなんできた彼女にとって、そういう物は眼中になかったのかもしれない。


「いいんですか? 勝手に入ってしまって」


 ラシェンが質問する。彼がそう言うのも仕方がない。全員が男性の上、護衛の二人はサフィと面識のない人物なのだ。


「許可はとってあるもの」


 対するサフィの返答はそれ。許可というのは誰にとったのか。


「それに、ユティス君やラシェン公爵が私に対し何かをする甲斐性もなければ向こう見ずな人間でもないでしょう?」

「……信用されている、という風に考えておきます」


 ユティスはそう返答すると、サフィは「どうも」と答えベッドを背にして立つ。ここでユティスは本題に入ることにした。


「それで、僕らを呼んだ理由ですが……」

「ええ。失われた記憶に関することを聞きたいというわけね……どうやらファーディル家とキュラウス家との間に関係性があったことを隠していた様子。その理由を訊きたいの」

「……正直、あまり良い理由ではありませんよ」


 ラシェンの言葉。するとサフィは大きく肩をすくめた。


「記憶を改竄していたのだから、そのくらい想定済みよ……私達は真実を知り、彩破騎士団をどうするべきか考えなければならないの。無論虚偽の証言は駄目よ」

「わかっています……ユティス君」

「はい」


 返事と同時に、ユティスは話し始める――フレイラことに加え、彩破騎士団が現在どのように動いているのかを説明。ラシェンの会話も交え、サフィの顔が多少なりとも険しいものになっていく。


「……なるほど、現在はフレイラさんを探していると」

「目星はつけていますが、間違いなく一悶着あるでしょう」


 ユティスはそう発言した後一度言葉を切った。そして、


「僕達は……魔法院と関連する異能者を探す必要があると思っています」

「そのために、こうして大所帯で来たというわけね……けれど、混乱している状況とはいえ走り回る人が多いのも事実だから、情報収集は難しいかもしれないわ」

「サフィ王女は、その辺りをどう考えていますか?」


 今度はラシェンが質問する。


「私達としては、これが好機だとも考えていますが」

「魔法院側はそれなりに理路整然と動いているからリスクの方が大きいと思う」

「となれば――」

「……ここで、一つ提案があるの」


 と、サフィはユティスとラシェンに一度視線を送った後、語る。


「敵の正体が何であるか探る……それについて、私の方に任せてもらえないかしら?」

「サフィ王女が?」

「ヨルクについても魔法院側についたとなれば、この騒動を解決しても彩破騎士団の風向きが悪くなるのは間違いない。だからこそ今できることをしなければならないのだけど……今から質問攻めにあうであろうラシェン公爵達では難しいと思う」

「魔法院としては、こちらの動きをけん制する意味合いもあるでしょうしね」


 ユティスは言いつつ、サフィに視線を送る。


「私達としては非常にありがたいですが……サフィ王女は、大丈夫ですか?」

「現状、銀霊騎士団か彩破騎士団のどちらにつくか二者択一を迫られている。それは騎士や大臣だけでなく、私のような王族もまた同じ。お父様やお母様は彩破騎士団側にいるわけだけど……その周囲が全て銀霊騎士団についたとしたら、非常に危ないことになる」


 つまり、サフィの行動は王と王妃を守る事にもつながっているのか――ユティスは理解しつつ、さらにサフィの言葉を聞く。


「フレイラさんの行ったことについては、宮廷がどういう結論に達し様ともララナス家の謀略ということでどうにか処理はできると思う……その辺りのフォローも私に任せて欲しい」

「わかりました……では、僕達は――」

「ひとまず城の人達に事情を……その辺りに協力しないと納得しない人だっているだろうから」


 その時、ノックの音が。サフィが呼び掛けると、一人の侍女が扉を開け報告を行った。


「サフィ王女……招集したユティス様とラシェン公爵を連れてきてほしいと」

「意外に早かったわね……向こうも」

「僕達はそちらへ行く、と」

「どのくらい時間が掛かるかは私にもわからないわ……もし終わったら、案内させるから戻って来てもらっていい?」

「作戦会議ですか?」

「そんなところ……ラシェン公爵もいいかしら?」

「はい、構いません」


 言葉の後、ユティス達は部屋を出て行こうとする。だがそこへ、サフィからさらなる言葉が投げかけられた。


「ユティス君、一つ質問があるのだけど」

「……ティアナ達ですか?」

「ええ。二手に分かれた上アシラさんは屋敷に残ったとのことだけど……」

「屋敷を空にしておくわけにはいかないということと……あと何より、ララナス家についてはフレイラから聞かされていたことを思い出したんです」

「思い出した?」

「ララナス家の女当主の周辺は、男子禁制だったと」


 ユティスの説明に、サフィは一時沈黙した後、話し出す。。


「つまり、アシラを含めこの場にいる面々は元から門前払いされる可能性が高いというわけです」

「なるほど、ね……だからこその人選か」

「そういうことです」


 ユティスはその言葉を残しラシェンと共に部屋を出る。そして歩き始めたと同時、ラシェンが口を開いた。


「騒動については、サフィ王女の後ろ盾もあるため、大事にはならないだろう」

「そうですね」

「ただし、フレイラ君がどう動くかによってはどうなるかわからない」

「……それは?」

「単純に彩破騎士団に戻って来てくれるのならば、さしたる問題にはならないだろう。だがもし彼女自身思うところがあれば――」


 彩破騎士団を辞めるという可能性も否定はできない――そうラシェンは言いたいに違いなかった。

 ユティス自身、その可能性も考慮に入れている。元々責任感の強いフレイラのことだ。操られていたなどといっても、そんな風になってしまったのは自らが原因である――そう考えている可能性は高い。


「……それについては僕も多少ながら懸念しています。しかし」

「しかし?」

「ティアナが行くと宣言した……彼女なりの考えがあってことだと思います」


 無論、彩破騎士団として役目を果たすという意志もあっただろう。だがそれ以上に、ティアナ自身フレイラに対し思うところがあり――そういう意図が、あの宣言に存在していたように思える。


「フレイラがどういう考えを抱いているかわかりませんが……今はティアナを信じ、僕らは僕らのやることを果たすべきでしょう」

「そうだな」


 ラシェンは同意し、以後無言の中ユティス達は進んでいく。やがて物々しい会議室のような場所に押し込められ――ユティス達は、事情を話すべく話し合いをすることとなった。


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