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創世の転生魔術師  作者: 陽山純樹
第五話
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敵対勢力

 いつまで経ってもユティス達を発見できないフレイラは、一人でひとまず城へ行くことを決める。


 道中、警備をする騎士にユティス達を探して欲しい――という話はしたが、これだけ人が多い中で騎士達も発見するのは困難だろうと思った。自分も探しに行った方がいいのかなどと一瞬考えたが、街の地理すら把握できない現状ではできることもたかが知れている――城に直接言った方がいいのかもしれないと思い、歩み出した次第だ。


「大通りを歩いているだけでトラブルに遭遇するとは思わなかった……」


 一体何がどうしてこうなったのか――フレイラはため息をつきつつ中央部へと進む橋に到達した。

 そこにも人の往来があったが――橋の手前では兵士通行する人に呼び掛けている。中央部へ進むためには兵士と接触する必要があるらしい。


 フレイラはひとまず彼らに話し掛ける。書状などを見せここに来た理由を伝えると、彼らは快く通してくれた。フレイラは橋を進み、やがて中央部の通りに到達する。

 先ほどとそれほど変わらぬ光景――だったが、幾分建物の大きさや清潔さが上がっている気がした。やはり城や街に存在する学院――いわば様々な機能の中心地とくれば、格というのも上がるらしい。


 しかし今のフレイラはとても観光する気分にはなれず、まっすぐ城へ向かう。橋から直進すれば宮廷の門へ辿り着くことが可能らしく――それほど経たずして、城門前に着いた。

 フレイラが門番に書状を見せる。それにより兵士は橋の時と同様快く迎えてくれた――直後喧騒もなくなり、先ほどまでの光景が嘘のように音が遠ざかる。


 そうした中フレイラは一人城の中へと入った。廊下は太陽の光をしっかりと入れる構造に加え、魔法の明かりによって影になるような部分が存在しておらず、内部の雰囲気は非常に明るい。


「さて……」


 フレイラは廊下を歩き進め、T字路にぶつかる。どちらに行こうかと思案していた時、騎士が歩いているのを目に留め、声をかけユティス達に関して説明した。


 すると騎士は顔を引き締め、


「ならば、すぐに捜索を。路地に迷い込んだ可能性もありますから」

「ありがとうございます……大丈夫でしょうか?」

「闘士達は無闇に部外者を襲うような真似はしませんので、大丈夫でしょう。お連れの方々が好戦的であれば話は別でしょうが……」

「それは大丈夫です。戦闘を回避しようとする面々なので」

「ならば、問題ないはずです。すぐに見つけ出します」


 騎士は一礼した後速やかに城の外へと走っていく。これでやることは終わった――そう思いつつフレイラは、ひとまず左の道へ足を向けた。

 やがて辿り着いたのは庭園。そこに、一組の男女がいた。


 相手がフレイラに気付く。女性と目を合わせると、フレイラは僅かに緊張する。


「あなたは――」

「ロゼルスト王国彩破騎士団、フレイラ=キュラウスと申します」


 フレイラの言葉に――女性は「ああ」と呟き、立ち上がる。合わせて隣の男性もフレイラに体を向け席を立った。


「そう、待っていたわ」


 どうやらこの男女が件の人物達のようだった。

 一方は足を覆い隠すくらいの丈がある純白のドレスを着た、フレイラと年齢が変わらないくらいの金髪女性。髪の長さは肩に届く程度で、なおかつ真珠のピアスをしている。


 一目見た感想としては、可憐。白い肌に加え、どこか儚さをまとっている印象があったのだが――先ほどの声音は、見た目とは裏腹にとても芯が通っている。

 もう一方は白銀の騎士服を着た、薄い茶髪の男性。年齢はやはり同年代――体格はユティスと似通っているくらい小柄だが、騎士服を着ているためかユティスとは異なり非常に健康的かつ、騎士としての風格も所持していた。


「私はコーデリア=ライレンツ。そして彼は、レオ=テルト……彼が『彩眼』の異能者よ」

「……よろしくお願いします」


 礼を示す。すると彼女――コーデリアは小さく笑う。


「私達はそう立場が変わるものではないと思う……私の方は名で呼んでもらって構わないわ。あなたはどう? 個人的には親睦を深めるために良いと思うのだけれど」

「私もそれで構いません」


 フレイラは承諾。それにコーデリアは「よろしく」と告げ、右手を差し出す。

 それにフレイラは応じ握手。そんな主人の様子を、レオは後方にいながら微笑ましく眺めている。


「それで……他の方は?」


 周囲に目を向けるコーデリア。そこでフレイラは現状の説明を行った。


「……というわけでして」

「大変ね。騎士の人に連絡は?」

「しました。けどあれだけ人が多い上路地に足を踏み入れている可能性を考慮すると……」


 心配になる。ユティスやティアナについてはそう問題にしていないが、もしイリアが路地に入り込んだとなると――


「そう。場合によってはレオを行かせるけれど――」

「そこまでしていただかなくとも……」

「ここは、私達にお任せください」


 横から声がした。振り向くと、薄手の黒い騎士服を着た美男子と呼んで差し支えない男性。


「アズデイル王国騎士団、ヴィレム=ホーンバルトと申します」

「……ロゼルスト王国彩破騎士団、フレイラ=キュラウスです」

「お連れの方ですが、ひとまず地理に詳しい私達にお任せください。今は昼に近い時刻……昼過ぎには、見つけ出します」


 その言葉には説得力があった。フレイラは「お願いします」と返答し、ヴィレムはそれに答えようと深く頷き立ち去った。

 ヴィレムが去ると、フレイラは小さく息をつく。雰囲気により、少し肩に力が入ってしまった。


「常に緊張しっぱなしの騎士さんなのよね」


 コーデリアが言う。


「ああいう人がいるからこそ街の平穏は守られていると言っても良いとは思うけれど……」

「そうですね」


 同意しつつ、フレイラはレオに注目。目が合うと彼は小さく会釈した。


「これから、どうされるの?」


 コーデリアが問う。それにフレイラは小さく肩をすくめ、


「まず、同行者達が帰って来るまでは待機する他ないですが……合流後は、人を登用したいと考えているので……」

「そう」

「コーデリア様の方は?」

「私は今回、レオの腕試しに。だから今は暇なのよ」


 闘技大会が目的なのか――それと共にコーデリアは、薄く笑う。


「……こちらも色々と事情があるのだけれど、あなたも似たようなもののようね」

「それは、つまり」

「腕試し、なんてかこつけてはいるけれど、目的としてはレオを通し様々な国々と繋がりを持つこと……国内において、私は権力的に弱い位置にいるから」


 似たもの同士という言葉がフレイラの頭の中に浮かぶ。


「もっと、今よりも安定した場所に立っているようにしたいわね。いずれ来るであろう、戦いに備えて」

「戦い……?」

「ええ。異能者達を戦わせようとしている一派が見え隠れしているのはフレイラ様もわかるでしょう? その中で、手紙に従い戦おうとしている人物達がいる」


 ――フレイラはスランゼル魔導学院のことを思い出す。あの戦いは、そうした人物によって引き起こされたもの。


「コーデリア様は、ロゼルスト王国の戦争についてご存知ですか?」

「ええ、もちろん」

「ではその後に生じた魔導学院の事件は?」

「表層だけは。異能者に関連しているということで、ネイレスファルトの方でも調べているみたい」


 ――異能者と密接に関わろうとしているネイレスファルトとしては当然の動き。この国は様々な国と交流があるため、情報収集もスムーズにいくだろう。


「その魔導学院の事件において……事件の主犯者である『全知』の異能者と裏で関わっていた人物がいます。名前は判明していませんが」

「それが、異能者を殺し回る勢力の一つでしょうね」


 断定。するとフレイラは眉をひそめる。


「一つ、ということはまだ複数そういった勢力が?」

「ネイレスファルトが情報を統合した所によると、ロゼルスト王国が関わった異能者とは別に二つ、そうした勢力があるようね」


 合計で三つ――無論、それだけでない可能性も十分ある。


「異能者についてはわからないことも多いし……転生したという話は聞いている?」

「はい……彩破騎士団所属の異能者も、その点について知りたいようです」

「それはレオも同様……もっとも不明な点が多いため、ネイレスファルトではようやく研究チームが立ち上がったというレベルのようだけど」

「千年前に何か異能者に関することがあったのでは――と、私達は推測していますが」

「千年前? それは?」


 フレイラはそこでスランゼルで遭遇した『全知』の異能者について説明を行う。その辺りのことはネイレスファルト側も把握できていないのか――フレイラは思いながら説明すると、コーデリアは驚いた声を上げた。


「千年分の魔法か……他の『全知』についてはそういった制約がないようなのに魔法だけは……もしかすると人間の歴史などに関わる点は、そういう制約が成されているのかもしれない」

「そうですね……」


 そこでフレイラは、一つの可能性を思いついた。遺跡調査の時、なぜ賊が発掘品を破壊したのか理解できなかった。けれどもしかすると、千年前に何かがあった歴史自体を隠滅しようとしていたのではないか。

 賊がそれを行ったのだとしたら――彼らは間違いなくギルヴェの命令を受けていたはず。となれば、破壊の指示をしたのはギルヴェ。彼がなぜ千年前にあった何かを隠そうとするのか――


(裏で異能者達を戦わせようとする勢力が隠そうとしていて、ギルヴェがそれに協力したのだとしたら……)


 そのように解釈することもできる――これはかなり重要な事ではないだろうか。


(どちらにせよ、今そのことについて確認はできないけど……ネイレスファルトは情報も多いようだから、その辺りを調べてもいいかも)


 敵がどのような存在なのかわからない以上、そうしたことも仲間集めと共に行うのも大切――フレイラはそう結論付けた後、さらにコーデリアへ言う。


「……それに関することは、もっと情報が集まってから検証しましょう」

「そうね」

「それで、敵対勢力については?」

「一つについては、もしかするとこういった勢力なのでは、ということが噂レベルでささやかれている」

「それは?」


 聞き返したフレイラに対し、コーデリアは真剣な顔となり、


「どうやら異能者を率先して傘下に加えようとしているみたい。その上、主は異能者ではないという話……さらに様々な場所で色々と活動している節もあるらしいの――」


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