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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

少女嫉妬する



 あぁむかつく。本当むかつく。それほど短気というわけではなかったので、ここまでイライラしているのは初めてだ。いつもは多少イライラしていてもすぐに忘れる性質なのだが、今回は違う。イライラの原因が目の前にいようがいなかろうが、イライラが収まる気配が全く無い。


「ねえ要、あんた最近イライラしすぎじゃない?うっとうしいからさっさとなんとかしてくれない?」


 呆れたような声に反応して顔をあげると、幼馴染2号の陽がお弁当を片手に私の隣にいた。ちなみに何故2号なのかというと陽よりも付き合いの長い幼馴染がいるからだ。


「なに言ってんの陽。別にイライラなんかしてないよ。」


 自分では完璧だと思われる笑顔をむけたが、陽は一つため息を漏らし呆れ顔のまま私の前の席に座った。陽は私の額を指ではじく。騒ぐほどではないが地味に痛い。恨みがましい視線を送ってみたが、陽には全くきかない。


「笑顔、引きつってるのにばれないと思ってんのあんた。」

「え、引きつってた?」

「私くらいしか気付かないだろうレベルだから、他の子らは気付いてないと思うけどね。」


 んで、原因はアレでしょ?と陽は中庭側の窓を指差した。窓からちらりと中庭をみると5人の男子と1人の女子の姿が見えた。あの集団はこの学校の生徒会の人たちで、全員なかなかに整った顔立ちをしている。

 

 日本ではあまり見かけない、染めてない金色の髪を持つのが会長。確か、どこかの国の血が半分混ざっているとか噂できいたような覚えがある。眼鏡をかけたいかにもクールっぽそうなのが副会長。厳しいことで有名で、ついこの前も一年生の女の子相手でも容赦せず、泣かしていたのを見た。ふにゃふにゃとした、人当たりのいい笑みを浮かべているのが会計。笑顔もふにゃふにゃしていれば、腕も筋肉がついておらずふにゃふにゃしている。小柄でやたらとオーバーな動きをするのが書記その1。元気だけは有り余っていて、グラウンドだろうと廊下だろうととにかく走り回る人だ。そして、そんな男ばかりの群れに一人だけ存在している女子が書記その2。生徒会のみならず、多くの男子を魅了し毎日のように告白されているとかなんとか。


「せーかい。」


 認めるのは悔しいが、あれが原因で間違いない。一人の女の子がたくさんの男子に好かれ、ちやほやされている状態。クラスの友達が言うにはぎゃくはーれむ?とか言うらしい。あれが目に入るたび、いや目に入っていなくとも、とてもとても苛立って仕方がないのだ。


「真白にあぁいうのやめろって言えば?」

「別に誰と何しようが真白の勝手だし、いちいち交友関係にまで口出ししたくない。」


 稲葉真白。私の幼馴染1号にして私の一番大好きな人。その真白がイライラの原因。あの集団の中に真白がいるから私は毎日イライラしているのだ。えぇそうですよ、嫉妬してるんですよ。何か悪いかこんちくしょー


「意地張っちゃって。そんなんで真白に愛想つかされても知らないからね。」

「……真白はこんなことで愛想つかさないよ、多分だけど。」


 怒っていても理由一つ言わないのはいつものこと。だからこれくらいでは今更愛想をつかれることはない、と思う。私は窓から視線をはずして、先ほど購買で買ってきた焼きそばパンをほおばった。その様子を見た陽が意地の悪い笑みを浮かべた。そっさと弁当食べろ、と軽く一発チョップを入れる。あぁくそ、こいつ楽しんでやがるな。




 放課後になってもあの変な人だかりは形成されていた。どうやら今は誰と一緒に帰るかもめているらしい。俺と一緒に帰るんだ、そんなやつとじゃなくて俺と帰ろう。そんな声が聞こえる。毎日毎日同じことで騒ぎ立てるなんて、本当にバカじゃないだろうか。私はイライラしつつも、笑顔で感情を隠しクラスメイトたちに別れを告げた。はやく部活に行こう。ここにいたらイライラしすぎて血管がぶちきれかねない。教室からでるとき、真白と目が合ったが反応するのも何か癪なので無視して早足で教室を後にした。




 今日の部活も一番乗りのようだ。剣道場は静まりかえっていて、いつもの熱気が嘘のように涼しい空気をまとっている。私はさっさと道着に着替え、座禅をくんで深く息を吐いた。落ち着け。冷静になれ。余計な感情を二酸化炭素と一緒に吐き出すのだ。剣には心が宿る。かつての師にそう言われて以来、私は竹刀を握る前に精神統一をするようになっている。


「今日も一番乗りみたいだね、要。」

「部長。こんにちは。」


 座禅を組んでいるとふと肩を叩かれ声をかけられた。剣道部部長で3年の高宮先輩だ。笑顔で挨拶をすると部長も挨拶を返してくれ、要は真面目だねと頭をなでられた。なんだかくすぐったかったが、そこまで嫌がることでもないのでされるがままになる。部長は散々人の頭を撫で繰り回した後、道着に着替えるため更衣室へと向かっていった。


「ふぅ……さて、素振りでもするか。」


 剣道は小学生の頃から習っていた。なにかきっかけがあったような気もしなくはないが、如何せん幼いころのことなのでいまひとつ覚えていない。竹刀を構え、まっすぐ前を見る。こうなればもう私の頭の中には剣のことしかなくなる。ひとつ、ふたつ。竹刀を振りながら心のなかで数える。みっつ、よっつ。慣れているからといって、剣だけに集中せず足捌きにも気を使う。いつつ、むっつ。力を入れすぎず、かといって抜きすぎず。


「要、ちょっとストップ。」


 部長に背後から声をかけられた。私は竹刀を収め、部長のほうを向いた。部長は真剣な目をしており、ただの雑談ではないことが伺える。部長は何も言わずしばらく私をじっと見つめ、私の頬に手を伸ばした。


「最近ちゃんと食べてる?なんか前より痩せてる気がするんだけど。」

「そうですか?頻繁に体重を計ってるわけではないので、自分ではよくわからないんですけど。」


 本当にこの人は鋭い。言われた通り私は最近あまりご飯を食べていない。とは言ってもとらないようになったのは夕食だけで、朝昼は一応ちゃんと食べてはいる。


「調子もよくないみたいだし、なにかあった?私でよければ聞くよ?」

「いえ、特になにかあったわけではないので大丈夫ですよ。」


 流石に嫉妬してて機嫌が悪いせいなどとは言えず、笑ってごまかしておいた。部長は訝しそうな顔をしていたが、無理に聞き出そうとは思ってなかったのか、あっさりと解放してくれた。やはり部長には気をつけないといけないな。そう思ったのち、私はまた素振りに戻った。





「かな、おかえり。」

 

 部活後、疲れた身体で家に帰ると真白に出迎えられた。母は病気で亡くなり、私は出張の多い父と二人暮らしをしている。自分ではしっかりしているつもりなのだが、父は私を一人残して出張するのが不安でたまらないらしく、家の合鍵を真白に渡していた。それゆえ父が出張の間真白は私の家に来て、ご飯を作ってくれたり掃除してくれたり私の世話を焼いてくれているのだ。


「……ただいま。」

「お腹減ってる?ご飯もうすぐできるからちょっと待ってて。」

「別にいい。食欲、ないから。」


 真白の顔を見たらまたイライラしてきた。別に真白が悪いわけじゃないのに冷たい声で返事をしてしまう。ほら真白が悲しそうにしてる。はやく冗談だよって言って、いつも通り笑わなきゃ。でもこんな気分で真白のつくったご飯を食べたくないし。


「かな、最近ご飯つくっても食べてくれないよね。それに機嫌も悪いみたいだし……もしかしてなにか悪いことしちゃったかな?」

「真白はなにも悪いことしてないよ。」


 そんな仏頂面して全然説得力ないっつのって陽がいたらつっこんでただろうな。でも本当に真白は何もしていない。私が勝手に嫉妬してイライラしてるだけなんだから。


「でも…」

「ほらご飯作る必要もなくなって、やることないんだしさっさと帰ったら?」


 真白は一瞬だけ傷ついたような顔をしてから、下手くそな笑顔をはりつけて帰っていった。さっさと帰れ、なんて自分でも酷いこと言ってる自覚はある。でもこのまま真白を見ていたら我慢できそうにない。もっと酷いことになる前に帰ってもらえて本当によかった。


「あぁくそ、なんでこんなことになっちゃったんだか。」


 真白に触っていいのは私だけだとか、真白と一緒に帰るのは私だとかそういうことを言えたらいいのだけれど、私には絶対言えない。だって真白のすべてが私のものってわけじゃないし、今まで散々真白を振り回して迷惑かけてきたんだ。真白の交友関係や行動にいちいち口出ししちゃいけない。そのせいでイライラして、また真白に迷惑をかけているというのもわかっている。でも私にはどうやっても、気持ちをごまかすことはできても押し殺すことはできないのだ。


「さすがにずっとこんな状態じゃ、愛想つかされるよね。」


 明日になったら謝ろう。放課後か、家に帰ってからか。どちらにせよ機嫌が悪かった言い訳を今のうちに考えておかないと。




 お風呂にも入らず言い訳を考えていたら、気付けばうとうとしていたようだ。ドアが開く音で、はっと目が覚めた。父さんかな、と身体を起こそうとしたが何かがお腹の上に乗ってきたせいで起きることができない。お腹の上に乗ってきたものに目をやる。そこには泣きそうな顔で私を見下ろす真白がいた。


「ま、しろ?なんで、帰ったんじゃ……」

「先に言っておくけど、かなが悪いんだからね。」


 え、いきなりなに?つかなんなのこの状況。混乱した頭をなんとか落ち着けようとしたが、真白は私の上に身体を倒しそのまま私の唇を奪った。ってちょっと、待て。なにこれどうなってるの。


「かな、好き。愛してる。」

「なっ!?」


 なにを言ってるんだこいつは。いきなりキスしてきたかと思えば今度はいきなりす、好きとかあ、ああ愛してるとかっ!さっきまで私真白のこと邪険にしてたよね。なのになんで…


「かなは?かなはどうなの?もしかして…」


 いつも静かに笑っている真白がここまで必死になっているとは珍しい。顔を真っ赤にしてるし、息も上がっていて半泣き状態。過去に何度か見たことはあったが、こういう顔をされると見ているこっちが焦ってしまう。多分今の真白の脳内では先ほど言い切ることのできなかった『私が真白のことを嫌いになったのか』という質問でいっぱいなのだろう。嫌われてたらどうしよう、とか本気で考えていそうだ。真白が私を嫌いになることはあっても、私が真白を嫌いになるはずなにのに。

 パニックになっている真白を見ていたら、真白を見るたびに感じていた苛立ちは消えうせ、むしろなんであそこまで苛立っていたのかわからないくらい、凪いだ気持ちになってきた。そんな私の気持ちを知らない真白は、いつまでたっても何の反応も返さない私をみて、なにも聞きたくないというように耳を塞いでぎゅっと目を閉じた。私が真白のことを嫌いだとでも言うと思ったのだろうか。


「好きだよ。私も真白のこと大好き。」


 遅すぎる気はしたけれど返事をしないことにはどうしようもないので、返事してみたのだが…やっぱり聞こえていないみたいだ。仕方ないな。なんとかして話しを聞いてもらいましょうか。私は上半身を何とかして起こし、私の上で震えている真白にキスをした。


「か、かなぁ……」

「ごめんね真白。私も、好きだよ。」


 うわ、いつの間にか半泣きから本気泣きになってる。これはなだめるのが大変そうだな。今回は全面的にとは言えないがどちらかというと私のほうが悪いし、真白の気が済むまで付き合いますか。だがその前に下りてくれないだろうか。いくら剣道してて筋肉ついてても女の子なんで、自分より10cm以上もでかい相手をずっと乗っけてるのは辛いんです。




 あの後、泣きに泣きまくった真白をなだめるのに多大な時間を要した私は、結局夜遅くなってしまったことを理由に、真白を泊めることにした。次の日の朝、急な泊まり故制服やら教科書を持ってきていないということで、朝早く真白は家に帰っていった。朝ご飯をちゃんと作っていってるのは流石というべきか、真白を見送ったあと台所に行くとサラダとベーコンと目玉焼きあとトーストが置いてあった。いつの間に作ったんだろう。さっき私と一緒に起きて、着替えたらすぐ出てったよね。そんな疑問を抱きつつ朝ごはんを食べ終えて、また教室に行けばあの見たくもない光景があるのだろうなと、憂鬱になりながら家をあとにする。




 教室に入ると、真っ先に陽に声をかけられた。


「おはよー要。」

「うん。陽、おはよう。」


 私はいつも通りに挨拶を返したが何か違和感を覚えた。よくよく陽の顔を見ると、何故か妙にニヤニヤしながらこっちを見ている。なんでニヤニヤしてんの、こいつ。


「あのさ、なんでそんなにやにやし……」

「かな、おはよう。」


 聞きなれた澄んだ声が聞こえた。驚いてすぐさま振り返ると、昨日泣きまくっていたとは到底思えない、ほわほわとした笑顔の真白がそこにいた。流石は真白。同じ女でも見惚れるほどの可愛い笑顔だ。ってちょっと待て。

 いつも真白に引っ付いてくる、生徒会の男連中がいない。いつもだったらこの時間には全員集合して、私と付き合っている真白を奪いあうという不毛な争いを繰り広げているはずなのに。まぁ私たちと陽以外は知らないことだから、不毛な争いだと思っていたのは私と陽だけだったんだけども。


「えっと…おはよう。あのさ一人、なの?」

「うん、そうだよ。結局かなの機嫌が悪かった理由教えてくれなかったでしょ?だから学校行く前にメールでよーちゃんに聞いたらね、私が生徒会のみんなとばかり一緒にいて嫉妬してるからだって教えてもらったの。だからちょっと皆とお話して、過度の接触を控えてもらうようになったんだ。」

「なっ!?」

「昨日の話で要は自分で言わないだろうなーって思ったからさ、つい言っちゃった。」


 ごめんねーと全く悪いと思っていなさそうに陽が謝ってくる。本当ならここで怒りたいのだが今はそれどころじゃない。なるべく隠しておきたかったことが真白にばれた。どうする。とりあえず陽の勘違いだとでも言っておけば真白もわかってくれるだろう。うん。それで行こう。


「私は別にそんなこと思ってないし。陽の勘違いじゃなっ!?」


 ちょっと甘い香りがして、何かやわらかいモノで視界をふさがれる。平均よりも多少身長の低い私の顔に、真白の胸があたっているのだ。


「真白、なななんで抱きついてきてんの!?」

「えへへ、だって最近くっついてなかったから。」

「おーおーお暑いことですこと。」


 なに言ってんの。昨日十分くっついてたでしょうが。真白の胸のせいで見えないけど、見なくてもわかる。今クラスのみんなの視線は私たちに注がれていると。これは目立っている。凄まじく目立っている。


「ま、真白?いい加減離れてくれないかな?」

「んー今日からはちゃんと御飯食べてくれるならいいよ。」


 あのもしかして真白のお手製御飯をいらないって突っぱねまくったこと、ちょっと根に持ってるのでしょうか、真白さん。というか早く離れてもらわないとその、理性がちょっと危ない感じになってきているんですが。


「食べます!!もう残さず食べますから!!だからとりあえず離れよう?ね、ね?」

「うん!じゃあ離れる。」


 言いながら少し名残惜しそうに私から離れると、それはもう誰もが見惚れてしまうほどのすばらしい笑みを浮かべて私の両手をとった。


「今日ね、お弁当二つ作ってきたの。かなはまた購買でパンだよね?私一人じゃ食べきれないから一緒に食べよう?」

「えっあ、はい。」


 あれ?真白お弁当なんて作る時間あったっけ?つか陽なに腹抱えて笑ってんの。こうなった原因あんたにもあるんだからね。あぁもう恥ずかしい。まだクラスの連中から見られてるし。はぁ、と一つため息を漏らして私はしかたないな、と笑みをこぼした。





 あのあと真白はことあるごとに私に引っ付いてきて、女の私が何故か周りの男子から嫉妬のこもった目で見つめられた。剣道やってるからそうそう気圧されたりしなかったけど、彼等の視線に触発されてつい試合中のように気を張り詰めていたから気疲れが激しい。


「そういえばずっと気になってたんだけどさ、生徒会の人達になんて言ったの?」


 私の家に帰って制服を脱ぎ、私の家に置いている真白用の普段着に着替えている時、なんとなく聞きそびれていたことを尋ねた。彼等に真白はなんと言ったのだろうか。真白のことだから、彼等を怒らせるようなことは言ってないと思う。でも、このことで生徒会に不和をもたらすのではないか。彼女の居場所がなくなってしまうのではないか、と不安になる。


「んとね、好きな人に誤解されたくないからって言ったよ。」

「好きな人って……それ相手誰だって聞かれなかったの?」

「聞かれたけど、秘密って言っておいた。納得してくれなかったから、どんな人とかは話したけど。」


 そういえばどんなところが好きかって話してたらなんでか皆元気なくなっちゃったんだけど、なんでかなぁ。そういって真白はこてんと首を傾げた。あれだけ毎日好き好きアピールをされていたのにも関わらず、全く好意が伝わってないなんてかわいそうに。こんな鈍感で幼馴染の女の子を好きになっちゃうようなやつ好きにならなかったら、もうちょっとましな展開になったろうに。

 そんな風に彼らに同情はするが、正直そろそろ我慢の限界が来ていたから真白にふられてくれて助かった。真白が男子に囲まれているのを遠巻きから見るのも、それのせいでイライラして真白から距離をとることも、もう限界だったのだ。私は着替えをさっさと終わらせると、真白の白くて細い右腕をひっぱり強引に唇を奪った。


「……昨日もこれくらい強引だったらよかったのに。」

「うっそれはその……悪いと思ってる。」


 真白が男の子に囲まれていても、彼等を真白から引き離そうとしなかった理由の一つ。それは男の子たちを無理やり真白から引っぺがしたことで、私たちの関係を疑うものが現れるのではないか、と恐れたからだ。私が真白のことが好きってことがばれるくらいならまだいい。しかし付き合っていることがばれたら、絶対にややこしいことになる。私は別になにかされようが、陰口叩かれようが気にしないからいいとしても、真白に被害がでるのはいただけない。


「かな、私ね寂しかった。」

「ご、ごめん。」

「学校じゃあんまり甘えられないから、お家に帰ったらいっぱい甘えようと思ったのにご飯いらないとか、すぐに帰れとか言われて。」

「最近イライラしてたから、真白に八つ当たりしそうでさ。その、ごめん。」

「八つ当たりしてくれてよかったのに。嫉妬してくれるってことは、かなが私のこと好きでいてくれてるってことなんだから怒ったりしないよ。」

「でも私が嫌だって言ったら真白はあの人たちと関わるの、やめるでしょ。私は真白の交友関係に口出ししたくないし、束縛も……なるべくしたくないから。」


 暗い表情の私を見てなにを思ったのか、優しい笑みを浮かべて真白は私に額にキスを落とした。それから教室のときより強く私を抱きしめて、囁くように言った。


「束縛、してくれないの?」

「……!?」


 ちょ、ちょっと待って。やばい、ぞくっとした。なにこの色気。あんたどこでそんな技術覚えてきたんだ。


 

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[一言] 「束縛、してくれないの?」 ぞくぞくしました 誘い受けっていいもんだね
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