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信じるもののすべて  作者: ざー
第二幕
7/32

第二幕(2)

 居間のふかふかのソファーで、ボフッとクッションに顔を埋める。身体がだるい。ただ座っているのさえつらかった。

「ロイ」

 ドアを開ける気配がする。身を起こすと、フレッドが顔を覗き込んでいる。

「具合悪いのか?」

「……大丈夫、です」

 寝室に下がるのは嫌だった。一人になりたくない。何か刺激がなければ、明日には……今日を、忘れてしまうから。

 フレッドは一人がけのソファーに座って、俺に尋ねた。

「アンという名前に、心当たりはあるか?」

「アン……つっ!」

「知っているようだな」

 頭痛。治まるのを待ってフレッドが続ける。

「兄上の手紙は長ったらしくてよく分からないんだが……兄上のところにもあの施設から脱出した子がいるらしい。名前はアン。ジルを探しているそうだ」

 覚えている。ジルはいつも、誰かと一緒にいた。けれど、その誰かを思い出そうとすると頭痛が起きる。アンの名を聞いた時と、同じように。

「俺はこれから兄上を訊ねようと思う。できれば、ロイも連れて行きたい」

「彼は体調がすぐれないようです。医者としては賛成しかねますね」

 すかさずクラウスが意見する。

「エマを同行させればいいのでは? 彼女も施設の子の顔は分かるでしょう」

「そりゃまあ、そうなんだが」

 歯切れの悪いフレッド。チラリ、と俺の顔を盗み見る。

「俺、行きたい、です」

 できるだけ姿勢を正して、声を張った。

「ジルがいつも誰かと一緒だったのは覚えているんです。でも、それが誰なのかは……。アンって子に会ったら、何か分かるかもしれません」

 クラウスが目を丸くして振り返る。真意を探るようにじっと見つめる。負けられない。必死に姿勢を保って睨み返した。

「仕方ありませんね」

 とうとう根負けして、クラウスはため息をついた。

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