第六幕(1)
「何を言い出すんですかっ!?」
「それしか方法がないだろっ!」
クラウスとフレッドが言い争っている。
「だからって、あなたが行く必要は--」
「いいようにされて黙ってろって言うのか!」
「何の騒ぎ? 廊下にまで聞こえてるわよ」
ティーセットを持ったエマが、あきれ顔で居間に入って来る。
エリック殿下の訪問から一週間。屋敷の監視は日に日に増え、もはやあからさまに姿を見せる始末。傷は癒えたというのに、カーテンを閉め切った部屋での生活を強いられていた。
「フレッドがあの施設を襲撃すると言い出したんです。しかも自ら、率先して!」
「こんな目に合わされて黙ってられるか!」
「そういう問題じゃありません!!」
バンッ。クラウスがテーブルを叩く。
「敵はロイの命を狙っているんですよ。あなたが屋敷を空けて、誰がロイを守ると言うんですか!」
「う。そ、それは……」
言葉に詰まるフレッド。
「二人とも落ち着いて。こんな軟禁生活じゃ、ストレス溜るのも分かるけど」
お茶を配り終えたエマは、俺の隣に座って首を傾げた。
「でも、どうしてあんな熱心に屋敷を見張ってるのかしら?」
「ロイの生死を確認したいのでしょう。彼が床を離れてから、姿を見られないよう気をつけてきましたから」
クラウスが窓辺に立って、カーテンの向こうをチラリと覗く。
「フレッドが屋敷にいる間は手を出してきませんが……留守と分かれば、こちらの方が襲撃を受けかねません」
「じゃあ、叔父上があきらめるまで籠城を続けるのか? どう考えても、消耗戦じゃこっちの分が悪い」
ぶすっとした顔でフレッドが頬杖をつく。
この状況を打破するためには、施設を襲撃し、有力な証拠を得るのが一番手っ取り早い。しかし、存在しないはずの施設では何が起こるか分からない。失敗すれば、最悪襲撃者全員が殺される可能性もあるのだ。
モーリス卿と言えど、身分のあるフレッドには手出しできない。だからこそ、フレッドは自ら施設を襲撃すると言っているのだが……。
「俺がフレッドについて行く、というのはダメですか?」
三人が一斉に振り向いた。
「俺、自分の目で確かめたいんです。自分が何処にいたのか、そこで何が行われていたのか。だから--」
「私も行く!」
エマにグイッと肩を抱かれる。
「施設に行くなら案内が必要でしょ? ロイは私とフレッドが守るから、心配しないで」
「おまえも守られる側だろう」
そう言うフレッドもまんざらではない様子だ。
「まったく。あなた達は本当に、無茶ばかり言いますね」
クラウスが頭を抱えて、深いため息をついた。




