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信じるもののすべて  作者: ざー
第六幕
21/32

第六幕(1)

「何を言い出すんですかっ!?」

「それしか方法がないだろっ!」

 クラウスとフレッドが言い争っている。

「だからって、あなたが行く必要は--」

「いいようにされて黙ってろって言うのか!」

「何の騒ぎ? 廊下にまで聞こえてるわよ」

 ティーセットを持ったエマが、あきれ顔で居間に入って来る。

 エリック殿下の訪問から一週間。屋敷の監視は日に日に増え、もはやあからさまに姿を見せる始末。傷は癒えたというのに、カーテンを閉め切った部屋での生活を強いられていた。

「フレッドがあの施設を襲撃すると言い出したんです。しかも自ら、率先して!」

「こんな目に合わされて黙ってられるか!」

「そういう問題じゃありません!!」

 バンッ。クラウスがテーブルを叩く。

「敵はロイの命を狙っているんですよ。あなたが屋敷を空けて、誰がロイを守ると言うんですか!」

「う。そ、それは……」

 言葉に詰まるフレッド。

「二人とも落ち着いて。こんな軟禁生活じゃ、ストレス溜るのも分かるけど」

 お茶を配り終えたエマは、俺の隣に座って首を傾げた。

「でも、どうしてあんな熱心に屋敷を見張ってるのかしら?」

「ロイの生死を確認したいのでしょう。彼が床を離れてから、姿を見られないよう気をつけてきましたから」

 クラウスが窓辺に立って、カーテンの向こうをチラリと覗く。

「フレッドが屋敷にいる間は手を出してきませんが……留守と分かれば、こちらの方が襲撃を受けかねません」

「じゃあ、叔父上があきらめるまで籠城を続けるのか? どう考えても、消耗戦じゃこっちの分が悪い」

 ぶすっとした顔でフレッドが頬杖をつく。

 この状況を打破するためには、施設を襲撃し、有力な証拠を得るのが一番手っ取り早い。しかし、存在しないはずの施設では何が起こるか分からない。失敗すれば、最悪襲撃者全員が殺される可能性もあるのだ。

 モーリス卿と言えど、身分のあるフレッドには手出しできない。だからこそ、フレッドは自ら施設を襲撃すると言っているのだが……。

「俺がフレッドについて行く、というのはダメですか?」

 三人が一斉に振り向いた。

「俺、自分の目で確かめたいんです。自分が何処にいたのか、そこで何が行われていたのか。だから--」

「私も行く!」

 エマにグイッと肩を抱かれる。

「施設に行くなら案内が必要でしょ? ロイは私とフレッドが守るから、心配しないで」

「おまえも守られる側だろう」

 そう言うフレッドもまんざらではない様子だ。

「まったく。あなた達は本当に、無茶ばかり言いますね」

 クラウスが頭を抱えて、深いため息をついた。

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