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オレの職種は邪悪狩り-ブラックハント-  作者: 灰鷹
九尾の妖狐-ザ・ワーストモンスター-
5/10

5話 こっくりさん-クレイジー・フォックス-

台風の暴風警報が、コレ程嫌だと感じたことはありません。

だって、だってだってだって!先生が用意した夏休みの宿題を、自力で取りに来いとは如何なる用件ですか!?(愚痴なんで、気にしないでね♪)

 ココで、九尾が復活した後に起きる悪影響を改めて纏めていこうと思う。一つ目、日本人口の約七割以上が九尾の餌となる。コレは最低限の被害であり、最悪全ての日本国民が食われてしまう。二つ目に妖怪達の混乱、暴走である。九尾は妖怪もお構いなしに食らい、妖力を蓄えていく。不安に駆られた彼らは、いつ人間に牙を向けるか解らないのだ。三つ目は狐達の悪行の過激化、四つ目はその狐達を鎮めるために大量の油揚げを消費しなければならない。四つ目は大した問題ではない、そう思う者は大多数だろう(作者も含め)。しかし、この四つ目は人間に計り知れない影響を出してしまう。

『ニュースです、一夜にして油揚げの値段が十倍に跳ね上がりました』

「ふふん、その値上げは大半便乗なんでしょうね~」

「オトナって、汚いね」

「それが人だ、仕方ないさ」

 二人と一匹の犬が、テレビを見て話している。この犬実は、シンなのだ。シンが犬になったワケは、想像をするに難くないだろう。人目というもの、世間の目は悪魔の拷問以上の恐怖になるものだ。

「金は天下の回り物というが、コレじゃ天下が金の回り物だよ。どっかの必殺〇〇〇人じゃねぇが」

ユウがそう呟くと、ケータイが鳴った。相手はカナだった。

「よぉ、どうした?」

『あのさ、また此間みたいな依頼していい?』

 カナはユウの仕事を知っている数少ない人物、そしてユウが密かに恋心を抱く相手だ。野郎というのは、好きなコが困ると無意識に助けたくなる。ユウも知らず知らず、カナの話を興味津々に聞いているのだった。

『ユウってさ、妖怪関係オールOKでしょ?こっくりさん、って知ってる・・・?』

「知らねーワケねーだろ、こっくりさんだぞ。で、そのこっくりさんでオマエのダチが被害を被ったというワケか・・・」

 カナが依頼を言う前に、結論を早々と導き出し話を円滑に進める。カナはこのスピード展開に、まったく入る隙間がなかった。

「多分オマエ詳しい事知らないだろうから、説明しておくぜ。こっくりさんの正体って、何だか知ってるか?」

『確か、動物の霊が合体したヤツじゃ・・・』

「ま、そうなんだがよ。こっくりさんって、狐の霊なんだわ。漢字で『狐狗狸』だし。それは些細な事だからスルーだけど、問題はコレが大変危険な降霊術だっつー事さ。手順や儀式場、ソレに使われる物の配置が寸分でも狂えば人間は一発で地獄に落ちる」

 誰でもした事があるこの遊び、しかしその実地獄に落ちるか落ちないかの瀬戸際を渡っていたのだ。

『ユウと昔したけど、その時は・・・たまたま巧くいったって事なの?』

「あの時にはもう邪悪狩り-ブラックハント-だったからな、こっくりさんの正しいやり方は知ってた」

「ふふん、好きな人と長話。青春ですね~」

 シンの声が、電話から漏れる。ソレはとてつもなく危険な状況を造り出した。

(この糞オオカミ!電話中に喋んなって、家に来た時教えたろ・・・!)

『ん、その声テレビ?』

「ああ、ミキが音量上げたんだよ。驚いちまったか、悪い悪い」

 カナは不審に感じた。ユウは五月蝿い所、人が多い所を好まない根暗な部分がある。そんな彼の妹が不躾に、音量を上げるとは考えにくい。彼女はカマをかける。

『そうそう、依頼終わったらサマーランド行かない?大々的にリニューアルしたんだって!』

「へ~、ふふん。行きましょう行きましょう!」

(おいっ!)

 もう後の祭り、カナにシンの事がバレてしまった。ユウは大人しく白状した。

『そ、ユウも大変なのね。でもそういう事は、隠すべき事じゃないと思う。もっとポジティブに考えてみてよ、家族が増えたって考えたら!』

「そう・・・か」

 ユウはただ肯くのみだった。カナは幼馴染みで、自分に体術を教えてくれたひとであり恋心を抱くひと。そんな彼女をこれ以上、妖怪の話に首を突っ込ませたくないのだ。

「とにかくそのコの家に行こう、自分の部屋で寝込んでるんだろ?オマエ、来んなよ・・・」

「イヤ、アタシも行く!」

 ユウは折れ、四人でそのコの家に赴いた。


 そのコの家族は泣き崩れていた。突然の原因不明の病、絶対に治らない不治の病。そんなケータイ小説の主人公となってしまった自分の子供が、あまりにも哀れでならなかった。

「お邪魔します、クラスメイトの冬宮です」

「春田です、明子ちゃんのお見舞いに来ました」

 目的はこっくりさんの呪いからの解放だが、貞操上花を買ってお見舞いを装う事にした。

「さてと、何でこうなったかな!」

「わっ、何女の人の布団を引っぺがしてるんですか!?」

 シンが騒ぐので、三人は口を塞いだ。両親に、余計な心配はかけるものではない。

「は~、予想はしてたけどさ。ホラ、オマエら見てみろよ。十円玉、手に握ってるだろ?」

 こっくりさんにはあるルールがある。こっくりさんをやった後にお礼をするのは常識の範囲内だが、その時使ったものを処分しなければならないという事はあまり知られていない。この女の子は、こっくりさんをやった記念品に十円玉をもらってしまったのだ。

「で、どうするの・・・?」

「幸いタイミングがいい事に、コイツがいる」

 ユウがシンを指さすと、シンはビシッと敬礼する。

「狐は犬、狼が怖いからだよカナちゃん」

「って事は、このコは妖怪なの!?」

「ふふん、妖怪といっても半分は人間の血が混じってます」

 シンは大きく息を吸い、狼の遠吠えを上げる。


ウオオオオオゥ


 その後、ベッドで寝たきりで動かない彼女が暴れ始める。その騒音に両親も気付き、部屋に駆け込んだ。

「明子!どうしたんだ、まるで獣だぞ」

「お父さんお母さんは、下がってください!!」

 ユウは両親を強引に部屋から出し、一階に蹴飛ばす。ミキもあまりの暴れ様に、足が震えていた。

「震えてんじゃねぇぞミキ!こんなもん今まで、どんだけあったと思ってるんだ!」

「あっ、ゴメン・・・!それじゃ、いきます!!」

 ミキはポケットから、赤い粉が入ったビニール袋を取り出す。そしてそれを部屋全体に撒き散らし始めた。

「ごほっ!何コレ、唐辛子・・・!?」

「ふふ、ぶほっ!ん、何ですかイキナリ!!」

 ミキが使うのは妖術でも、魔術でもない。それぞれの妖怪に対処するため、僅かながらの日用品を武器に変えているのだ。この唐辛子は一般のもの。唐辛子は動物を興奮させたり、鼻を効かなくさせる効果もある。コレを使えば、とり憑いているこっくりさんをおびき出せる。

「ヌオオ、コノワタクシメヲ・・・!ドコノドイツダ、ヌオオ、メガミエナイ!」

 少女の口から狐の顔を持った怪物が、吐瀉物のごとく現れた。これが、こっくりさんである。

「アレ・・・人!?人なの!?」

「そう、こっくりさんに失敗したヤツらは数日後にこっくりさんに摂り込まれ、こっくりさんと共に地獄に落ちていく。もうアイツらは、助けるのは無理だぞ・・・」

 カナは目の前に広がる世界に愕然とするが、その気持ちはすぐに吹っ切れた。ユウはその顔を見て、一安心しそして心配になった。

「まずは、そのコの魂をこの怪物から引っ張り出そう。カナ、悪いけど引っ張る役はオマエだ。オレはアイツの攻撃を、一発も当てないように頑張ってみる。・・・何だよその顔、オレはプロだぜ」

「上手く、やりなさいよ・・・ユウ」

 カナが怪物に向かって走り出すと同時に、こっくりさんは攻撃を仕掛けた。狐の形をした火の玉が、カナの上から降り注ぐ。

「来たな、おい二人とも!」

「「わかってます!!」」

 ユウを先頭に、三人はこっくりさんの猛攻からカナを必死に守る。だが相手は多くの人間を食らった怪物、人間の魂にある生気を吸い妖気を作り出せば何度でも妖術が使える。

「ふふん、ミキさん・・・。もう少し踏ん張ってもらわいと・・・、ホントにヤバイですよ!」

「シンくんも、もう少し頑張ったら!?」

 ミキはシンの体を支える役になっている。シンの妖術は凄まじいものが多いが、半妖であるが故に衝撃も大きく自分も吹っ飛んでしまうのだ。ユウの闘いでは、妖術より体術が主だったのでそこまでダメージは発生していない。半妖、半妖怪という生き物は何気に辛い体質を持っているのである。

「くそ、弾切れたじゃねーか・・・。・・・しまった!」

 ユウが弾を込める時、スキができた。そこをこっくりさんの攻撃が抜け、カナの左腕に直撃してしまった。カナの左腕は黒く、残酷に焦げていた。

「カナァアアア!!」


 カナは意識を保ち、こっくりさんの体から友達の魂を引っ張り出していた。左腕のダメージは相当で本当なら、そのショックで死んでしまうほどのレベルだ。それでもカナは、引っ張り続けた。

「ううっ!何してるのユウ、アタシの事はいいからこの怪物の攻撃止めなさいよ・・・。ユウ、プロなら、プロなら、プロならさっさとこのヤマ片付けやがれぇえええ!!」


ズボッ・・・!


 カナは遂に引っ張り出した。左腕を失ってもなお、友達の魂を救うため怪物に立ち向かったのだ。そして、その成果が今、実る!

「明子ちゃん、・・・よかった・・・!」

「お疲れさん、カナ。さぁいくぜ、怪物!!」

 怪物が怯み、三人は攻撃する。

 ユウの銃弾六連発、シンの風龍砲、ミキのコモンスキル。その全てが威力最大、確実にヤツの息の根を止める。

「グアアアアアアアアアア!!」

 こっくりさんは再び、闇に落ちた。数多の人間の魂と共に。


 カナは十日で全快した。施したのは、応急処置程度。なのに、その再生力は素晴らしく凄まじいものだった。

「ふふん、カナさんも何かしらの力を持ってるんでしょうね。ボクの仙術殺しみたいに」

「カナちゃんはそんなの持ってないと思う。傷の治りが早い人は、早いんだし」

 ユウはカナに事後報告をしていた。こっくりさんは地獄に戻った事、その際に多くの人間が地獄に落ちた事、そしてクラスメイトが元気に学校に来た事などを話した。

「そう言えば、礼の一つもしてねーか。ほら、オマエ欲しがってたろ」

 ユウはカナの手に、青い石が付いたネックレスを渡した。

「コレ・・・、いいの?だって、このネックレス・・・」

「構わないぜ、何もそこまで苦しい額じゃないんだ。四、五万くらいならどうとでもなる」

 カナは頬を赤らめて、バカと呟いた。

ヤバイ、文字数が減ってきてる・・・。力が減ってきているというのか(ウソ)?

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