1話 邪悪狩り-ブラックハント-
初めまして、黒川という者です。初めての投稿に初めての連載小説、文章は限りなく幼稚なものですが読んでもらえると嬉しいです。
この世には人間以外に喋る事ができる種族はいない、そんな風に思っている者は大多数だ。まだ小さい幼稚園児なら絵本の世界を信じ、動物も話せると考えるが大人になればそんな幻は時と環境に一瞬で埋もれていく。だが実際は違う、この世には人間以外に話せる種族が存在するのだ。しかし、その種族は少々危険な種族であり人間と共存する事は難しいだろう。何せ、この世界の支配権を人間に奪われ影に追いやられて人間を怨む者が、殆どだそうだから。
「最近は妖怪も、異種族間の領分ってのを解ってるようだ。おかげでこっちの依頼は激減、始めた6年前の4分の1未満になってしまった・・・。あってもラブレター探しやら。でも、本来はオレみたいなのは必要ないんだけどさ」
暗がりの書庫で一人の少年が文献を読み漁っている。彼の名前は冬宮幽真、都内の禊崎高校の一年生である。以後はユウと呼んでいく事にする。彼が今読んでいたのは、『江戸の闇』という江戸時代の役人達が遺した江戸時代の不可解な事件の数々が記録されたものだ。でも大半は、現代では半日もしないうちに解決してしまうものばかり。彼はその本をすぐに、床に投げ捨てた。
「あーあ、また本をこんなに床に散らかして・・・。お兄ちゃん、いくらお父さんとお母さんがもういないからって、本を散らかしていい事には絶対ならないんだから!」
本が床に落ちた音を聞いて、書庫に入ってきたのは妹の未貴だ。歳は八歳も離れており、兄の幽真とは性格が正反対。彼らの両親と同じである。もっとも、彼らの両親は未貴が産まれた後すぐに死んでしまったが。母親は体が弱く未貴の出産で体力を使い果たし、父親は母親が死んで三年後に交通事故に遭い死亡した。親戚もなく、二人だけで生き抜いてきたのだ。親の愛情をロクに受けられなかった妹はとてつもなく、寂しい思いをしたに違いない。
「ところで、・・・依頼が入ってるんだよウチに・・・」
「ん?」
ミキはバツが悪そうに話した。いつも依頼が来た時には、大喜びで知らせてくるのに今回は異常にテンションが低い。ユウはいくつかの原因を探ったが、いろいろな可能性が浮かびすぎて解らなかった。その依頼主を聞いて、ユウもテンションが下がった。
「けっ、カナから依頼かよ。人生何が起きるか解らないから、いつかは来るとは思ってたぞ。でも、少々早すぎるんじゃないか?」
「ま、まあいつものように、変装してしまえばバレる事もないんじゃない?」
カナはミキも顔や性格をよく知っている、ユウの小学校からの幼馴染みである。顔はそこらのアイドルより美麗で、正義感が強い。オマケに勘が鋭くて、人の嘘を見抜くのが巧いときている。そんな相手に正体がバレてしまえば、ユウ達は路頭に迷う事になりかねない。幽真は必死に考え抜き、結論を出す。
「ミキ、今回は匂いも変えるぞ。オレ達の仕事はヤクザ共よりも、数万倍危険な仕事だからな」
「解った、じゃ近くのスーパーで香水買ってくる」
ユウは変装をして、カナと決めた待ち合わせ場所に来た。未貴は家で待機している。カナは白いワンピースでやってきた。ユウは仕事上では、楠田という架空の人物に変装している。今回は敢えて手の込んだ事をせず、いつも通りに振舞おうと考えた。
「あの、楠田さん・・・。アタシ・・・、その、えっと・・・」
「誰でもあんな依頼をするのは、気が引けるものです。そういう依頼したくない依頼を受けて、解決して差し上げるのが我々の仕事なのです。春田さん、詳しくお話願えますでしょうか?」
カナの依頼は、所謂ストーカーである。顔や性格の評判が良く、他校からも一目見ようと多くの男子が芋洗い状態に集まってくる。ストーカーをする者はいくらでもおり、警察にも相談したが特定ができず未だに続いているのだった。
「いつも何時頃に、変な気配を感じますか?」
「いつも決まって部活帰りなので、六時から七時の間ですね・・・」
やはりこの問題は、大抵の女性は話すのを渋る。楠田は慎重に言葉を選び、少しずつ聞いていく。
「では及ばずながら、私めがその依頼をこなして見せましょう。こんな形でも、変装ができるので」
楠田はカナの目の前で変装をしてみせ、カナを驚かせた。楠田は足早に去り、変装を解いて家に戻った。
ユウは肩で息をしていた。そんなにも走っていないのに、息が上がってしまっていた。
「ねぇ、バレてないよね?」
「大丈夫さ、巧くやったから。それよりすぐに準備しろ、ストーカーは六時から七時頃に出るらしい」
ユウはまたカナに変装し、カナの帰宅通路に向かって歩いていった。
六時頃、俗に言う逢魔ヶ刻。カナに変装した幽真は一人で、薄暗い道を歩いていた。無論、これはユウの作戦だ。ストーカーを現行犯で押さえるため、ミキは遠方で押さえる準備を整えていた。そして、ついにそのストーカーが姿を見せた。
「けっ、出たな不届き者!ミキ、ソイツ押さえろ!」
「はいはーい!」
ストーカーは隣のクラスの、冴えない顔の男子だった。ミキに縛り上げられ、更に顔が冴えなくなっている。ストーカーはそのまま、カナの前に突き出された。
「さっ、お嬢様の鉄拳制裁を喰らいなさい」
バキャッ!という爽快過ぎる音と、ストーカーの情けない悲鳴が周囲に響き渡った。
カナは報酬として提示した茶菓子を差し出したが、楠田はそれをアッサリと断った。
ユウは変装を解き、妹と夕食にありついた。今日も昨日と同じ野菜炒め、子供二人のスペックでは限界が目に見えている。
夕食は僅か二十分足らずで終わり、ユウは書庫に籠った。ミキ曰く、書庫で何かしていないと生きた心地がしないんだそうだ。
ミキは学校の宿題を終え、某大物女優が出ている人気ドラマを見始める。と、同時にユウが書庫から声を荒げた。
「ボリューム下げろ、読書の邪魔だ!」
ミキはイヤイヤ、テレビのボリュームを下げた。現代家庭では、あまり見られない光景だと思われる。
ドラマも終わり、ミキは寝る準備に入った。ユウはまだ、書庫で本を読んでいた。
翌日、学校に行ってみるとカナの様子がおかしかった。クラス中が騒然し、何があったのか尋ねても歯をカタカタ震わせているばかりなのだ。ストーカーは退治し、『春田果菜が自分をつけていたストーカーをブッ飛ばした』という噂まで流してストーカー対策を施した。ユウは嫌な予感がした。
「カナ、・・・何怖い顔してんだよ?」
「ユウか、おはよ・・・。ユウなら話しても、・・・いいかな・・・。アタシ、ストーカーに遭ってるんだ・・・。前に懲らしめたのに、また現れたの・・・。今度は家の前に立ってて、手にはナイフが・・・。たまたまお隣さんが買い物帰りで帰ってきたところだったから、ストーカーは逃げていったけど・・・。去り際にこう言ったの・・・」
『次こそは殺す。散々喚かせて苦しませてから、惨めな最期を飾ってやる』
幼馴染みは憤怒し、隣のクラスへ乗り込んだ。
「くっそ、いないのか!なぁ、古川ってヤツ知らないか!?いつも来るのが遅いだけ、なのか!?」
「今日は風邪で休むとか・・・」
ユウはクラスを静かに出ていった。恐らく、被害者と遭遇したくないと考え家に引き籠ったのだろうと直感する。
ユウはトイレに入り、警察に電話した。無論、楠田の電話で。警察はすぐに対応し、ストーカーの潜伏地へ急行してくれた。
「何ですって!?古川は殺されてた!?それで、犯人のめぼしは?な、口から血を流してるのに外傷がどこにも無い!?毒物も検出されてない・・・?・・・そうですか、有り難う御座います」
電話を切ったユウは不可能犯罪を確信し、ある推論を抱く。そして、不敵に笑った。
「はは、何だよ何だよ。コレはアレか、アレだよな?よし、ミキに電話して準備を進めてもらお」
電話を受けたミキは淡々と答え、電話をさっと切る。ユウは教室に戻った。
ユウは自分の推論の完璧さに酔い痴れ、顔を歪めないようにするのが精一杯だった。唇を噛んだり、手の皮をつまんでねじってみたりもした。しかし、周囲からは逆に変な目で見られてしまった。
「カナ、変な事聞くけどソイツの特徴を覚えているか?何でもいいから、頼む」
「何よ・・・、ホント変な事聞くのね。ソイツは首に、紅い痣があったわ」
ユウは自分の推論の完璧さに輪がかかった事で、更に高揚感を高めた。そして、学校での生活はアッサリといつものように終わった。
部活帰り、カナは再びストーカーに遭遇した。ストーカーはゆっくりと近づいてくる、殺す、殺す、殺すと何度も何度も呟きながら。カナは後ずさりしようとするが、足が固まっていた。ストーカーは懐から得物を取り出し、刃を女子高生に向ける。
「グヘヘヘ、まずはどこら辺の肉を食おうかな」
「待てよクソ野郎、その子に手出しするとロクな死に方しねぇぜ」
ストーカーの背後には、楠田が拳銃を構えて立っていた。安全装置は既に外され、準備万端。健気な女子高生を、醜い野郎から守るため奮起したのだ。
「グヘヘヘ、馬鹿か貴様は。このワシに、そのような豆鉄砲は当たった感触すらせんぞ。この大妖怪、大入道様にはな!」
ストーカーは巨大化し、本性を現した。カナは腰を抜かし、地面にへばりつく。人間なら当然の結果であるが、この男は違った。
「お~お~、コイツは的がでかいな。テキトーに弾ぶっ放しても、絶対当たっちまうな」
カナはその一声に聞き覚えを感じた。この声は、ユウの声。・・・でも、きっと他人の空似。そうに決まっていると、少女は思い込もうとする。しかし、そんな脆い思想は砕けてしまった。
「やってみるがいい、若造!」
「あっ!テメェこの野郎、変装が解け・・・」
怪物が喋る際の風圧で、楠田、否、ユウの変装が解けてしまった。両者とも、この光景に言葉を何一つ出せずにいる。
この静寂を破ろうと、カナが口を動かした。
「あのさユウ、前に見つけたバイトってこういうのだったんだね」
「・・・まぁ、そうだが。このバイト、つーか仕事、イヤ違うな。学生とかは、職種に分類されてる。イヤイヤ、違う違う。この職はもう、六年くらい続けているんだ。10歳の時から、金を得るために始めた。母さん死んで、残った父親はクソニート。たまたま見つけちまったんだ、危険な仕事だが高額の報酬が確実にものにできるってネットに書かれていて。仕事内容は、互いの異種族間で結んだ掟を破った者を例外なく、秘密裏に葬る事。つまりは、こういう人間にちょっかい出しやがる妖怪たちをさっと消してやるんだよ。ミキには二年前に気付かれて、今じゃ協力してくれてるぜ」
大入道はこの隙を突いて攻撃して、豆粒のような人間二人を一瞬で潰せた。だが、できない。何故なら、その全身を背後から金縛りされているからだ。
「小娘!その技は、どこで覚えたのだ!?」
「いいじゃない、そんなどうでもいい事。自分の状況をまるで解っていない口ぶり、妖怪は人間と違って相当KYだね」
突如銃声が響き、弾丸が怪物の心臓を貫いた。見た目は普通の銃、妖怪ならダメージどころか当たりもしない。なのに、その銃弾は妖怪であるソイツの心臓を一発で貫いてしまったのだ。
「どうだ妖怪、拳銃なんかでアッサリ退場しちまう感想は。もっともコレは非売品『永遠の民の涙-アイヴァールドルフ-』、妖怪にも効く特別仕様の銃なんだよ」
妖怪はその話が終わる前に、肉体と精神が終わっていた。
カナは悪夢から覚め、ユウの前に立った。一から全部説明させ、その後一発お見舞いしようと考えていた。
「改めて、説明しなさいよ。今までどんな事して、今に至るのか」
「お兄ちゃんはミキのために、今もずっと頑張ってるの!それだけじゃ、駄目なの!?」
「寝てろ、疲れてるだろーが」
ユウはミキを気絶させ、説明に入った。彼是どのくらいだろうか、一時間以上話していた。
「邪悪狩り-ブラックハント-ね、解ったわ。少なくとも、アタシには何もできない仕事なのは確かね。
勿論だけど、この仕事は正式な職業じゃない。極めて違法なのは、ユウも解ってるわね?」
邪悪狩り-ブラックハント-はこの世でもっとも疎まれる仕事、命を私欲に汚れた感性と能力で如何なる者も殺してしまう。違法も何もなく、捕まればその時点で死刑が確定する。しかも死んだという記録は、世界の闇に包まれ親しい者達も容赦なく弾圧を被る。カナはミキをそんな闇に落とした、目の前の幼馴染みに激しい怒りをもっているのだった。
「今すぐこの仕事を止めなさい!生活の保障なら、アタシの親が切り盛りしてくれる!!ユウもミキちゃんも、あんな怪物達と闘わなくていいのよ!?」
「悪いが、オレは無論だがミキも多分、その誘いは断るぜ。理由は?、なんて野暮過ぎる事は聞くんじゃねぇぞ。ミキはもう園児じゃない、立派な小学生だしある意味オレより大人だ。オレ達は自分で好きな道を選んだ。他人に、どうこう正論並べて人の希望を崩す権利なんかないんだよ」
ユウはミキを担いで、自分の家に歩いていった。
如何でしたか?こんな出来損ないを読んで、少しでも何かを感じていただけたら是非ともご感想をお願いいたします。