生徒会の令嬢
「それってどういう…」
「人を殴ったのだから当たり前でしょう。元々問題行動が目立つ生徒だったから、この事件が決め手になったのね」
「いやいや…いくら何でも…早くないんですか?事が起きてからまだ20分も経ってないんですよ」
「そうね、正確にはこれから決まるのだけれど、決定事項だからそう言ったのよ。それじゃあ、また後でゆっくり話をしましょう。神谷圭くん」
そう言って会長は保健室を後にした。
一体…何が起こってるんだ。
◇
傷の手当てをしてから教室に戻るが、相変わらず俺を見る目は冷たい。
「すみません、戻りました」といい、自分の席に着く。
すると、凛がものすごい形相でこちらを睨んでいた。
…あいつがわりーだろと思っていたのだが、既に黒柴秀太の姿はそこになかった。
まじで…退学になるのか?
それから、昼になると凛が近づいてきたので、急いで廊下に出た。
「待て!圭!!」
その静止を振り切り、なんとかいつも通り図書室に到着し、ぼっち飯をかましていた。
…あいつが退学になっても状況は変わらないんだよな…と思っていると、校内放送が流れる。
『2年A組、神谷圭くん。至急、生徒会室へお越しください。 繰り返します。2年A組、神谷圭くん、至急生徒会室へ……』
生徒会…だと?
俺は嫌な予感しかしなかったが、行かないわけにもいかないので、重い腰を上げて生徒会室に向かった。
深呼吸をしてからノックをする。
「はい、どうぞ」
そうして、生徒会室の扉を開けると、そこには三人の美少女が揃っていた。
九鬼桜──生徒会長。
黒髪の超絶美少女で、学年トップの成績、容姿、品格、全てを兼ね備えた完璧超人。
ハッキリ言って、凛の完全上位互換の美少女であった。
一条美琴──副会長。
銀髪のクールビューティーで、学年2位であり、生徒会の他に剣道部主将も務める天才巨乳美少女。
男子ウケだけで言えば、彼女が一番であろう。
天塚綾乃──書記。
ふわふわ金髪で天然系の雰囲気を醸し出すが、学年3位の頭脳に加え、この年で既に会社を経営してるJK社長である。
そんな御三家美令嬢が三人揃い踏みしていた。
「ようこそ、神谷圭くん」
九鬼桜が、優雅に微笑んで俺を迎える。
「…どうも」
俺は戸惑いながら扉を閉める。
一条美琴は冷たい視線をこちらに向けているだけで喋らない。
すると、会長が咳払いしてからこう言った。
「単刀直入に言うわ私たちと、ラブコメをしましょう?」
「……は?」
俺の頭が真っ白になった。
すると、藤原綾乃が、にこにこしながら手を合わせて、「ほら神谷くん、最近、凛ちゃんとは許嫁ではなくなったでしょ?だから、これからは自由に恋愛ができるってこと!なので、私たちとラブコメをしましょうって!」
「いや…意味が…」
すると会長が優しく、しかし絶対零度の笑みを浮かべて、「もちろん、拒否権はないわよ? これは……命令だから」と。
「私たちとラブコメをしましょう」
その言葉が、俺の耳に甘く響いた。
……どうやら、俺の望んでいたラブコメは来ないらしい。
「ラブコメ…とは?」
「ラブ(恋愛)とコメディ(喜劇)を掛け合わせた言葉で、正式名称は「ラブコメディ」。登場人物の恋愛模様を中心に、クスッと笑えるギャグ要素や日常シーンをテンポよく織り交ぜた、漫画、アニメ、ドラマなどで人気の作品ジャンルのことよ」
すげーAIに聞いたときみたいな返答された。
「いえ、流石にラブコメの意味は知ってます。聞きたかったのは…何で俺と?という点なのですが…」
「3人ともあなたのことが好きだから。それ以外ないでしょう」と、まさかの3人まとめて告白された。
お得パックにしては内容量増し増しなのですが?
胃もたれするぞ。
「いくら御三家の令嬢である私たちとは言え、名家の許嫁をNTRとか出来ないからね。だから…餌を撒いた。それにまんまと引っかかって、そして男の方も無事追放できた。障害は何もないと思うけど。きっと、あなたのお母さんも喜んでくれるはずよ」
母さん…ね。
てか、上品なその口からNTRと聞ける時が来るなんて…。
つーかここまで流れがもしかして全て予定通りという事なのだろうか。
…こわ。詮索はやめておこう…。
「えっと…ひとまず…好かれる要因が分からないです」
「好きになった理由はそれぞれ違ったけど、それはまた追々。ということで、今日からあなたは生徒会広報に任命するわ」
そういや、生徒会は広報だけ空席になっていたけど…これもか…。
「私達はほしいものは全て手に入れてきた。御三家の幼馴染同士で本気で争うのはこれが初めて。光栄に思いなさい」
俺は…俺は平凡な青春ラブコメを送りたいだけなのに。
「それと、その腕の傷は?」と、Yシャツの袖からちらっと見えた絆創膏を見て、会長がすかさず聞いてくる。
「あー、これはなんでもないです」と、傷を隠す。
「…そう。それならいいけど。これからよろしくね」
こうして、俺の人生がまた予想外の方向で動き始めた。




