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茶番

コースの途中で休憩が挟まれた。 独特の緊張感が漂う場だ。皆、席を立って手洗いに向かったり、数人で談笑したりしている。私は外の空気を吸いに庭へ出ることにした。 やはり外はいい。このまましばらくのんびりしたいところだが、まあ、そうもいかないだろう。


「この後、わしがちょっと『楽しむ』から、後は頼んだぞ」


レオナード王が近づいてきて、愉快そうに笑いながら言った。


「またですか……。わかりましたが、ほどほどにしてくださいね。疲れるので」


「はっはっは。そんなすぐ疲れるような性格でもあるまいに」


以前これをやった時の感触が良かったから、またやるつもりなのだろう。宰相、後始末は頑張ってくれ。


晩餐会の会場に戻る。


「ところで、魔術工房マジック・ワークショップとはどのようなチームなのかね? 連邦の冒険者は王国とは戦闘スタイルが異なると聞いているが、興味があってな」


レオナード王が口火を切った。


「そうですわね……アデル、説明を」


シエラ姫の促しに、アデルが応える。


「かしこまりました。一言で申し上げれば、支援魔法を軸とした組織的な攻防が主流です。複数人、時には数十人の力を組み合わせることで竜をも屠る。それが我々の考え方です」


「ほう、面白い。我が国の冒険者は皆、個の力で戦う傾向があるからなあ。それは、やはり『個別の力の差』があるからなのだろうかね?」


無邪気な顔をして、「連邦の冒険者はレベルが低いのか?」などと言い出しやがった。 有事の際に主戦力となる冒険者を侮辱することは、国力そのものを軽んじる暴挙に近い。それを「何もわかっていない無垢な顔」でやってのけるのだから、レオナード王はタチが悪い。


「確実性と改善の問題です。我が国では確実に勝つことが重視され、常に研鑽し続けることが求められます。個人の力頼みでは、そのどちらも阻害してしまいますから」


「ほう、なるほど。……らしいぞ、カノン。どう思うかね?」


「連邦の皆様がそう思われているのであれば、よろしいのではないでしょうか。個人的には、あまりピンときませんが」


カノンがつまらなそうに回答すると、グレッグと名乗った男が会話に割って入った。


「面白い。なぜピンとこないのか、聞かせてもらえないか?」


いよいよヒートアップしそうな雰囲気だ。


「誰かに負けたことも、依頼を失敗したこともございませんの。ですから『確実に勝つ方法』を考えたこともございませんし、ましてや改善する必要もございませんわ」


「なるほどな。連邦は敵も魔物も強えことが多いから、その差かもしれねえな」


次の瞬間、グレッグの体が吹き飛んだ。 だが、彼は空中で受け身を取り、壁を蹴って着地してみせた。


「いきなり何だ!?」


「やっぱり。今の程度でそこまで吹き飛ぶようでは、集団戦の方が向いているかもしれませんわね」


カノンが不敵に笑う。……こいつ、本当に好戦的すぎる。 手が出るのが早すぎる。私だって、もう少しは考えてから動くぞ。


一方の連邦側。シエラ姫の目つきが鋭くなり、他のメンバーも立ち上がって臨戦態勢に入った。会場に刺すような空気が流れる。 ちらりとレオナード王を見ると、私に向かってウインクを送ってきた。……はいはい、私の出番ですね。


「申し訳ありません、姫。カノンはこうやって相手の技量を測る『遊び』が好きなものでして」


「何? 文句あるの?」


「いきなり攻撃された我々としては、おとなしく引き下がるわけにはいきませんわ」


カノンとシエラ姫からの同時攻撃(言葉の)。本当に血の気が多いコンビだ。


「カノン、落ち着け」


「うるさい!」


カノンの耳元を光が通過し、背後の壁に音もなく穴が開く。 彼女を一瞬で冷静にさせる方法――『虚無のヴォイド・ゼロ』を発動した結果だ。


「落ち着けって……な?」


「え、ええ……」


「今のは、魔法でしょうか? シールドが破壊されたように見えましたが……」


「ああ、そうだよ。詳細は『企業秘密』ってやつだな」


シエラ姫に私が意味深な説明を加えると、頃合いを見計らったように王が割って入る。


「レン、カノンは落ち着いたか? どうやら興奮してきた者たちもいるようだし、今日はここまでにしよう。宰相、締めてくれるかね?」


レオナード王が鮮やかに場をまとめる。 ……実はこれ、以前の会合で「怪しい動きをしていた国内の大貴族」をビビらせ、色々白状させた成功体験に基づいたストーリーなのだ。 ちなみに、カノン本人がその「筋書き」に全く気づいていないことこそが、この芝居のリアリティを支えるきもである。

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