連邦のSランク
馬車を降りた後、晩餐会会場まで騎士に誘導されて歩いていく。女性騎士が多い気がする。カノンへの配慮だろうか?
「なんか女性騎士、多くないか?」
「私がリクエストしたのよ。おっさんの汚い姿を見たくないって」
「おう、そうですか……。あなた、伯爵家のご令嬢ですよね?」
「ちゃんと人前ではお嬢様やってるわよ?」
そういうことではないのだが……。
とりあえず、会場に着くと既にアルカディア王国の主要メンバーは全員集結しているようだ。国王レオナード三世、イザベラ王妃、宰相、外務大臣……錚々たるメンツである。
2. 国王・王妃との会話と配置
「おお、二人とも来てくれたか、ありがたい! と言っても俺が呼んだら来るしかないわな」
ガハハと笑うのはレオナード王。
「一週間前ではドレスの準備が大変でしたわ。もう少し早くお呼びくださらない?」
「すまんすまん、色々あってな!」
「とりあえず俺らはどこに座れば良いんですかね?」
「カノンはそっち、レンはこっちだ!」
レンとカノンは、国王と王妃を挟んで両端に座らされる。カノンを見てハラハラすることはない距離で安心しているが、国王の真横だ。
「ここで良いのですか? 王妃の方が良い気……」
「いやー、まあ理由はわかるでしょう? すいませんがお願いしますねー」
穏やかに笑うのはイザベラ王妃。地方の田舎貴族出身で王妃までのしあがった豪胆さを持つが、見た目は穏やかな優しい女性である。見た目は。きっと、何かあったときの壁役として配置したいのだろう。カノンは有名だから対策されている可能性も踏まえて、念の為反対側に配置と。油断も隙もない。
「レオナード王、今日はなんの話を披露する予定ですか?」
「今日はアルフレッドがヴェリディア帝土で女に騙されて金を取られた話でもしようかなと思って準備してるぞ!」
「大受けか、沈黙か、二択になりそうですね」
「それはそれで面白い! 人生はギャンブルしないとな!」
「あなた、もう少し真面目な話をしませんか? カノンがレンに告白しようとして手紙を書いたけど、結局恥ずかしくなってゴミ箱に捨てた話なんてどうかしら?」
「なんですかそれ!! なんで知ってるんですか!」
カノンが奥で叫んでいる。国王と王妃は大笑いしているが、大臣たちはすごい顔をしている。ここで笑ったらカノンに物理的に殺されかねないからな、わかるぞその気持ち。
レンはとりあえず喉が渇いたふりをしてウェイターに飲み物を聞いてみた。戦略的撤退である。
3. 連邦チームの登場
さて、時間になり入口のドアが開かれる。連邦のお出ましだ。
先頭は……絶世の美女である。カノンも美人だが、レベルが違う顔とスタイル。思わずポカンとしていたら目が合って、笑われてしまう。恥ずかしい……。
そのあとは、メガネのお兄さん(アデル)、ドワーフのおじさん(グレッグ)、朗らかなお姉さん(メディサ)が続く。そして、真面目そうなおじさん達(大臣)が続く。先頭は姫であり、『魔術工房』のメンバーである。
「皆様、この度は貴重なお時間をありがとうございます。ルミナリア連邦第二王女、シエラです。以後お見知り置きを」
そのあとは自己紹介タイムである。色々な人が色々言っていたが、レンはもう覚えることを放棄して、ワインの瓶を見ながら味を予想することに夢中になっていた。
「おい、お前も自己紹介しろ」
頭をレオナード王に叩かれて自分の番だと気づく。穏やかな雰囲気が連邦側には流れているが、自己紹介は嫌なんだ。
「宵闇の極光のリーダーをやっている、レンだ。よろしく頼む」
その瞬間、空気が凍る。こいつはやばい、という空気になってしまうので自己紹介は嫌なんだ。
4. 姫とのマウント合戦
「まあ、貴方が。竜殺しの話は私も聞いていますわ。そんな大物が出席いただいているなんて、なんて素敵なのでしょう!」
目を輝かせるシエラ姫。国王と王妃を無視した、一見すると無邪気な失礼発言だが……レンにはわかる、これは敢えての問題発言だろうと。なぜわかるかって? セリーナがよく使う「政治的マウンティングの手法」だからだ。
そして、このような王国を見下した発言をする相手にはこう言い返せと、セリーナに教育されている。
「ありがとうございます。レオナード王から呼ばれたら参加せざるを得ないですからね。魔術工房でしたっけ? 《《知らないチームの武勇伝を聞くのは大好きでして、是非色々お話しできると幸いです》》」
国王を必ず立てること、そして相手のことを知らないと断言すること。これでマウントを取ることが大事らしい。なんで? 知らない。
「なかなか連邦から出させてもらえないので、ご存じないのも仕方がないですわ。どうぞよろしく」
シエラ姫は笑顔。だが、隣のドワーフのおじさん(グレッグ)はイラッとした顔をしている。不機嫌になるくらいなら良いが、殺し合いだけは勘弁してくれよ。Sランクを殺したら、色々と言い訳をしないといけないのが面倒なんだよな……。




