神隠し
「あの二人を連れて行って大丈夫なの? あの子たちは貴重な戦力なんだから、殺さないでよ?」
フィエルは腕を組み、セリーナを睨む。
「大丈夫でしょう。リリィにもガドルにも、きちんと釘は刺してあるわ。それに、ヴァルディアは大したことのない街よ。猫の門番でも上位に食い込めるわ」
「でもSランクがいるんでしょ。警備とかもいるんじゃない?」
「ええ」
「いくらあの二人でも、Aランクと一緒にSランクチームとやり合えるとは思えないけどね」
「どうかしらね」
セリーナはわずかに笑う。
「……勝算があるのね。了解。でも羨ましいなあ。私も行きたい。ザヴィルにはレンもいるんでしょ? とりあえず顔出すだけでもいい?」
「あなたは目立ちすぎるのよ。待機。大人しくしていなさい。リリィが暴れたらどうせ出番になるわ」
――その頃、ザヴィル。
ソフィアと別れた帰り道、レンは階段に腰掛けて食事をしているシオンを見かけた。
「珍しいな、こんなところで」
「仕事中だよ」
「そうか、お疲れ」
軽く挨拶を交わして過ぎ去る。
(情報屋か・・・情報が必要なことは・・・)
レンはふとソフィアの話を思い出す。テオとソフィアがいなくなる可能性。そんなことをふと思ってしまった。
「最近消えたEランクの話、詳しく知ってるか?」
「手付け料」
シオンは即答した。
「飯を奢れ」
近くの飲み屋に入り、レンは適当に料理を注文する。シオンは満足そうに食べながら話し始めた。
「消えたのはEランクの《緑影の小鹿》。依頼は珍しい薬草の採取だね。大蜂の巣が多い森での採取。命のリスクは低いけど、怪我の可能性は高い。ミナ好みの“ギリギリ”依頼」
レンは頷く。
「成長が早くて、それなりに名前も出てたチームだった。その森はEランク丸ごと消えるような場所じゃない。何かあったんじゃないかって話題になってたよ」
「冒険者狩りの可能性は?」
シオンは箸を止めた。
「銀貨一枚」
支払うと、彼女は肩をすくめる。
「可能性は低い。《緑影の小鹿》が有名だったのは成長が早いから。で、なぜ早いかというとミナの依頼を大量に受けてたから。じゃあなぜ受けていたと思う?それは女好きで飲み屋に貢いでたから金がなかったなんだ。飲んで騒いで女遊び。だから顔も広いというわけ。つまり、武器も装備も大したことない。多くの人が知っている事実だから狩るメリットがない」
「出身や身分は?」
「普通。ごく普通。恨みも特に聞かない。本当に普通のEランクチームだね」
レンは少し考え、口に出す。
「……神隠し?」
シオンの動きが止まった。
「よく知ってるね」
声が低くなる。
「否定はできない。最近、冒険者に限らず、この街に一定期間住んでいた人間が突然消えることが増えてる。共通点はない。ただ、明らかに“消えるタイプじゃない”人間が消えてる。彼らも当てはまるよ」
「街は?」
「伏せてるよ。人なんて毎日いなくなる。けど、これは違う」
分からないことが多い。ただ直感で有名なミナがおかしいという話。きっと何かあるのだろう。
「もっと知りたいなら調べようか?」
「いや、そこまではいい。何かわかったら教えてくれ」
「了解。でもこの話、あまり広めない方がいい。一部、神経質な連中が目を光らせてる」
レンは静かに立ち上がる。
「助かった」
「こちらこそ食事美味しかった。腹が減っていたから助かったよ」
レンが去った後、シオンは箸を止めたまま呟く。
「やっぱり、こっち側の人間だな。レンは……それとも王国側か?」
“神隠し”という言葉を知っているのは、裏の人間か、ザヴィル上層部の一部だけだ。
「まあ、危ない匂いはしないし、金払いもいい。ちょっと本気で探ってみるかね」




