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消えた冒険者達

ギルドを出た後、二人はそのまま武器屋へ向かった。ザヴィルでも評判の店らしく、店内は明るく、壁一面に武器が整然と並んでいる。初心者から中級者向けといった雰囲気で、威圧感はないが質は悪くなさそうだ。

「いらっしゃいませ。武器をお探しですか?」

穏やかそうな男性店員が話しかけてくる。

「ええ、この人が依頼で剣を壊しちゃって」

「以前使用されていた剣は、どういった剣でしょうか?」

「普通の……剣だな。貰い物なんだ。安物のはず」

「最近、冒険者になられたのでしょうか?」

「そうなんだ。よくわかったな」

「私もそうでしたから。今は引退してこうして働いていますが、そういう時期もありまして。では、どういった武器が良いかなど、特にご希望はございませんか?」


「特にはないな」

「かしこまりました。それでは、いくつか気になったものを振るってみてください。よろしければ、おすすめもいたします」

「レン、そういうの興味ないのね。テオなんて、剣選びで半日かかってたわ」

「お仲間でしょうか? 冒険者の方は、多くの方が武器や防具にこだわります。武器や防具は“ブランド”にもなりますし、分かる人には分かる強さの証明にもなりますから」

「テオもよく、通りすがりに“あの武器はすごいからきっと強いやつだ”とか言ってるわね」

「なるほど……」


レンはふと振り返る。これまで武器に対する強いこだわりはなかった。命に関わる以上、質の良いものは選んできたが、大剣、槍、片手剣と状況に応じて使い分けていた。そのため、どうしても持ってきたいという一本もなく、すべて王都に置いてきた。

(武器や防具に特徴がないのも、俺が有名でない理由の一つかもしれないな)

確かに、仲間たちは皆、武器に強い印象がある。ガドルは自分より大きい大楯、フィエルは白い剣と白い鎧、セリーナは青い杖と青いドレス、リリィは傘とアンデッド。どれも一目で分かる。


とりあえず、いくつか武器を手に取る。大剣、二刀流用の短剣、片手剣、槍。

順番に振ってみる。重心、柄の長さ、刃のバランス。どれも違和感はない。

「……珍しいですね」

店員が呟く。

「どれを選ばれても問題なさそうです。普通は得意不得意がはっきり出るのですが」

「すごいわね。テオに羨ましがられそう。武器大好きなのに、剣以外は難しそうで断念したから」


「前と同じような剣でも良いと思います。それか、他のメンバーとの兼ね合いで決めるのも一つの手かもしれません」

ソフィアが横から言う。

「魔法使いと剣の二人だから、どれを選んでもチーム的には影響ない気もするけどね」

「確かに、その体制であれば柔軟に動けるでしょうし、影響は少なそうですね」

「じゃあ……」


レンは並んだ武器の中から、大ぶりの大剣を手に取った。

「これにするか。かっこいいしな」

「理由それだけ?」

「十分だろ」


大剣を構えた瞬間、ふと昔の記憶がよぎる。Sランクの大剣二刀流の老ドワーフ。巨大な刃を軽々と振り回し、笑いながら魔物をなぎ倒していた。なぜ大剣なのかと聞いたとき、「小さい剣だとすぐ折れるし、軽すぎる」と笑っていたのを思い出す。

(あの人、今どこを旅しているんだろうな)


支払いを済ませて店を出ると、ソフィアがぽつりと呟いた。

「そういえば、最近仲が良かったEランクのチームが一つ行方不明なの。この店で一緒に武器を買ったのを思い出したわ」

「依頼中に消えたのか?」

「そうみたい。魔物かしらね」

その言葉に、レンは昨夜の会話を思い出す。

(神隠し、か)


「最近、行方不明が多いと聞いたな」

「ミナさんも受け持ちで二組目だって言ってたわ。冒険者狩りとかでなければいいけど」

「冒険者狩りも、ありうるな……どこからか流れ着いた連中とか」

依頼中は人目につきにくい。DやEランクは装備も整っているうえ、ある程度の金を持ち歩くことも多い。腕に自信のある者が、冒険者狙いで活動することもある。


「ミナさんからは“人身売買の可能性も感じるので、気をつけてくださいね”って言われたわ」

「人身売買?」

「私もびっくりしたわ。そしたら、“感覚ですけど、魔物や単純な冒険者狩りとは少し違う気がするんです。他にあり得るとしたら……人身売買かな、と”って」

ソフィアは少しミナの真似をしてみせる。


王が最も嫌う犯罪の一つが人身売買だ。発覚すれば死刑は確実。過去には、それに関与した貴族が処刑され、一族は国外追放になった例もある。噂が流れるだけで、王国の暗部が動くとも言われている。

それほど重い罪だ。だからこそ、そんなことが本当に起きているとは想像しにくい。

(……だが、起きないとも限らないか)


ザヴィルの賑わいの中で、ほんのわずかな違和感だけが、静かに残っていた。

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