チーム
報奨金を受け取り、三人で簡単な祝勝会をすることになった。
「いやー、また疲れる依頼だったわ。もう少し簡単に稼げるものを受けたいんだけど」
酒を飲みながらソフィアがぼやく。
「そういう依頼を受けようとするとミナさんに怒られるんだよなあ。そういう冒険者は碌な奴にならないと」
肉を食べながらテオもぼやく。
「そうなのか、なんでなんだ?」
「効率性を重視し出すと「冒険」しなくなるからですって。死ぬかどうかの瀬戸際で踏ん張ってこそ成長するんだと」
「まあ言っていることはわかるんだが、疲れるよなー。報奨金は良いんだけどさ」
確かに、冒険者はリスクを取らないと先に進めないとはされている。ただリスクを取りすぎると消えてしまう。慎重さと大胆さが兼ね備わる必要がある職業だ。
「後、見た目も大事って言うのよね。記憶に残りやすい見た目だと知名度も上がりやすく、指名依頼も来やすいって。そんなこと我々に言われてもねぇ」
「田舎育ちの一般人だからなあ。光る剣とか持てばいいのかね。白い鎧とか」
「フィエル様のファン扱いで終わりよ」
「フィエル・・・様?」
どう考えても白いといえばあのフィエルだろう。
「ええ、Sランク宵闇の極光のフィエル様よ。超絶美人な上に真っ白な剣と鎧で有名なの。知らない?」
「聞いたことはあるな・・・」
「俺らも、見たって奴から聞いた話しか知らないんだけどな。早すぎて切ったところが何も見えなかったらしい。かっけえよなあ」
見えない、ということはないが・・・とりあえず静かに頷いておく。
酒と食事が一通り終わった後。
「正式に、うちのチームに参加してくれたら嬉しい」
テオは少し緊張した様子で言う。
「これからも一緒にやれたら、心強いわ」
ソフィアも真剣な目で頷く。
レンは一瞬だけ考え、そして答えた。
「よろしく頼む」
「とりあえずお疲れ様でした。私はもう限界だから寝る。レン、これからよろしくねー。この後のことはテオと話しておいて」
ソフィアは眠そうに目を擦り、先に帰っていった。
「だいぶ酔っていたけど一人で帰って大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ。あいつああ見えて強いんだ」
「強い?」
「殴る蹴る、が。恥ずかしがって魔法に特化している感じを出しているがいざとなれば腕力で戦う武闘派なんだぜ」
(見えない・・・)
残ったテオが、少し楽しそうに言う。
「さて、男の仲間ができたら、行ってみたいところがあったんだ。ソフィアもいないし店を変えようじゃないか」
連れて行かれた店は、「黄金の街灯」という名の酒場だった。「女性と一緒に飲める店」とのこと。
二人は個室ではなく、安い一般席に腰を下ろす。
「いやー、一回行ってみたかったんだ。一人だと勇気が出なくてなあ。流石に飲み屋で仲良くなったやつと行くのは怖いし」
「こういう店は初めてなのか?」
「そうだなー!話には聞いていたから行ってみたかったんだよずっと。ここは安いが楽しめるので有名らしい。レンは初めてか?」
「何回かあるな・・・」
「そうなのか!ザヴィル来る前か?」
「だな。流石に一人ではいけないよ」
「なら、コツを教えてくれ!」
アイルーンとのやりとりを思い出しながらレンは答える。ガドルと三足の鴉を訪れる時は仕事ではなく楽しむことをメインとすることも多かったので慣れている方なのかもしれない。
「とにかく、ハマりすぎないように気をつけないと、だな。貢ぎすぎてにっちもさっちも行かなくなったやつを見たことがある」
ガドルのことである。チームにバレないように怪しげな業者から金を借りようとしてセリーナにバレた結果、フィエルの訓練に1ヶ月付き合わされる罰を受けていた。
そんな話をしていると女性が二人ついた。ルミナとカリスと名乗る。明るく快活なルミナと、落ち着いた雰囲気のカリス。
「お客さんたち、冒険者?」
そんな軽い話題から始まり、自然と廃坑の話になる。テオは酒が進むにつれ饒舌になり、戦いの様子を身振り手振りで語る。ルミナが相槌を打ち、場を盛り上げる。
「こういうお店、初めてですか?」
カリスが柔らかく微笑んだ。
「いや、何回かはある」
レンが答えると、彼女は少し誇らしげに言う。
「この店、高級ではないんですが、接客の質が高いって評判なんです。何せ、王都にも姉妹店舗があるんですよ」
「……なんて店?」
嫌な予感がして、レンは聞き返した。
「『三足の鴉』です」
レンは、思わず天を仰いだ。
その様子を見て、カリスはにっこりと笑っていた。




