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31/39

完了

警戒を解かず、三人は廃坑からの撤退を開始した。完全に静まったわけではないが、あれほど耳を刺していた鳴き声はもう聞こえない。代わりに、時折どこかで羽音が反響するだけだ。

進む途中、取り残された子供個体が単発で襲いかかってくることはあったが、数は少なく、連携もない。テオが一太刀で弾き、レンがフォローするだけで十分対処できた。親個体が追ってくる様子もない。

「……本当に、解決したのかもしれないな」

レンの呟きは、独り言のようでいて、三人の気持ちを代弁していた。


洞窟を抜けると、真っ暗闇の中、村の方角から、松明の灯りがいくつも揺れている。近づくにつれ、武器を手にした村人たちの姿が見えてきた。槍や弓、農具を改造したようなものまである。

「音が聞こえなくなったから、慌てて来たんだ!」

年配の男が声を張り上げる。

「倒したのか?」

レンたちは首を振り、状況を説明した。コウモリのような魔物が多数いたこと。群体型で親個体が統率していること。親個体を殺していないが、鳴き声を封じたこと。村人たちは真剣な顔で話を聞き、やがて深く息を吐いた。

「……そういう魔物だったのか」

「助かった。本当に助かったよ」

村人たちはすぐに行動に移った。廃坑の入口に、太い縄と金属線を組み合わせた大きな網を張り始める。かなりの重さがあり、数人がかりで固定している。


「大型の魔物でもなきゃ破れない網だ。聞いている限り今回のやつなら、まず大丈夫だろう」

説明を聞きながら、レンは廃坑の奥を一度だけ振り返った。中から音は返ってこない。

「これで、ようやくぐっすり眠れる……ありがとう」

何度も頭を下げられ、テオは照れたように笑い、ソフィアは力なく手を振った。

さすがに限界だったのだろう。三人は無言で村へ戻り、そのまま宿に入った。ソフィアは半分目を閉じながらテオは剣を引きずりながら部屋へ、消えていく。レンも全身の疲労を自覚しながら、部屋へ戻る。腕輪に吸い取られないよう気をつけていたがそれなりに吸収はされていたのか、それとも慣れない役割に疲れていたのか。気づけば寝てしまっていた。


翌朝、まだ薄暗いうちに目を覚ます。体は重いが、不快な緊張はない。

出立の準備をしていると、村人が声をかけてきた。

「持っていってくれ。感謝の印だ」

差し出されたのは、手作りの弁当だった。帰り道、腹が減って封を開けると、素朴だが驚くほど味が良い。

(……こういうのが、一番嬉しいな)

レンは、噛みしめるように食べた。

夕方、ザヴィルに戻り、ギルドへ向かう。ミナの窓口は相変わらず空いていた。状況を一通り説明し、回収した子供個体の魔石と、村から受け取った承認書を差し出す。

ミナは書類に目を通し、少しだけ考え込んでから顔を上げた。

「……合格です」

にっこりとした笑顔。

「子供を倒しすぎていたら、おそらく大変なことになっていました。記録によると、親個体は大きさが倍近くになり、制御不能になるそうです」

背中に冷たいものが走る。

「でも、三人の連携と、頭を使ったアプローチならクリアできる依頼でした。見込みどうりです」


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