表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/41

消音

群体としての数も、戦略性も、すでに十分すぎるほど分かった。ここから先、全てを倒し切るのは現実的ではない。

ソフィアの炎魔法も、当て所を誤れば即座に崩落や巻き込みにつながる。子供を殺しすぎれば親個体がさらに強化される可能性があるし、逆に親を先に殺せば、統率を失った子供たちが暴走する危険もある。

詰みかけている――そう感じるほど、選択肢は限られていた。


「……とにかく、鳴き声をなくしたい」

ソフィアが吐き捨てるように言う。苛立ちを隠しきれず、足元に転がっていた死骸を蹴り飛ばした。

きゅう。

小さく、かすれた音がした。

「……生きてる?」


まだ完全には死んでいなかったらしい。転がった個体が、わずかに身をよじっている。テオがそれを拾い上げた。

「喉が……震えてるな」

そう言いながら、指で喉元を軽く引っ張る。皮膚が妙に伸びる。

「……変だな」


レンは無言でナイフを抜き、喉元を浅く切り裂いた。個体は暴れ続けているが、先ほどまで確かにあった喉の震えが止まっている。

「……これ、鳴かなくなったんじゃない?」

ソフィアが半信半疑で言う。

「喉を切り裂けば、鳴けなくなる……ってこと?」


「全部やるのか?」

テオが眉をひそめる。

「それに、殺した方が早いだろ」


「親個体だけやればいいかもしれない」

レンは視線を親個体へ向けたまま言った。

「鳴き声は、連携を取るためのものだ。親と子の間でコミュニケーションをしている可能性が高い。親が鳴けなくなれば、子供たちが鳴く意味もなくなる」


「……でも、子供たちが暴れ出したらどうする?」

ソフィアが不安そうに尋ねる。

「その時は、親を殺して撤退する」

レンは即答した。

「廃坑を埋める方法はいくらでもある。やりようはある」


頭の片隅で、「虚無の王」を使う最悪のケースも計算に入れる。ここで全てを終わらせる手段はある。ただし、それは最後の一線だ。

まだ、そこまで追い込まれてはいない。


羽に剣が突き刺さったまま、親個体は苛立つように壁に張り付いている。苦しんでいるというより、異物を嫌がっているような動きだ。

「行くぞ」


テオとレンは視線を交わし、同時に動いた。

テオが前に出て、ソニックブレードを放つ。風圧で子供たちを吹き飛ばし、道をこじ開ける。

レンはその隙に一気に距離を詰め、ナイフを構えた。狙いは一点、喉。

刃が走る。


親個体は大きく身をよじらせるが、致命的なダメージは入っていない。苦痛というより、不快感に対する反応に近い。

――鳴けるか?

レンは、次の変化を待った。


バタバタ。

親個体は羽ばたいているだけのように見える。耳栓越しでも伝わるような大音量はない。小さな声が出ているのかどうかも分からない。そのまま天井付近へ飛び、旋回している。子供たちは……戸惑っているようだった。

「どうだ!?」

テオが叫ぶ。耳栓越しでも分かる大声に、レンは思わず耳を塞ぐ。

「「うるさい」」

レンとソフィアが同時に叫んだ。

「お前らもうるせえ! ……って、静かになったのか……?」


耳栓を外す。鳴き声は消え、聞こえるのは羽音だけだった。

「静かになったみたい。レンの予想、当たってたのね」

「すげえな」

「まだ分からない……一旦、落ち着いただけの可能性もある」

「そうね。ただ、ちょっと疲れたわ。そろそろ撤退してみない?」

「下がりながら様子を見るか! レンも、大丈夫だと思うか?」

「そうだな。入口近くまで戻って様子を見よう。最後にどうするかは、村の人に相談だな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ