晩餐会へ
一週間後、晩餐会の日。王国騎士達が馬車で迎えに来た。レンは「自分で行けるから大丈夫なんだけど?」と伝えるも、無表情の騎士は繰り返す。
「繰り返しになりますが、フィエル様が以前、門番を切り捨てたことがあるため、必ずお迎えに上がるルールとなっています」
「一緒にしないで欲しいんだけどなあ」
「申し訳ございません、ルールですので」
「ですよねえ……」
「レン、頑張ってねー! 気に食わないやついたなら殺しても良いからねー!」
ニコニコとした顔で拠点(隠れ家)の窓から手を振りながら物騒な発言をするのはリリィ。騎士達がギョッとしているから辞めてくれ。リリィは血の気は多くないのだが、強い奴が死者になれば手駒が増えるということで、何かと戦闘をけしかけてくることが多い。
あいつの魔法は死人なのか生きているのか、慣れていないと判断できないため、治安維持部隊から要注意人物として警戒されているらしい。そりゃそうだ。ただ、以前、監視役が実際に派遣された時には、初日の夜に部隊に帰ると同時に大暴れして自爆したらしい。どうやら既に死人になっていたのでは?と疑われたが、証拠がないため真相は闇の中、ということになっている。うーん、やっぱり血の気は多いかもしれない。
「お前も一緒かよ! 一人で来いよ!」
「まあ良いじゃない。たまには世間話でもしましょうよ」
馬車の中には、カノンがメイドと二人で既に乗っていた。レンはもう諦めて乗り込む。カノンは常に自分勝手だが、貴族とはいえ面倒な礼儀対応をレンに問わないのは、唯一のいいところだ。他は壊滅的だが。
「で、今回の件どう思う?」
「何が?」
「一週間前にいきなりNo.1、2のリーダーを呼び出すのは異常じゃない?」
「そうなのか?」
「ええ。普通は数ヶ月前から調整するのが礼儀よ。準備もスケジュール調整もあるからね。そこを無視して一週間で必ず参加しろ、はあまりにも珍しいケースだわ」
「へー、セリーナはそんなこと言ってなかったな」
「あの子は調整という概念がないから。まあ、とにかく何かが起きていそう。もしくは起きるのではと宰相あたりが考えているんじゃないかしら」
「まあ、お前がいる限り大丈夫だろ。何が起きても神聖結界で一発だ」
「まあ、そうだけど……それで済むと思っていないから、あなたも呼ばれているんじゃない? メンツだけなら私だけで十分でしょ」
確かに、伯爵家ご令嬢かつ依頼達成率100%のチーム『白金の聖盾』のリーダーがいれば肩書きとしては十分な気がするな。俺も参加するのはオーバースペックだ。
「あれじゃないか、最近反国王派が各地でテロを起こしているとか、ヴェリディア帝土の動きが怪しいとか」
「そんな派閥は存在しないわ。それに第二皇太子はそもそも留学中でしょ。面白くないわよ」
冗談が通じないのがカノンのマイナス点である。どう思うか、と隣のメイドに聞いたところ無視された。が、手が震えているので何も話さないようカノンから厳命されているのだろう……怖い。
3. ライバルの情報と門番の悲劇
「ちなみにルミナリア連邦のお姫様、初めて国外に出るらしいわ。情報があまりにもなくて、何歳かもよくわからないらしいの。Sランクチーム『魔術工房』も出自や見た目は謎が多いので、皆興味津々よ」
「へー」
「全然興味なさそうね」
「お姫様もSランクチームも、面倒に決まっているから関わりたくない、が正しいな。やっぱりフィエル連れてこればよかった。全部切れば万事解決」
「ちなみにお姫様は魔術工房のメンバーらしいわ。きちんと実力で世界中のギルドにSランク認定させた強者よ」
「性格悪そう……」
「言うと思ったわ。とりあえず彼らは、連邦らしく緻密な計算と制御された攻撃が得意だから私たちとは正反対。気をつけてね」
「俺らが気をつける必要があるのか?」
「……そうね、ありがとう」
カノンが少し恥ずかしそうな表情を見せる。よくわからず気になってメイドを見ると、メイドは必死に前を見ていた。なんだこのシチュエーションは。
そうこうしている間に王宮に辿り着く。
「念の為、馬車の中を確認させてください」
門番が近づくと、凄まじい音と共に門番が吹き飛ばされていった。
「汚い手で触らないで。モン、早く進めるように言ってきなさい」
結界で吹き飛ばすなんていう荒技と、躊躇なく王宮の門番を吹き飛ばすカノンは相変わらず頭がおかしい。せめて晩餐会ではまともな人と話せると良いな……
レンは深くため息をついた。




