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とりあえず一度村に戻り、食事をしながら作戦会議をする。

「とりあえず、テオとレンが前、私が後ろでサポートしていく形かな」

「それで行こう。前方にしか敵はいないだろうし、撃ち漏らさないことを重視しよう」

「強敵が出てきたら、光玉を投げて逃亡ね。まあ、これで大丈夫でしょう……だよね?」

「なあ、音はどうするんだ? ここにいてもうるさいってことは、中はとんでもない大きさなんじゃないか?」

「目なら閉じればいいけど、耳はね……耳栓?」

「耳栓ね……使った経験がないんだけど、大丈夫なのかな?」

「そうだな。魔法で音を遮断できれば一番いいと思うが、ないならそれしかないな」

「そんな魔法、あるの?」

「あー……聞いたことはある」

「へえ、初めて聞いた。でも、使い道あんまりなさそうだから、ちょっとかわいそうではあるけど」


自身が使用できる魔法は一つ、多くても二つというのが一般的である。そのため、あまり使い道のない魔法が使える、ということは、有用な魔法が使えないことを意味する。一般的には。

(掃除が面倒だからって、箒が勝手に動く魔法と、ちり取りがゴミ箱まで移動する魔法を使ってるセリーナの話をしたら、羨ましがられそうだよな……)

魔法の使用にほとんど制約がないセリーナのことを思い浮かべながら、レンはとりあえず黙っておくことにした。


ギャーギャーギャー。

少しずつ日が傾き、音がはっきりと聞こえてくる。

「日が暮れてきたな。すごい声だろ?」

苦笑いしながら言う料理屋の店主。

「今じゃ、酒を飲んで歌いながら家まで帰っても、誰も気づかないぞ。まあ、歩いてるうちに酔いも覚めるけどな」

「鳥、という感じでもないですね」

「ああ。生まれてこの方、聞いたことがない声だ。森の鳥とは違うな」


「声以外に、トラブルはない?」

レンが問いかけると、店主は少し考え込む。

「うーん……そうだな。特にないな。最初は畑の野菜や川の魚を心配してたんだが、何もなかった。本当に、ただうるさいだけなんだよ」

「なるほど……牛とか馬は?」

「元々この村にはあんまりいないが、特に何も聞いてないな。ただ、音で参ってるから、夜になると小屋に戻るみたいだな。奴らにとっても、うるさいんだろう。昔はただの雨よけだったが、今じゃ音が入らないように、しっかり閉じ切ってるらしいぞ」

(ただうるさいだけ……数が多くなりすぎた普通の魔物なら、外で何かを食い荒らすはずだが。外に出られないのか?)


食事を終え、出発する。松明の灯りを頼りに進んでいくと、廃坑に近づくにつれて音はどんどん大きくなり、不快感が増していく。

「おい、もう耳栓をしないと死にそうだ! いいか!」

「ええ、そうしましょう!」


テオとソフィアは限界を迎え、宣言と同時に耳栓を装着した。レンはまだ多少の余裕があるため、もう少し様子を確認する。

(近づいて分かったが、やはり色々な個体がいるな。小型の魔物が多数で鳴いているタイプだ)

注意して聞くと、わずかに異なる音が幾重にも重なっているのが分かる。そのことから、レンはそう判断した。となると、パワーで押し切るよりも、波状攻撃を防ぐことが重要になりそうだ。


廃坑が見えてくる頃には、レンでも耳栓なしでは耐えられない音量になっていた。何が起きるか分からないため実行はできないが、そのまま廃坑を爆破してしまいたい衝動に駆られるほどである。

くいくい、とテオが手振りで入るように促す。予定通り、テオとレンが前、ソフィアが後ろという陣形で中へと入っていく。


「きゃあああ!」


洞窟に入った瞬間、大量の黒い何かが天井から降ってきた。耳栓越しでも聞こえてくるソフィアの悲鳴と同時に、反射的に火魔法が放たれる。

ボトボト、と黒い物体が地面に落ちていく。

(これは……コウモリか。魔石が残っている個体もいるな……やはり魔物だ)


レンは落ちた黒焦げの死骸を見る。数十センチほどのサイズで、見た目はコウモリに近い真っ黒な個体だ。大きな牙が目立つ。

コウモリなのか魔物なのか。その違いは「魔石があるかどうか」である。魔力を蓄えるコアである魔石を持つ個体は、見た目が同じでも生命力と攻撃性が段違いだ。

牛のように動物しか存在しない種と、竜のように魔物しか存在しない種もあるが、その違いについては、生物学者の間でもはっきりとは解明されていない。


目を閉じて深呼吸しているソフィアが、やがてOKサインを出す。どうやら、このまま前進するようだ。

(こいつら……賢いな)

進むにつれて、知能を感じる動きが増えていく。最初は上から降ってくるだけだったが、次第に隙をうかがうようになり、テオが攻撃しようとすると逃げ、逆に横から襲いかかるなど、動きに変化が出てきた。

(サイズが少しずつ違うのも気になるな……奥に、もっと大きな個体がいるのかもしれない)

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