チーム集結
翌日の夜。ガドルとリリィの任務完了を労いつつ、恒例の「冒険譚(という名の惨劇報告)」を聞く会が開かれた。
「いやー、今回も疲れたわ……」
「ちょっと数が多すぎたね、相手の……」
二人は心底疲れた様子で酒を煽っている。
「お疲れさまー。強かった?」
こういう時は、フィエルがお気に入りの店を手配する。贅沢な食事を前に、彼女は上機嫌だ。
「うーん、強いというか……」
「ただただ、数が多かった。暗殺者崩れを大量に囲っていたようで、油断も隙もなかったぜ」
「やっぱり悪い貴族ともなると、そういう部隊をしっかり持っているものなんだねえ。でも、よく逃げなかったね。普通、あんたたちの顔を見たら逃げるじゃない?」
「だから私たちが呼ばれたのよ。レン、セリーナやフィエルが出てくれば相手は逃亡一択になるけれど、私たちなら『殺せるかもしれない』という欲が出る。殺して首を隣国へ持っていけば、一攫千金だってね。……あのアスミという女、指揮能力がえげつないわ」
「襲撃のタイミングも大体予測してやがった。賢いというより、底知れなくて怖かったぜ」
「彼女は天才ですから」
セリーナが静かに口を開く。
「彼女が宰相の隣で権力を握っている限り、この国に致命的な問題は起きないでしょう。私が王国に所属し続けている最大のメリットですわ」
「へえ、セリーナがそこまで褒めるなんて珍しいね」
「褒めているわけではありません。わかりやすいと言っているのです。凡人の考えることは予測不能なことがありますが、彼女の思考は合理的で、私には透けて見えますから」
「ああ、なるほどね……」
「で、その貴族は捕まえたの?」
「それが……結局、逃げられちゃったんだよねー。屋敷に踏み込んでも空っぽ。その割には道中の死兵たちが必死すぎたから変だと思ったんだけど、どうやら暗殺者以外は催眠魔法をかけられていたみたい」
「王宮の諜報部隊が見張っていたはずなんだが、そいつらも無力化されていてな。殺されていなかったから、異変に気づくのが遅れたというわけだ」
なかなかのゲリラ戦だ。俺なら一旦引いて、逃亡先を叩き潰す算段を立てるだろう。
「それで、お前らはどうしたんだ?」
「えー? 面倒だから、うちの『子たち』に頑張ってもらったよ。催眠魔法のターゲットが曖昧だったみたいで、みんな私の子たちに向かっていったから楽勝。あとはひたすら数を増やして、すり潰して終わり!」
「その間、俺はリリィをガードしながら暗殺者を片っ端から叩き伏せてた。見たことない武器を使うやつもいて、あれは面白かったな!」
「……街中、全員殺しちゃった? 怒られなかった?」
「そんなことないよー。流石に子供は手を出してないし。あと、私の子に攻撃してこないやつはスルー! 後でわかったんだけど、催眠魔法が解けない術式だったみたいで、どのみち情報収集は無理だったっぽいから。お咎めなし!」
「めっちゃしっかり説教されてたけどな」
「あれくらい、説教に入らないよー。フィエルに手足を切り飛ばされた時とか、セリーナに氷漬けにされた時に比べたら……ねえ?」
「あれでお咎めなし判定とは。流石リリィだ……」
「久しぶりに五人全員で依頼を受けたいなあ。セリーナ、何かないの?」
「あれば受けています。私たち全員を動員するほどの事態が、そう頻繁に起きては困ります」
「いいね、いつもガドルとばっかりだからさー。前みたいに勝手に受けちゃわない? Aランク依頼とか」
「Aランク十組の合同チームから連名で抗議文が届いた時のことかしら? Aランクごときで調子に乗って抗議なんて、今思い出しても滑稽だわ」
「あれはムカついたなあ。お前らは黙ってろっての」
「結局、レンとフィエルがどっかの拠点を消し飛ばして手打ちにしたんだっけか」
「……罰金も払わされましたけどね。面倒なのでしばらくは控えましょう。さて、レン様。お話があるのでは?」
セリーナが俺に目配せをしてくる。
「ああ、そうだな。……俺はしばらく、視野を広げるために旅に出てくる! 月に一度は戻ってくるが、それ以外はいないものと思ってくれ」
「一人で行くの!? 私もついていっていい?」
「一人だ。視野を広げるのが目的だからな。知っている奴と行動しても意味がないだろ。それにフィエル、お前はここでやることがあるはずだ」
「まあね……。仕方ないけど、寂しいなあ」
「レンが外を歩いて、騒ぎにならないか?」
「お前らと違って、俺の見た目はそこまで特徴的じゃないからな。誤魔化しは効くと思っている。そのための手段もアイルーンに用意してもらったしな」
「へえ、楽しそう。どんな旅か、毎月ちゃんと教えてね!」
「ああ、もちろんだ。お前らも何があったか教えてくれよ。トラブルが起きたら……適切に解決しておいてくれ」
「カノン様が突撃してきた時とかね」
「……それは、繋がないで対応してくれ。切実に頼む」




