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ストレス

「思ってたのと違う……ッ!」


レンは、アルカディア王国ギルド長から届いた一週間後の晩餐会への参加依頼書を見て、とうとう感情を爆発させた。


隣国ルミナリア連邦から姫が来訪するため晩餐会が開かれ、それに参加してほしいとのこと。「連邦のSランクチームが護衛としてくることがわかった」という文言からは、王国最強の『宵闇の極光アウロラ』を対抗馬として配置し、国威を示す意図がありありと見える。


「宵闇の極光」が参加すれば見栄として効果的なのは、わかる。痛いほど、わかるのだが……


「俺、この歳で、もう貴族の爺さんみたいな仕事をするのか……」


若干二十歳で王国最強のチームとの称号を得た際には、史上最年少という響きに誇らしさしかなかった。だが、それから半年経った今、「肩書きが強すぎるのは、人生を詰ませる」という事実に気づいてしまったのである。


国王との食事会は国王の話が面白いからまだ良い。しかし、Sランクチームの集まりは謎のマウント合戦。Cランクチームへの訓示は無駄に疲れる。昔のようにギルドに顔を出すと、受付のベテラン職員がすっ飛んできてギルド全体に緊張感が走り、応接間行き。


依頼を受けたくても、「Sランクかつランク一位の皆様が動くと経済バランスが崩れるので……」と断られることが多かった。大半の依頼はチーム全体を動かすと費用がかかりすぎるため、結局は個人単位の事務作業ばかり。思っていた冒険の世界ではなかった!


「こういったところで恩を売っておくと、後々便利ですからね」


ブレインのセリーナは、氷のように冷たい声でレンにリーダーとして出るように促す。だが、出たところでつまらない歓談でニコニコするだけなのは目に見えている。正装も面倒だ。レンは少し抵抗してみる。


「セリーナじゃダメなの? フィエルでもいいと思うんだけど」


「私たちは……以前何があったかお忘れですか?」


「あー……向こうの大臣がフィエルに触ろうとして手が吹き飛び、セリーナが氷漬けにしたんだっけ。さすがに連邦相手にそれやると大事か」


「はい。あれはラ・ヴァレリア侯国だったので回復させるだけで済みましたが、今回は連邦相手。Sランク同士の戦いともなれば、会場どころか王都の一部が吹き飛びかねません。その点、レンならそつなくこなせるという判断です」


「じゃあガドルとリリィは?」


「死霊魔法の使い手と脳筋を呼んで何をさせるのか、と外交問題になりますよ」


「そうだな……あいつらも晩餐会との相性は悪すぎる。大人しく手土産を買うか……」


「はい、『豊穣の角』で相談すれば良いかと。服は見繕うようにセバスチャンに言いつけておきます」


「一人でいいの? ペアとかの方がいいんじゃない?」


「今回はSランクチーム『白金の聖盾』のリーダー、カノン様が参加されるようです」


「さすが伯爵家のご令嬢は真面目だねえ。2位と1位を呼んで連邦に差を見せつけようというわけね」


「困ったらカノン様に振れば良いと思うので、個人的には安心です。ではお願いしますね」


普段の依頼であればセリーナが良しなに判断している(判断理由は誰にもわからないため、気まぐれと思われているらしい)が、今回は赤い手紙、つまり国王からの特命であり、必ず対応しなければならない依頼である。


出席するだけで大金貨三枚と金払いは良いが、レンは金の使い道に困っていた。一度、ガドルと興味本位で夜の賭博場で大金貨一枚分豪遊してみたことはあるが、次の日に店が物理的に消滅した(誰がやったのかは想像に難くない)。それ以来、夜遊びは怖くてしていない。防具や武具も買うものはもうなく、美術品も良さがわからず断念。要するに、金が溜まる一方だったのである。


ぐちぐちいっても仕方ない……これも仕事だと言い聞かせ、レンは重い腰を上げて手土産を買いにチーム拠点から出かけることにした。

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