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銀河の残響  作者: 六然訓
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序章 史家の序文

かつて、銀河をひとつに束ねた血統があった。

その象徴は黄金の獅子であり、宇宙の民はそれを栄光と呼んだ。

だが、栄光は永遠ではない。

三代に満たぬうちに王朝は衰退し、帝位は「禅譲」という美名のもとに奪われた。


簒奪者はその行いを正統と主張し、黒き石の名を王朝に掲げた。

黒曜石王朝――。

硬質にして冷厳、堅牢に見えて、ひとたび亀裂が入れば粉々に砕けるその名は、

奇しくも彼らの盛衰を象徴していた。


初代皇帝の治世において、帝国は再び秩序を取り戻した。

だが、その秩序は血と恐怖の上に築かれたものであり、

臣民に自由を与えることなく、むしろ一層の隷属を強いた。

彼の子孫たちもその遺制を踏襲し、黒曜石の硬直は次第に帝国全体を覆っていった。


歴史が繰り返し示す通り、

強大な中央集権は、やがて地方の離反を招く。

辺境に駐屯する提督は独自の権威を確立し、

交易都市の商人たちは帝国の関税を嘲笑し、

民衆は帝都の名を遠い昔話のように語るようになった。


やがて群雄は割拠し、銀河は再び多極化の時代を迎える。

ある者は皇帝の名を掲げて正統を主張し、

ある者は共和の理念を唱えて自由を求めた。

それらは無数の旗幟となり、銀河を覆った。


だが、歴史は混乱を好まない。

群雄の林立は、やがて二つの大樹に収斂してゆく。


ひとつは、武断と規律をもって辺境をまとめあげた ヴァルキオン統合国。

もうひとつは、交易の利を武器に人心を掌握した メルカディア共和連合。


この二大勢力の対立は、ただの国境紛争ではなかった。

それは思想の衝突であり、文明の行方を決する試練であった。

百年に及ぶ戦争――。

後世の史家はこれを「銀河百年戦争」と呼ぶ。


この長き戦乱の中に、数多の人間がその名を刻んだ。

ある者は雷霆のごとき軍を操り、

ある者は疾風より速き艦隊で敵を翻弄し、

またある者は剣一つで歴史を動かした。


彼らの名は後世に伝説と呼ばれ、

その姿は人々の心にこだまする。


――この物語は、黒曜石王朝の黄昏から始まり、

銀河に響きわたる「残響」として、いまなお生き続けている。

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