「ゆめのなかのあの子がおしえてくれたこと」
❅冬の童話祭2024参加作品です。
こうくんは年が明けたらもうすぐ小学生になる男の子。
でも、こうくんはだいたいの男の子と違うところがありました。
それはこうくんが好きな物や事はみんなだいたいの女の子が好きな物や事なのです。
こうくんはおままごとが大好きですし、好きな色はピンク色でしたし服も本当はヒラヒラした飾りのあるそんな服が着たかったのです。
保育園でのお友達は女の子が多いので、お遊びの時間はほとんど女の子と遊んでいました。
こうくんたちがおままごとで遊んでいた時のことです。
ゆかちゃんがこうくんに言いました。
「こうくん、パパ役ね」
いつもなら気の弱いこうくんは「うんいいよ」と言っていました。
「今日はぼく、ママ役がいい」
思い切って言ったこうくんに一緒におままごとをしていたゆかちゃんもみいちゃんも目を丸くしました。
こうくんは何かおかしかったかな、と慌てて言い直しました。
「じゃあ、お姉ちゃん役がいいな」
今度はゆかちゃんもみいちゃんも困ったように眉を寄せています。
すぐ傍で積み木をしていたゆうくんがボソッと言いました。
「こうくん変」
「え?」
びっくりしてこうくんは声を上げます。
「こうくん。こうくんは男の子でしょ? ママ役やお姉ちゃん役は女の子がやるんだよ?」
「そうだよ、こうくん男の子なのに……」
ゆかちゃんとみいちゃんの言葉にこうくんは悲しくなってきて。
「じゃあ、おままごとなんかもういい! やらない!」
とその場を飛び出してしまいました。
「何して遊ぼうかなー」
ぶらぶらと部屋の中を歩いていたこうくんはあおかちゃんがお人形遊びをしているのを見て、
「あおかちゃん、一緒にあそぼ」
と声をかけてみました。
するとここでも。
「男の子がお人形遊びをするなんて変!」
とあおかちゃんに言われてしまいました。
こうくんはとうとう一人ぼっちでお庭でぶらんこを漕ぐことにしました。
お庭では男の子たちがサッカーをしています。
こうくんは「サッカーしてみようかな……」と思いました。
でも、
「転んでけがしたら嫌だな。それにぼくあまりサッカー好きじゃないし」
とも思っていたので声をかけることが出来ませんでした。
そんなこうくんはお遊びの時間、なぜだか一人きりでいることが多くなりました。
女の子のリーダー的役割であるりかちゃんが、
「こうくんって男の子なのに女のことばっかりいておかしい!」
と言い出したためです。
他の女の子たちはそれで何となく遊びに誘ってくれなくなったのです。
最初、こうくんは男の子たちに混ざって遊ぼうとしました。
「こうはいっつも女と遊んでばっかだから嫌だよーだ!」
「そうだよ、変な奴!」
「あっち行きな!」
男の子たちに揃ってこう言われてしまったこうくん。
もうしょんぼりするしかありません。
こうくんは家でおりがみをして遊んでいました。
妹のななちゃんはこうくんの二つ下の歳です。
「おにーちゃん、はい緑色の折り紙」
「あ、ありがとう」
ピンク色の折り紙で花を折ろうとしていたこうくんは、ななちゃんに先に折り紙を差し出されてしまったので残念に思いながらもお礼を言いました。
そんな二人にお母さんが声を掛けました。
「二人とも、今度のクリスマスプレゼントは何がいい?」
もうすぐクリスマスなんだと思ってこうくんは心がうきうきするのを感じました。
「わたし、魔女っこまりーちゃんの杖がいい!」
ななちゃんは元気よく言います。
お母さんはニコニコして「いいわよ」と頷きます。
そして「こうくんは?」と聞きます。
「ぼく魔女っこにーなちゃんの変身コンパクトがいい!」
「え!」
「え?」
お母さんの驚いた声に、逆にこうくんは声を上げました。
「どうしたのお母さん?」
「だって、こうくんロボットとか恐竜のおもちゃとかが欲しいとばっかり思っていたから……」
「変身コンパクトすごく欲しいんだよ!」
「そういうのは女の子が持つものよ。こうくんは男の子でしょ」
こうくんは何だか胸がもやもやしました。
どうして、みんなこうくんが男の子だからって勝手に色々決めるのでしょうか。
こうくんは悔しくて悔しくてついななちゃんをはたいてしまいました。
大泣きするななちゃんを見ておかあさんがこうくんをすごい声で叱ります。
こうくんは「ごめん」と言って目から大粒の涙を流しました。
胸が苦しくてこうくんは声を上げて泣きました。
でもお母さんはななちゃんが泣くのをなぐさめても、こうくんには「お兄ちゃん謝ってえらかったよ」としか言ってくれませんでした。
どうしてお母さんもこうくんの気持ちをわかってくれないのでしょう。
こうくんはそれから目が真っ赤になるまで泣きました。
夜、真っ赤な目をしたこうくんを見てお父さんが心配そうに聞きました。
「どうしたんだ?」
こうくんは今思っていること感じていること全部をお父さんに話しました。
お父さんはこうくんの話を聞いて「うーん」と唸りました。
しばらくそうしていたお父さんでしたが。
「ちょっと考えさせてくれ。ごめんな」
と言ってこうくんの頭を撫でました。
がっかりしたこうくんはそのまましょぼんとお布団に入りました。
ぽん!
「あれ……」
ぼんやりとこうくんは目を瞬かせました。
「ここ、どこ?」
「ここは『ゆめのなか』の国だよ、こうくん」
突然声がしてこうくんは飛び上がりました。
きょろきょろと辺りを見渡したこうくんはニコニコ笑う女の子が傍にいるのに気付きました。
「きみ、だあれ?」
「ぼく、ロッテだよ」
「え! きみ女の子だよね?」
「そうだけれど」
ロッテは不思議そうに首をかたむけます。
「ロッテは女の子なのに、自分を“ぼく”って呼ぶの?」
こうくんが今度は不思議そうに聞きます。
「こうくんは女の子が自分のこと″ぼく″って呼ぶの変だと思うの?」
ロッテが怒ったように言うのを聞いてこうくんは困りました。
「えっと、えっと」
するとロッテはこうくんを指差します。
「こうくんだって、女の子が好きな物ばかり好きだっていうの変って言われて悔しがっていたじゃん!」
「えっと、そうだけれど」
「自分の好きな物馬鹿にされてこうくんは怒らないの? おかしくないよって言い返さないの?」
「うん。本当はそう言いたいよ! でもみんなが」
「みんなってだあれ?」
「え?」
ロッテの言葉にこうくんはうろたえます。
「だって、保育園のみんなもお母さんもななちゃんも変だって言うんだよ。きっとお父さんだってそう思っているよ……」
「まだわからないじゃん。お父さん本当にそう言ったの?」
「ううん」
こうくんは首を振ります。
「ぼくのお父さんとお母さんはね」
ロッテはこうくんの目を真っすぐに見ます。
「女の子のぼくが、″ぼく″っていうの変じゃないよって言ってくれたよ。女の子だって男の子が好きな物好きって思うのおかしくないよって言ってくれたよ」
思わずこうくんはロッテに言っていました。
「ロッテの好きな物ってなあに?」
「木登り、ヒーローごっこ、青色、カッコイイ物!」
「みんな男の子が好きそうなものだ……」
こうくんは何だか嬉しくなってきました。
そして呟きました。
「そうだよね。誰が決めたんだろう。男の子が好きな物、女の子が好きな物。逆でもおかしくないんだって」
「そうだよ、そうだよ! こうくんの言う通り!」
「ありがとう、ロッテ。ぼく、自信を持って言えるよ好きな物のこと!」
「こうくんさすが!」
二人は笑い合いました。
それから二人はいっぱいお互いの好きな物やことを話をして遊びました。
「あれ」
こうくんの目の前がもやっとしてきました。
「お別れだね」
寂しそうにロッテが笑うと、
「うん」
とこうくんも泣きそうになります。
「「また会おうね」」
二人が同時に言うと…………。
「おはよう」
次の朝。
こうくんは元気に起きれました。
元気に朝のあいさつを家族にしました。
「あのな、昨日考えた事だけれど」
朝ごはんの時にお父さんが話し始めました。
「こうくんの好きな物は好きな物でいいんだってお父さん思うんだ。お母さんにもちゃんと話したよ」
お父さんの言葉にお母さんも言います。
「こうくんの好きな物を否定してごめんね。クリスマスプレゼントちゃんと買うね」
「ありがとうお父さん、お母さん!」
こうくんは二人に抱き付いてお礼を言いました。
「ななも、ごめんね」
「ななちゃんもありがとう」
妹をぎゅう~っとしてこうくんは笑顔で言いました。
その日、保育園の先生がみんなを集めてお話してくれました。
だいたいがロッテの言っていた事でしたが、先生は最後にこう言いました。
「みんな自由なのよ。好きなことや物は誰も決めてはいない。自由なんだよ」
すこし難しいお話でしたが、ゆかちゃんもみいちゃんもあおかちゃんも男の子たちも頷いていたのでこうくんは何だかひどく安心しました。
この時からこうくんをからかう子はいなくなりました。
クリスマスプレゼントもこうくんが欲しかった変身コンパクトを買ってもらえました。
そうしてこうくんはちゃんと保育園を卒園しました。
こうくんの卒園アルバムには将来の夢が書かれています。
『じゆうなせかいをつくること!』
そして。
『ロッテに会いに行くこと』
~おわり~
少し難しいテーマをお話としました。
みなさんのご意見ご感想をお待ちしております。
このお話を書きあげるのに、数日をかけました。
どうかみなさんの心にわたしの思いが届きますように……。
お読みくださり、本当にありがとうございました。