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作戦会議②

「ちょっと待て。昨日までは七色彩明虹の英雄(エロイナアルコイリス)を最優先で処理するという話だっただろう? 言っていることがこれまでと正反対だ」


 日中の訓練の後は、虚空交鋒(アロンギーク)についての会議を一時間ほど行っており、これまでの会議では、まずヨノスケをどう対処するかが話し合われてきた。

 理由は二つ。

 ヨノスケが新入生18人の中で最強であるということ。

 そしてシナークがヨノスケに対して敵愾心を持っており、もし単独でぶつかった場合に戦ってしまう可能性が高いということだ。

 議論の結果、ヨノスケを囲むように位置取りして多角的に遠距離から狙撃するという方法で進める形になっていたのだが、虚空交鋒(アロンギーク)前日になってアグニミリアは真逆の方針を打ち立てた。


「ウジムシの意見は聞いていない。これは決定事項だ」

「……お前には感謝している。体力的にも精神的にも充実した日々を過ごせたといっていいだろう。だが俺は奴を足止めするという役割で訓練をしていたはずだ。それをここにきて反故にょっと待て。昨日までは七色彩明虹の英雄(エロイナアルコイリス)を最優先で処理するという話だっただろう? 言っていることがこれまでと正反対だ」


 日中の訓練の後は、虚空交鋒(アロンギーク)についての会議を一時間ほど行っており、これまでの会議では、まずヨノスケをどう対処するかが話し合われてきた。

 理由は二つ。

 ヨノスケが新入生18人の中で最強であるということ。

 そしてシナークがヨノスケに対して敵愾心を持っており、もし単独でぶつかった場合に負けてしまう可能性が高いということだ。

 議論の結果、ヨノスケを囲むように位置取りして多角的に遠距離から狙撃するという方法で進める形になっていたのだが、虚空交鋒(アロンギーク)前日になってアグニミリアは真逆の方針を打ち立てた。


「ウジムシの意見は聞いていない。これは決定事項だ」

「……お前には感謝している。体力的にも精神的にも充実した日々を過ごせたといっていいだろう」


 ハクバにとってこの一週間は、今までの自身の価値観を変えてしまうほどの出来事であった。

 サイやバンビはさておき、ウーテ王国の有力王族にして、王国騎士団分団長を姉に持ち高い而力(リューン)を持つ存在として、基本的には羨望の対象として見られていた。

 だがここは一人の人間(ウジムシと呼ばれてはいるが)として対等に訓練を行うことができ、純粋に自身と向き合うことができた。

 初めのころは付いていくだけで精いっぱいではあったが、訓練最終日にはこの中で一番の成績で終えることができた。

 これは今までの自分の鍛え方が間違っていなかったという証拠でもあり、それが確固たる自信となり精神的にも安定した。

 だからこそ、納得できないことはやりたくないという気持ちが強まっている。


「元々俺は奴を足止めするという役割で訓練をしていたはずだ。それをここにきて反故にされたんだから説明は必要だ」

「……私の命令は絶対だと最初に伝えたはずだが? 反抗するなら虚空交鋒(アロンギーク)が始まったらすぐに貴様を殺してもいいんだぞ」

「……だとしても納得できないことはしない」


 アグニミリアとハクバが睨み合う。

 どちらもいつ攻撃されても動けるように、決して相手から視線を外さない。

 

「……頼む」


 ハクバが小さくもはっきりとした言葉を紡いだ。

 ここでアグニミリアは、目を閉じ、そして口を開いた。


「先ほど持込みの道具、武具の事前申請のため尊師ニニエロに会いにいった。その際に銃弾については一つ一つを道具として扱うと説明を受けた」

「……それは俺たちも想定していたことだろう。別に不思議な話じゃない」

「そうだ。しかしこちらから、銃弾の扱いについて説明する前に言われたのだ。これがどういうことかわかるか?」

「……考えられる可能性は二つ。相手チームが銃を持ち込むか、こっちが銃を使うことを知っていて、先にニニエロに伝えていた……おそらく後者だな」

「そうだ。奴らは我々が銃を持ち込む可能性を知っていた。それを知る人物は相手チームではたった一人……ルルル=バーフアリィのみ」


 アグニミリアは静かにその名を呟くと、眉間にしわを寄せた。


「あいつは……我々を裏切ったのだッ!」


 怒りなのか、それとも悲しみなのか……。

 アグニミリア自身も分かっていない。

 ただとにかくあまりの苛立ちに握る拳から血がたれ始めた。

 だがそんな状況の中、空気の読めない人間が一人。


「アグニ様、それは裏切りとかじゃなくて単純に聞かれたから答えちゃったんじゃないんですかね。ほらルルルちゃんって天然っていうか素直っていうか、そういう感じの子じゃないですか。だからアグニ様も裏切ったとかそんな風に考えなくて大丈夫っすよーえへへへ」


 コルトはケラケラと笑いながらアグニミリアに声をかける。

 きっと本人は良かれと思って言っているのだろうが、ハクバや他のハァト帝国の学生は背中にびっちちりと冷や汗をかいた。


「………………ゴミカスクソヘドロ」

「え、なんですかアグニさ――――」


 コルトの顔面に見えないなにかが当たり、その衝撃でコルトは部屋の隅まで吹き飛ばされそのまま床に倒れこんだ。

 ピクリとも動かないが、多分大丈夫だろう。

 というか助けにでもいったら同じ目に遭うだろうことが予想できるので、誰も確認すらしない。

 そして怯える皆がハクバに視線を向ける。

 きっと「お前がなんとかしろよ」という視線だ。


「えー、裏切る裏切らないはともかくとして、これで納得した。相手チームはこちら側が銃で狙ってくる前提で作戦を立てているから、最も警戒しているであろう七色彩明虹の英雄(エロイナアルコイリス)をあえて放置して、他に戦力を集中させるという作戦だな。いい作戦だ」

「…………」


 ハクバが話をそらそうとするもアグニミリアの表情から怒気は抜けていない。

 何かほかに、気をそらせる情報がいる。

 いや、怒りの矛先を変えるしかない。


(……悪いなサイ。だがこの作戦立てたのはきっとお前だろうから仕方ないよな)


 ハクバは心の中でサイに謝る。


「そのルルルという学生から情報を引き出した人物に心当たりがある」


 アグニミリアがピクっと眉を動かす。


「……そいつは誰だ?」

「サイ=ダマスカス。あっちの敵将だ」

「……そうか」

「あぁ、そして俺もこれまで言わないでおこうと思っていたが、あっちが情報を引き出して準備するというなら、ここで俺も相手の情報を言わないのはフェアじゃない。だからサイについてとっておきの情報を教える」


 ハクバは一息ついて口を開いた。


「サイ=ダマスカス。あいつは他人の而力(リューン)を自分のものとして扱うことができる」

 

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