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会議①

 ウーテ王国領にある王国騎士団兵舎の片隅に、ひっそりと建てられたと小さな小屋。

 外壁はボロボロで事情を知らない者は廃屋と捉えてしまうのも無理はないくらいの建物だが、そこで年に数回、分団長以上の役職に就いている者が集まっている。

 息を切らしながら小屋の前にやってきた彼女は、その小屋のドアノブを握った。

 すると事前に刻み込まれていた而術(リュニ)が発動し、気が付くと大きな円卓が置いてある仄暗い部屋まで転移された。


「すいません~遅くなりましたぁ」


 気の抜けた声をあげながら、彼女は招集時刻から五分遅れでやってきた。

 彼女以外のメンバーは既に揃っており、一気に視線が突き刺さるのを感じた。


「時間厳守と言っていたはずだが――第参分団長ペロリ=コリンリリス」


 その中で特に一番鋭利な視線を向けてきた男がペロリに向かって告げると、「いやぁ久しぶりすぎて、迷子になりましたぁ」と特に悪びれる様子もなく空いている席についた。


「これでひとまず全員揃ったな。時間も押しているので早速始める……ただいまより、王国騎士団分団長会議を始める」


 ペロリを制した男がそう宣言すると、電灯もない部屋が一気に明るくなり、円卓を囲んでいる者たちの姿がはっきりと視界に入るようになった。

 円卓に座っているのは八人。

 開会を宣言した男から左に第壱分団長から第菜国領にある王国騎士団兵舎の片隅に、ひっそりと建てられたと小さな小屋。

 外壁はボロボロで事情を知らない者は廃屋と捉えてしまうのも無理はないくらいの建物だが、そこで年に数回、分団長以上の役職に就いている者が集まっている。

 息を切らしながら小屋の前にやってきた彼女は、その小屋のドアノブを握った。

 すると事前に刻み込まれていた而術(リュニ)が発動し、気が付くと大きな円卓が置いてある仄暗い部屋まで転移された。


「すいません~遅くなりましたぁ」


 気の抜けた声をあげながら、彼女は招集時刻から五分遅れでやってきた。

 彼女以外のメンバーは既に揃っており、一気に視線が突き刺さるのを感じた。


「時間厳守と言っていたはずだが――第参分団長ペロリ=コリンリリス」


 その中で特に一番鋭利な視線を向けてきた男がペロリに向かって告げると、「いやぁ久しぶりすぎて、迷子になりましたぁ」と特に悪びれる様子もなく空いている席についた。


「第捌分団長は本日欠席のため、これでひとまず全員揃ったな。時間も押しているので早速始める……ただいまより、王国騎士団分団長会議を始める」


 ペロリを制した男がそう宣言すると、電灯もない部屋が一気に明るくなり、円卓を囲んでいる者たちの姿がはっきりと視界に入るようになった。

 円卓に座っているのは八人。

 開会を宣言した男から左に第壱分団長から第漆(だいなな)分団長が順番に腰を掛ける。

 円卓から外れたところに丸椅子が並べてあり、そこには王国騎士団長であるゴウマ、第伍分団第副分団長のカガチ、そして前第捌分団長、現在はバンビ直属の護衛役であるニニエロが並んで座っていた。


「本日の議題は先日のウーテ学院初等部の卒業検定での而生獣(リュニオ)等について。議事の進行は規約に基づき議長である騎士団長が行うところだが――」

「いつものように副団長のムウランに一任するわ。俺は適当に口挟む方がむいてるんでな」

「……議長の選任を受けて、王国騎士団副団長のムウラン=ゴウンが代理で務めさせていただく。異議があれば、今のうちに挙手してくれ」


 騎士団長は騎士団全体の代表であり、直属の部隊を持っていないが、代わりに実務の担い手として副団長及び副団長直属の騎士を任命することができる。

 ゴウマが騎士団長になってから、ずっと副団長として彼をサポートしているのがムウラン。

 今となっては実質的に団長の役割を果たしているのがムウランであり、ゴウマはただ有事の際にすぐに現場に行けるようなフットワークの軽い遊撃専門の騎士のような立ち位置にいる。


「議長選出に異議はありませんが、議事を始める前に一つだけ確認したいことがあります」


 手を上げたのは第壱分団長であるハナエ。


「……発言を許可する」

「……なぜ分団長でもなく、当事者でもない男がこの場にいるのか……それを説明していただきたいと思います」


 そう告げるとハナエはニニエロを睨みつける。

 ニニエロはそれを想定していたのか、特に大きなリアクションもせずムウランの方を見た。


「詳細は後で説明するが簡潔に答えよう。ニニエロは今回の件について知る者、つまり我々に敵意を向けた者のうち一人と相対し……これを撃退した。今現在、ことの真実に一番近い者が彼だったので呼んだまでだ…………これ以上の回答は必要か」

「いえ……わかりました」


 ハナエはすっと異議を引っ込めた。

 

「……では、まず詳細を知らぬ団長もいることなので、これまでの経緯を説明してもらおう……カガチ」

「はっ」


 カガチは一歩前に出て、手に持っていた斐綾鉱(マダイト)を前に突き出し而力(リューン)を込める。

 すると円卓の中心に液晶画面が現れる。

 そこにはハナナサケの森の地図らしき映像が映っていた。


「まず、経緯をご存じない分団長もいらっしゃいますので、最初から説明させていただきます。王国歴三八五年二月二五日。王立ウーテ学院初等部の卒業検定の際、何者かの手によって、学童及び試験官の転移先が強制的に変更されました。変更されたのは二箇所、ゴウマ騎士団長及びウーテ王国第五王女であらせられるバンビ様の試験会場。そして私を含めた第伍分団が担当する試験会場。ここにはサイ=ダマスカス及びハクバ=ミスミの学院の成績上位二名も転移されることになりました。液晶をご覧ください」


 カガチは液晶に映し出された地図を指さした。

 地図は黄緑と緑、そして深緑でエリアを分けられていて、緑のエリアには赤い点が二箇所、青い点が二箇所マークされている。


「これは後日第伍、第陸分団数名により調査団を編成し、新たに興したハナナサケの森の地図になります。黄緑のエリアは卒業検定を前に調査を終えているエリア。緑は今回調査をしたエリア、深緑は現時点で未開のエリアになります」

「じゃあその赤い点の所が、ゴウマやらダマスカスの坊ちゃんが飛ばされた場所……で、青い点はなんだ? どちらも結構奥までいってるが……」


 口を開いたのは第(なな)分団長のスタデリオン=ガードナー。

 騎士団長であるゴウマと同期の王国騎士団最高齢の騎士である。

 齢五十も後半であるにも関わらず、全身の筋肉は隆々とし、単純な殴り合いであればゴウマをも凌ぐ。 


「ご指摘のとおり赤い点は我々が転移された地点です。そして青い点は、今回新たに確認された二体の而生獣(リュニオ)……『穢泥(ダラン)』と『巣喰(ザミィ)』の発生地点です」

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