合流
ゴウマとバンビへの合流を急ぐサイ、ハクバ、カガチの耳にも空を裂く雷鳴は届いた。
「なんだ今のすごい音は……」
「雷みたいな音がしましたね。でも雨どころか雲すらないのに何故……」
「あ~……きっとバンビの仕業ですね。相変わらずやることが派手だな」
唯一その轟音の正体を知っているサイは、へらへらと笑いながら答えた。
「あれはバンビの連鳴槍ですよ」
「連鳴槍? だがあんな大きな音だすのか」
「規模が違うので、家の柱みたいな雷が……一万本」
「いちまっ――んなバカな」
「いや、バンビならやれるんですよね。でも大丈夫かな、コントロールが全然できないからゴウマも巻き添えになってるかも……はははは」
サイの空笑いに何も言い出せないハクバとカガチ。
サイとしてはゴウマなら大丈夫という確信があったが、残る二人は、一万本の連鳴槍という規格外の而術に、王国最強である王の剣でも対応できないかもしれないという不安があるようだ。
若干顔が引きずっている。
「……場所も大体特定できたことだし、もう少しペースを上げよう」
「ですね、少なくともあんな而術を使わなければならないほどの敵がいたのだと推察できます」
ハクバはそうお言うが、多分何も考えず思い切りやっただけだろうなぁ、とサイは思っていた。
しかしあえてそれを口にすることはなく、カガチとハクバの後に続いた。
それから三○分ほど森の中を進むと、木や藪があまり生えていない広がりに辿り着いた。
そこにはゴウマ、そしてバンビの姿がみえ、なにやら言い争っている。
「ふざけんなよコルァ! 完全に何本か当たってたんだけど、俺じゃなきゃ死んでたぞ!」
「死ななかったんだからいいでしょ! それに泥人形だって一発で倒せたんだし」
「やりすぎなんだよ。本来なら近くにいた術者をとっ捕まえようと思ってたのに、その対応で完全に逃げられたじゃねーか」
「そんなの知らないわよ! 連鳴槍使っていいって言ったのはゴウマだからね。そこんとこ忘れないでよ!」
「え~とお二人さん……盛り上がってる所悪いけどそこらで抑えてくれませんか?」
今にも殴り合いそうな二人を引き離しながら、サイは二人に割って入る。
「サイ! なんでここに?」
「おぉ無事だったかサイ、あっちにも異様な而力を感じたから心配したぞ」
「まぁなんとか。そっちもいろいろあったみたいだけど合流できてよかった。ひとまずカガチ副分団長からご報告を」
ゴウマは視線をサイから動かすとカガチとハクバが視界に移る。
「えっと……第伍分団の奴と、ハナエの弟か……」
「ご無事で何よりですゴウマ騎士団長。そしてバンビ様も」
ハクバは恭しく頭を下げると、バンビもハクバの存在に気付いたようで「お、ハクバじゃん」と手を振った。
(あんな規格外な而術を使われたのに、ピンピンしている。なんというお方だ)
ハクバの中でのバンビの評価が本人の知らぬところで上がっているのだが、バンビは一切気にせずサイに話しかけている。
「ふっふっふっサイ君……ついに私はコントロールなど必要としない最強の而術を作り上げてしまったのだよ」
「え、何その口調。めっちゃキモい」
「おいサイ! バンビ様に向かってキモいとはなんだ死んで詫びろ」
「嘘でしょ……一緒に死線を乗り越えて仲良くなったと思ったのに死んで詫びろとかひどくない」
「それとこれとは話は別だ! 王族に対する不敬は重罪だぞ」
「そうだそうだ!重罪だー」
「え~」
三人が緊張感なく雑談をしている最中、カガチはゴウマに近づき、口を開く。
「いろいろとご報告したい旨はありますが、まずはハナナサケの森からの早急な脱出を進言いたします。私は先ほどまで而力を操る何かに体を乗っ取られておりまして、現時点でその支配が完全に抜けたとは言えません。また私、サイとハクバの三名はほぼ而力を使い切っております」
「……わかった。いろいろ確かめたいことはあるが、ガキ共の命が最優先だ。まずはこの森を抜けるぞ。帰還後即座に派遣隊を編成し、再調査を行う……もちろんお前も強制参加だ」
「かしこまりました!」
「……よし、では行動開始だ」」
ゴウマは「試験はこれで終わりだ。さっさとここから出るぞ。」と声をかけた。
未確認の而生獣、想定外の転移場所、その他未だ多くの謎が分からないままではあるが、サイ達は無事にハナナサケの森を抜けることができた。




