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ハクバ

「で、そのまま負けちゃったてワケ? 二人がかりとはいえあんな子どもに?」


 サイとバンビは国内でも最高峰の騎士養成機関である王立ウーテ学院初等部の校内を歩いていた。

 学童のほとんどが王族出身なのだが、平民でも而力(リューン)の高い者や武芸の才がある者等も入学を許されている……のだが、平民出身は六学年併せて三名。

 サイ、そしてセトとソニアのダマスカス家の嫡子のみである。

 特にサイは而力(リューン)も少ないため、親のコネで入学したと周りからの奇異の目で見られていたが、剣戟を含めた実践演習においては他の追随を許さないほどの好成績を残し、かつ王女バンビから厚い信頼を寄せられている姿から自然と周囲と馴染んでいった。

 誘拐から七年。サイは十二歳を迎え、バンビとともに本日の卒業検定をもって初等教育を終えようとしていた。


「いやいやあの二人は天才だよ。而力(リューン)量は国内ではトップクラスだし、なにより而術(リュニ)のコントロールがすごい。はっきり言ってソニアの連鳴槍(ナルサナルサ)はバンビよりはるかに精度が上だよ」

「私はしょうがないのよ。而力(リュニ)が異常に高すぎてまだ完全に体に馴染んでないから而術(リュニ)が不安定になるってニニエロは言ってたわ。というかそもそも而術(リュニ)をコントロールする必要もないしね。鳴槍(ナルサ)さえ使えりゃ問題ない。どんな相手でも一発当たれば終わりだから」

「えっとその一発を当てるために、僕は適性の低い黄の而術(リュニ)を覚えさせられたのですが……」

「はぁ……なんか文句あるわけ? 次期国王最有力候補のバンビ様が直々に指導してあげたというのにまぢ万死なんだけど!」

「まだその口癖治ってないの? 一応言っておくけど、王宮の使用人や騎士それにクラスメイトにその親、というか国民のみんなが影で『万死ちゃん』って言ってるよ」

「はぁぁぁぁぁなにそれ完全に不敬罪なんだけど、国民最低ー!」

「あはははは」


 サイとの出会いによって、バンビの人生も大きく変わった。

 以前は自分以外を人とも思わないような傍若無人なプリンセスであったが、転生前の自身を知る存在が近くにいることにより、仕様人も含め周囲への対応が随分とまるくなった。

 もちろん完全に毒気が抜けたわけではないが、その毒の部分は隷属契約をしたニニエロが一手に引き受けているので、ニニエロ以外への接し方が随分と優しくなった。

 気が付けばいずれ国を背負う立場としての品位のようなものが醸造されつつあった。

 昔は悪名だった万死ちゃんという呼び方も、今では親しみを込めて呼ばれているようになっているのも、七年前では考えられなかったであろう。

 もちろんそんなことを本人の目の前で言えるのはサイともう一人だけだが。

 くだらない話をしているうちに教室の前に着いた二人。

 一応王族と平民という立場ではあるので、サイは一歩下がり、バンビに続いて教室の中に入った。

 中に入るとクラスメイトは既に全員席に座っており、普段よりも空気が張りつめている。

 それもそのはずで、この卒業検定の成績如何では、今後の人生設計が大きく変わるからだ。

 好成績をとれば、未来の王国騎士団の幹部としての英才教育を受けることとなり、生涯収入の桁が一つも二つも変わってくる。

 また、今卒業検定での成績上位者二名は、ウーテ王国を含むシンタイ大陸にある六つの国から選出された学童のみが通うことを許される教育機関『ナハト賢王修学院』への推薦入学枠を得ることができる。

 推薦枠の一人はバンビが内定している……との噂だ。

 王女であるというコネというよりも、未だに天井すらみえてこない而力(リューン)の持ち主であることが大きな理由だ。

 そしてもう一枠を、現状二人が争っている。

 一人はサイ、そしてもう一人は――


「サイ=ダマスカス! もうお前以外は全員登校しているぞ!」


 銀色の髪を持つ端正な顔立ちの少年が、サイに向かって声を荒げる。

 サイは教室にある時計を見ると、登校時間までは五分ほど余裕がある。


「いやいやまだ遅刻じゃないから」

「遅刻云々の話ではなく、騎士としての心構えの問題だ! いずれ国の秩序を守り、模範となるべき騎士となるつもりならば、最低でも一〇分前、約束の時間には最高のパフォーマンスができるように心身ともに準備しなければならないのも分からないのかっ!」

「まぁその言い分も一理あるけどさ、それならバンビだって一緒じゃん」

「この痴れ者がっ! バンビ様はいずれこの国を背負うお方。そんなバンビ様を我々と同じ枠で考えるのはあまりにおこがましい。そしてなにより呼び捨てなどもっての外だ!」

「え~……」


 サイはバンビの顔を見ると、バンビはもうこのやりとりに慣れているののか無反応で自身の席に駆けだした。


「はいはい分かりました。次からは一〇分前に来ます」

「はいは一回だサイ=ダマスカス!」


 心の中で「お母さんかよ」と小さく突っ込みを入れてから、サイはそそくさと席に着いた。


「ふん……」


 そんなサイの様子をみながら、銀髪の少年はため息をついた。

 彼の名をハクバ=ミスミ。

 現王国騎士団第壱分団長を姉に持つ、才気溢れる少年だった。

 サイとハクバ。

 今ウーテ学院内ではどちらがナハト賢王修学院の推薦枠を得ることができるかの話題で持ちきりだった。

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