表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

修羅場・胸糞・人生シリーズ

虹色

作者: 家紋 武範

突然の雨。

ルート営業の最中、後輩の菊田くんと取引先のビルの軒を借りている。と言ってももう取引先ではなくなった。断られた。他にいいところを見つけたと。

最後はどこまでもあっさりなんだ。これを会社に帰って課長に報告しないと。




課長──。


「悪いが今日で終わりにしたい」

「え?」


「キミも妻帯者とこういう関係になったんだ。覚悟はしてたろう?」


してたんだろうか?

いつまでも続くと思ってた。

課長だって、奥さんと別れるって言ってたのに。

それにベッドの上で終わった後に言わなきゃいいのにね。

最後まで卑怯なんだ。


「はい……」

「これは少ないが、とっておいてくれ」


「はい──」


お金なんて──。

馬鹿にしてるよね。

20万円か。まあ課長にできる精一杯かもしれない。

6年か。6年の価値なのか。


課長は肉体的な満足を得たかっただけだ。

私はそれによる精神的な満足を得たかっただけ。

自分にウソをついてた。

これは愛なんだ、恋なんだって、思い込んでた。

ホントは分かってた。

利用されてるだけなんだって。

もうやめよう。

もうやめよう。

そしたら、向こうからやめるっていわれた。

ホントは──。

私がやめるって言ったら、すがって欲しかったんだ。

そしたら、課長の心に残れるって思ってた。


だけど──。

結局、私の心に課長が残っちゃった。

タイミング。

遅れちゃった。どこまでもバカなんだなぁ。




あーあ、冷たい。

雨ってこんなに、冷たいんだ。

肌に染み込んでくるよ。

雨なんて嫌い。

メソメソしてるみたいで。


「先輩?」

「なに?」


「運が悪かったっスね」

「まぁね」


どこまでも運が悪い。

重なる。こういうことって。

課長のことで泣きたくたって。

取引先のことで泣きたくたって。

雨にまで泣かれて。

もう、最悪。


「でも、まぁオレは運が良かったかなぁ──」

「──え?」


菊田くんの顔に赤みが差す。

それと同時に雲が晴れる。

隙間から暑い太陽の光。

みるみる雲が消えて、青い大空に変わっていった。


「なんだ。通り雨だったんスかね?」

「──かもね」




あはっ。

空はこんなにも。

簡単に笑えるんだ。

凄いね。

おすそ分けしてくれるんだ。

元気出せって。


あーあ。

なんか。

なんかな~!

そっか。そうなんだ。




「よし。菊田くん。飲みに行くか」

「あ、それなら任せて下さい。凄い旨い焼き鳥屋見つけたっす」


「ほーう。よくぞ私の好みを憶えてたな」

「知ってるっすよ。誰よりも……」


「よーし。朝まで飲むぞ!」

「いっすね。お供しまーす!」


うっし!

頑張るぞ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] がんばれ、菊田くーん!!( ;´Д`) 20万手切金出す課長には無いピュアっぽいアプローチで行くんだー!!落とせー!(絶叫)
[一言] 例え雨でも、その向こうには 青空が広がってるってもんさ( ´∀` ) いい話だぁ~~( ´∀` )
[良い点] 文字数1000文字で、綺麗にお話が収まっていて素敵でした。 ヒロインの感情とお天気の描写が巧みに絡まっており、重く悲しい雰囲気から明るく楽しい雰囲気に変わっていくのがなんとも良い感じです。…
2021/05/21 10:39 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ