dinner
自分が気分的に書いたものを不定期であげていきます。
感情や、心理描写を大事にして書いてます。
小さな窓から、一筋の光が差し込む。
透き通る様な白さのシーツは、その光を反射し、星のような輝きを放つ。
その輝きは、無数に散らばった紙片達を包み込んだ。
艶やかだった。
輝きは、偉人達が流した涙のようにも見えた。
いや、泣いていたのは自分だったのかもしれない。
使い古されたゴムと紙片達は、私を包んでも温めてはくれなかった。
月明かりに温もりを感じた、雨の滴る夜だった。
「あ、駄目... そこは...」
私を抱く男に対して、そんな恥じらいを孕んだセリフを言ってみる。
それに興奮した相手は、貪る様に、私の事を食べ尽くしていく。
足先からゆっくりと這う舌先は、徐々に私の恥部に近づいて、そこでしばらく舌鼓を打ち、一気に頭のてっぺんまで飲み込むのだ。逃れられない不快感に、思わず身を捩らせ顔を両手で隠すと、何を勘違いしたのか、男は更に激しく食事を再開した。
きっと、両手の下には、熟成された赤ワインの様に、赤く熟れた表情が隠されていると思ったに違いない。
冷めた表情を隠したまま、男の欲望に合わせて、私は喘ぎ、肌を擦り合わせた。
まるで上映された映画の1幕を見ているように、そこに私の意思は介在しない。
慣れたことだ。何もない私には、他人の色で自分を汚すことでしか、生きている実感を得られない。汚れる事で生じる痛みによって、私は生きていると思えるのだ。
知らない男共と、体を重ねる生活をして一体どれだけたったのだろうか。
承認欲求を満たすため?
自己肯定感を高めるため?
愛によって生じた孤独を埋めるため?
最早どれが理由となっているのかも分からない。
何のために初め、何のために今尚続けているのか、理由などはとうの昔に失ってしまった。
対価として支払われる紙片も、今では生活を繋ぐ為の意味合いしか持たない、ただの紙屑同然だ。最初は、自分に対して支払われる紙片が目に見える価値に思えて、他人にこのぐらい評価して貰えてる、と金額によって一喜一憂していたのに...
慣れというのは怖いものである。痛みも、苦しみも、意味合いや価値ですら、慣れによって麻痺し、等しく無意味になった。
それでも、私は辞める事が出来ない。
唯一続けてきた事、というのもあるけど、まだ僅かに残る苦痛に、生きている実感を求めて、縋っているのだ。
私がしていることなど、褒められたものではない。
他人に自慢できるものでもない。
誰かに話すつもりもなければ、理解を得るつもりもない。
けど、時々、感情の奔流が、理性を突き破り、何もかもぶちまけたくなるのだ。
私を痛みつけて、
愛して、
慰めて、
辱めて、
みて、
他人に出来ない事をしてる私は特別なの!
色んな人が抱いてくれる私は可愛い子なの!
進んで苦しんでる私は可哀想な子なの!
セックスの為に努力してる私は偉い子なの!
だからもっと
褒めてよ!
理解してよ!
認めてよ!
可愛がってよ!
離さないで、1人にしないで、寂しいのは嫌、
苦しいのは嫌、汚いのは嫌、傷つくのは嫌...
みっともない。
柄にもなく、全て吐き出してしまいそうだった。
誰かを傷つけるだけの感情など、存在すら消してしまわなければならない。
いっそ、体を重ねたら、そのまま溶けてしまえば良いのに。
それで、心まで溶けて混ぜあったら、一体どうなるのだろう。
意味の無い仮定をいつまで続ければ良いのだろう。
いつか、ここに記した思いを誰かに話す時は来るのだろうか。
そんなことを考えながら、私は手記をそっと机の引き出しにしまった。
「お待たせ」
そう言って、微笑みを取り繕いながら、
今日も私は、見知らぬ誰かをdinnerに招待する。
メインディッシュである
僕を添えて...