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平原の場合6

「金城さん、どうしてお客様が迷惑に感じる、と思うのかな?」


「それは、、、やっぱり私はまだ業界の知識もないですし、質問されても答えられないことばかりなので、お客様からすると不信感しか感じないかな、と思って、、、」


「なるほど、知識がないとお客様に信頼されない、ってことね。じゃ質問を変えてみるね。金城さんは住宅メーカーの時に、家の知識があるからたくさん家を買ってもらえた、と思っている??」


 そう言われて金城は過去を思い返した。そしてまた自分の思い込みが間違っていたことに気づけた。


「いえ、全然違います、、、知識がなくても家は売れました。むしろ知識をひけらかすよりも大切なことがありました。」


「そうだね。それは何だった?」


「お客様の話を聴くこと、です。」


「その通り!」


 石原は嬉しそうに説明を続けた。


「家も、人財も、契約時には形のない無形物だね。無形物の提案の鉄則は、まず聴くことから、だったよね。」


「はい、その通りです。わからないことを聞かれても、真摯にわからないことを伝えて、すぐに調べて回答をすれば良い、ですね。」


「さすが金城さん!やっぱり金城さんみたいに無形物の営業で成功体験がある人は理解が早いですよね!!」


 また桜井が会話に乱入し、石原を真似してか金城を思いっきり褒めていた。金城は石原の褒め言葉には感じない不快感を持ったので、褒め言葉を受け流しながら続けた。


「でもわかっていても不安なものですね。不安がなくなるように、当日までにしっかり準備をしますね!」


「うん、そうだね。準備は最大限サポートするから必要なことは聞いてね。それとね、うちのビジネスモデルの場合に限ってだけど、もう1つ安心材料もあるんだよね。」


「安心材料、ですか?」


「そう、思い出してほしいのはプランツェさんの社風だね。」


「プランツェの社風、、、」


「うん、人財に対して思いやりがある社風、だよね。だから僕らへの姿勢もきっと思いやりがあるものなんだ。だからこちらの一生懸命ささえ伝われば、きっと全てを受け止めてくださるよ。」


「確かに、そうですよね!」


「それにね、もしこちらが一生懸命に向き合っていても、冷たくされるような社風だとしたら、平原さんが望む社風の会社じゃない、うちのお客様にはならない、ってことだから、冷たくされても何も気にすることはないからね。」


 金城はそれまでの不安感が嘘のように軽くなるのを感じた。新卒入社の会社で出会った上司が石原のような人であれば、それが当たり前になってしまい、これほど石原の魅力を感じることもなかったのかもしれない、と思うと前職で厳しい上司にあたってしまったことも財産に思えてくるから不思議だった。


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