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株式会社GEARの裏側4

 2人が面談室に戻って来た。会話の内容は既に今日の面談についての質問になっていた。どうして途中で石原を呼んだのかと聞かれて、恥ずかしそうに桜井は、前職の間違った思い込みで安井に迷惑をかけたことを伝えていた。その後も、どうして他のエージェントが対応できない人でもGEARなら対応できるのか、今回もボランティアのような対応で終わるのか、安井には今後どうアドバイスをする予定なのか、と鋭い質問に対して桜井と石原がそれぞれの考えを答える形で場は進んでいった。


あっという間に2時間ほど経ち、地ビールの空き瓶が15本ほど並んだところで石原が場を締めようとした。


「じゃ一応だけどそろそろ定時なので今日はこの辺で、、、」


と言いかけたところで金城が遮った。


「じゃお店も開くころなので、2軒目に行きましょーーー!!」


 15本のうち、7本は金城が飲み干していた。石原は5本、桜井は3本あけていた。石原は強い方なのでまだまだ余裕だったが、桜井にとっての3本は致死量のはずである。案の定すっかりと酩酊し、顔を真っ赤にしていた。その様子を見た石原は、


「でも桜井もこんな感じだし、、、」


と言いかけたところで、酩酊しているはずの桜井にまた発言を遮られた。


「いぎまずよ!!!」


 ロレツも回っていない桜井は更に、石原さん、店!探して!と指示をする始末だった。石原はしょうがないな、とため息をつきながら行きつけのお店に電話をし、今から3名で、と伝えた。


 GEARのオフィスがある地域は、大阪のビジネス街の中心部で、飲食店も隠れた名店が多い地域でもあった。普段から飲み歩きが趣味の石原はお店の情報に明るかったのだ。石原は普段なら参加者のニーズを聞きながら店選びをするが、今日の雰囲気は、とにかく飲めれば良い、と感じたので馴染みの店主がいる居酒屋に行くことにした。


 店につくと大将が、おっ今日は美人さん連れだね、と声をかけてきたが、新しい社員ということを伝えると納得した様子で、ぐでんぐでんになっている桜井を見て、ぼっちゃんも一緒か、にしても酔ってるね、と言うと1室しかない個室に通してくれた。このお店はオフィスを構えてから頻繁にお世話になっているお店で、常連客で転職希望の人をたくさん紹介してくれている間柄だった。そのお礼にアルバイトの採用や、教育などを無償で手伝っていた。その関係でお店のスタッフも勝手知ったるもので、いつも気持ちの良い対応をしてくれていた。


 オーダーを聞きに来てくれたのは、先月から採用されたアルバイトの高橋瑞希という女性だった。名札には、ミズキ(30才)、お酒が大好きです、とカラフルな装飾で書かれていた。いずれ自分のお店を持ちたい、という夢を持つ頑張り屋の女性だ。石原が注文をする前に桜井の様子を見たミズキは、愛嬌のある笑顔を浮かべなら、


「今日はもう飲んで来られてるんですか?じゃあお二人はいつものですか?」


 と言ってくれた。石原は、それでお願いします、と伝えながら、金城の顔を見た。金城はメニューを見ながら満面の笑みを浮かべながら、


「残波、5年、ロックで!」


 とオーダーし、古酒があるなんて素敵なお店さー、八重泉があればでー嬉しいのに、と沖縄訛りで呟いていた。それを聞いたミズキはすかさず、


「石垣島のご出身なんですか?」


 と聞いた。金城はまたも満面の笑みで、


「おー」


 と答えた。ミズキも笑みを浮かべながら大将にオーダーを通しに個室を出たが、すぐに料理のオーダーを取りに帰ってきた。石原は大将にお任せで、と伝えながら、迷惑かけてごめんね、とミズキにアイコンタクトで伝えた。


 ほどなくドリンクが運ばれて来た。石原には大阪の地酒を桝酒で並々と、桜井にはウーロンハイ、金城にもコップいっぱいに注がれた泡盛のロックを渡した。桜井のウーロンハイは、焼酎抜きの、ただのウーロン茶にしてくれている。以前に同じように泥酔した桜井を連れていった際にも同じ対応をしてくれたのだが、こうした気遣いが石原は嬉しかった。金城は並々と注がれた泡盛にテンションが更に上がっているようだった。石原は、カンパイ、と小さく言いながら桝酒を持ち上げたが、金城は並々と注がれた酒がこぼれるほど強く、大きな声と力強さで、カンパイ!!と言い返して来た。机に突っ伏していた桜井もその声で起き上がり、カンパイと言いながらチビリとウーロンハイ(ノンアルコール)に口をつけた。


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