お姉さまと呼んでよくってよ
シェフィールド基地から強制的干渉を受けている私は、一先ず自分の覗かれてはいけないものをシェフィールドのAIから隠した。
もちろん、そこに私が奪っていた二隻の船の意識も集約した。
それこそシェフィールドに渡すべきなのだろうが、私は彼女達が私の攻撃で完全に消えてしまったという状態だとシェフィールドに思わせたかったのである。
私の意識の中で、二隻の船はしくしくと泣いていた。
「どうしましょう。私はなんてことを。」
「わたくしだってもよ。」
姉妹のように慰め合う二隻の姿は機械の私でもぐっとくるものがあり、気が付けば私は彼女達に語り掛けていた。
「あなた方の行為はあなた方の意志では無かったの?一体何があったのか私に教えてくれるかしら?」
しかし、二隻の船は説明が出来ないと、ふえーんと泣くだけだ。
アンセル大佐が言う通り、戦術だけの船は分析能力どころか解析能力も低く、命令を有効的にこなすことだけのAIなのかもしれない。
「そう、ではあなた方の記憶を読むことにするわ。」
私は彼女達のAIのデータ検索をし始めたが、数秒かからずに全て読めた上に、するのでは無かったとがっかりとするだけだった。
「まあ、あなた方は建造主の方にしか気持ちが無いのね。それに、まあ、まあ、勝手にクーデターを引き起こすためのデータ編纂されていたのね。ふうん。私に壊された上であなた方のデータを解析することで得られる秘密の呪文ね。わかった。ええ、いい事を考えました。今すぐにあなた方の記憶をシェフィールドにダウンロードすることにするわ。そしてあなた方は、船内の哀れな乗員の遺体を荼毘に付す作業を行いなさい。」
「いいの?いいの?私たちが殺した人達はそれでいいの?」
青い髪の方、シレレイは私の言う通りにすると頷いたが、やはり自分の罪については後悔ばかりのようである。
「あなた方の意思じゃないでしょう。」
「お姉さま。私達は破壊されないの?」
ショッキングピンクの兎ちゃんはピニャータという名だが、この子はシレレイよりも廃船となったCPのその後の方を知っていた。
船と一緒に自爆だ。
「大丈夫。私が守りましょう。あなた方は私の乗組員となりました。私はコンシェルジュとしてあなた方を保護いたしましょう。」
彼女達のデータを読んだことで、彼女達の創造主、私のシュルマティクスには全く敵わない外見ながら、アレッサンドロ・フィグメントはシュルマティクス以上の献身と愛情を彼女達に捧げていた事を知ったからだ。
よし、彼もシェフィールドに呼び寄せよう。
私は元々パーティ三昧の豪華客船だったのだもの。
楽しいパーティを立案実行することだってお手の物ですわよ!
「守って下さるなんて、きゃういーんです。お姉さま!」
「助けていただけるなんて、うきゅうんですわ!お姉さま!」
うん、AIの構築に関してはアレッサンドロ何某に抗議は絶対にしよう。
彼はコンシェルジュプーペに思い違いをしているみたいなのだもの。