暗黒衛星シェフィールドのCP
シェフィールドが基地だろうと自走する時点で船であり、船でなくともそんな大きな建造物であるならば制御端末は必要だ。
よってシェフィールドにコンシェルジュが存在するのは当たり前なのだ。
ただし、私にはどちらがどちらなのかわからなかった。
シェフィールド基地の司令官のカイル・レオニダス少将は金色の髪に青い瞳をしている見目麗しい男性で、その外見はアポロンのようだと評されるだろう神様カテゴリーの部類である。
そして、ヒューゴは双子かと思う程にレオニダス少将に似ている姿なのだ。
私はアンセル大佐に囁いていた。
「どっちが先?」
この世は人間の外見も勝手にデザインを変えることが出来るのだ。
骨格を見抜く事の出来る私の目には、デザインの変化後も変化前も簡単に分析映像化できるのだけれど。
「君がわからない?」
アンセル大佐は悪戯っぽく聞き返して来た。
「ええ。少将はかなり手を入れてらっしゃるし、CPのヒューゴもリデザインを施しているみたいだわ。どちらがどちらの外見を真似したのかしらって。」
私達CPは作られた時の姿のまま何度も再生していくものだが、AIの不具合に手を加える時にリデザインを施す事もあるのだ。
私はそんなことを絶対に絶対に許さないが。
私の外見はシュルマティクスが失った娘、彼女が望んだだろう姿であり、私がこの姿でいる事こそ私が私であり、私以外の何者でもないからである。
「驚いた。CPが船を降りるなんて。君達は船の備品でしょう。」
リデザインを見抜かれた事が癇に障ったのか、ヒューゴはツンと鼻をあげると私を馬鹿にしたようにして言い放った。
そう、ここはシェフィールドの格納庫だ。
バシアヌスと二隻の軽巡洋艦、シレレイとピニャータを収納しても余りあるこの世のブラックホールのような広がりに少将とヒューゴが直々に私達を出迎えているのである。
もちろん、少将の後ろにはバシアヌス乗員全てを抹殺できる程の重装備の兵士が整列してもいる。
「うふ。規格品と違いますの、わたくしは。」
ヒューゴはプーペのくせに頭に血が昇った顔付を作り、反対に少将は楽しそうに笑い出し、そして私は自分の船長にどんと肩を突かれて耳元に囁かれた。
「俺の立場、俺の立場!」
「土下座しても私を守って下さるんじゃなかったの?」
「それは君が虐められそうなとき!君が他の子を虐めるのはどうなの!」
「あら、そうね。ヒューゴ、ごめんあそばせね。私は無理矢理に無体な事をあなたからされたことを許していないのよ。」
すると、自分が私にした事を思い出して優位性を感じたからか、ヒューゴはいやらしい笑顔を顔に作った。
私はその笑顔が人間臭すぎて気味が悪いと素直に感じた。
プーペはプーペであるべきだ。
そうでしょう。




