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俺は騎士になった。【恋は盲目であるというけれど。】

 俺はキトラさんにシャラン王国に連れていってもらった。シャラン王国は、戦争で疲弊していた祖国とは違って、平和だった。

 キトラさんはシャラン王国でもそれなりの地位がある家の人だった。そんな人が俺みたいな、戦争の原因になった存在の弟を連れて帰っても問題はないのだろうかと不安になったが、キトラさんもキトラさんの両親も俺のことを受け入れてくれた。



「つらい目に遭ったのね」

「此処を家だと思っていいぞ」



 そんな風に言って、キトラさんと同じ魔術師であるご両親は俺のことを抱きしめてくれた。

 そうやって抱きしめられた時、俺は思わず泣いてしまった。



 キトラさんも、この家も優しい。



 ――兄さんが、姫様と逃げなかったらきっとこんなことにならなかった。きっと姫様は帝国に嫁いで行って、戦争が起きることもなくて――、俺はずっとあの国で家族とのんびり生きていただろう。

 それでも何でそんなことをという気持ちはあるけれど、兄さんを心の底から憎む気持ちは湧いてこない。何だろう、複雑な気持ち? というのか、俺は兄さんに何でとは思うけれど、やっぱり俺は兄さんが好きだと思う。記憶の中にある兄さんの事を憎むことは出来ない。もし、憎む事が出来ればもっと気持ちは楽だったかもしれない。



 夜に眠ると、昔の記憶がよく思い出される。

 家族で過ごした、幸せで、温かい記憶。

 だけど、目を覚ますと、それはもうない。

 それを思うと、毎回胸が痛んだ。



 俺はその悲しみや苦しさを紛らわせたくて、ずっと剣を振っていた。キトラさんは俺に魔術も教えてくれた。俺には少しだけ魔術の才能もあるんだって。正直そういうの想像してなかったから嬉しかった。

 ずっと俺は剣を磨いたり、魔術の練習をした。キトラさんほど魔術を使うことは出来ないけど、下級魔術師レベルにしか使えないけど、剣を使うのにも役立つぐらいには使えるようになった。

 悲しさとか疑問とか、沢山の思いが俺の中に湧いてくる。だから、その気持ちをなんとか紛らわしたいってただ必死だった。



 キトラさんの実家に身を寄せたものの、これからどんな風に生きていくべきかなど何も見えていない。

 ただ俺は、何も考えたくなくて必死だった。

 キトラさんの家に身を寄せながら、家のお手伝いをする、そしてその合間はただ剣を振るい、魔術を習う。

 そんな中で、一年ほど経過したころ、キトラさんに問いかけられた。




「ベルリードはこれからどうする? 私はまた他国に行こうかなと思っているんだけど」

「俺は……」

「何をしたいとかあるなら、この国でそれを叶えるのもいいと思うの。でももし何もやりたいことがないのならば、ついてきてもいいかなと思うのだけど」



 キトラさんにそんなことを問いかけられて、俺が何をやりたいかを考える。

 それを考えた時に思い浮かぶのは兄さんの姿だった。



 騎士として活躍していた兄さん。俺にとって自慢で、最も敬愛していた兄さん。

 あんなことになったとしても、俺にとって騎士として活躍していた兄さんは憧れだったんだ。悲しみも苦しみもあるけれど、兄さんのあの堂々とした騎士としての姿へのあこがれがなくなったわけではない。



 それを考えた時、自然と一つの思いが浮かんだ。



「――俺は騎士になりたい」

「騎士に? 確か、ベルリードのお兄さんが騎士だったわよね」

「うん。兄さんは、お姫様と逃げちゃったし、それで大変なことになったけど――俺はそれでも兄さんに憧れてたんだ。だから、俺は騎士になりたい」



 剣を振るうことも好きだし、やっぱりあの姿にあこがれるから。

 だから、俺は騎士になりたい。


 そう言い放ったら、キトラさんは「そう」と優しく笑ってくれた。




 それから騎士団に入るための試験を受験するための手続きをしてくれた。それを見届けてから、キトラんは旅立つといっていた。



「頑張ってね、ベルリード」

「うん」


 俺はキトラさん達に応援されて、必死になって剣や魔術の練習をした。騎士団の試験では、魔術を混ぜての試験もあるらしいからそれを受けることにした。


 それから俺は試験を受けた。

 嬉しいことにその試験には合格することが出来た。



 そうして俺は騎士になった。兄さんと同じ騎士に。でも絶対に兄さんと同じ道は辿らない。——恋なんてしない。恋ってのは、怖いものだから。



 騎士として活躍していけば、お姫様の近くに行くことになるかもしれないけれど、絶対にお姫様に恋なんてしないようにしよう。

 身分違いの恋なんて、悲しい結末にしかならないのだから。



 俺はそんな決意を胸に、俺は騎士として王城の騎士寮に入った。



 これから、俺の騎士としての生活が始まる。

 そのことへ胸を弾ませながら、兄さんと同じ結末を迎えたらどうしようとそんな不安も湧いていた。



 ――不安はある。でも、俺は憧れたあの姿に追いつく。騎士として頑張るんだ。





 



というわけで、国を抜け出してベルリードは騎士になりました。

騎士としての才能はベルリードはあるので、順当に騎士になりました。


楽しんでいただければ嬉しいです。


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