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あたしのせいじゃなーい  作者: わかいんだー
本章~ファンタジックな旅の日常~
5/52

あたしのせいじゃない

メインキャラ紹介


アルフ:過去が無いのに能天気な少年

ベルタ:ゴリラのようにかわいい少女

ガルマ:本気出したらダメな系の竜人


ベッドで寝たい。というベルタの突然のわがままで、予定外の町に寄った一行。

宿で寛いでいると、部屋の前を大勢が駆ける音。


ベルタ「何これ、襲撃?逃げよ、逃げよ!」

アルフ「何だろね~」

ガルマ「我らが目当てで無ければ良いのだが」

ベルタ「だからまず逃げようって!」

相談している間に足音は遠ざかっていった。


ガルマ「我らが目的ではなかったか」

ベルタ「よ、よかった~」

一息ついた途端に、勢いよく部屋の扉が開かれた。吐いた息を呑むベルタ。


そこに立つ一人の警備兵。

荒い息を抑えながら、凄まじい形相で報せる。

警備兵「逃げろ!化け物が町に入り込んだ!」

警備兵はそれだけを静かに、はっきりと告げると即座に走り去った。

かなり緊迫した情勢のようだ。


ベルタ「い、いやぁああああ!」

アルフ「・・・化け物?」

暢気に寛いでいたアルフとガルマが真剣な面持ちになり、目を合わせ頷きあう。


ベルタ「ちょ、ちょっと、見つめ合ってる場合じゃないでしょ。早く逃げましょ!」

アルフ「なんで?新鮮な肉、食い放題だぞ。食えるかは知らんけど」

ガルマ「うむ。町を襲う化け物となれば、倒して食っても文句は言われぬ筈」

一瞬、呆けるベルタ。


ベルタ「何言ってんのよ。警備兵すら逃げ出してるのよ!あたしたちで倒せる訳ないでしょ!」

アルフ「罠アイテムがあるじゃん。ここに仕掛けて仕留めようぜ」

ガルマ「だが町の警備兵が逃げる程の奴だ。捕らえても力ずくで、すぐに逃げられてしまいそうだな」

アルフ「逆にそれほどやばい奴なら、この宿ごと燃やしても文句言われないんじゃね?」

ガルマ「おぉ妙案。バーベキューにする手間も省けるな」

などと楽しそうに話しながら、罠アイテムを設置するアルフとガルマ。


ベルタ「バカ言ってないでよ!そもそもこんな狭い部屋に、どうやって誘導するのよ。それに逃げ道は?」

アルフ「逃げるのは瞬間帰還器でいいだろ。誘導は今お前がやってるじゃん?」

じっとベルタを見つめるアルフとガルマ。


ベルタ「え?あたし?今やってる?」

アルフ「みんな避難して、声をひそめてるんだろ。だったら大声出してれば寄ってくるんじゃね?」

一気に血の気が引いて青ざめるベルタ。きしみ始める建物。


ベルタ「いぃやぁあああああ~、何でこうなるの~」

アルフ「何でって・・・化け物も肉を食いたいんじゃね?」


話し終えるかどうかのタイミングで崩れ落ちる天井。

化け物の脚らしきものが叩きつけられたようだ。

咄嗟に瞬間帰還器で脱出する三人。

拠点から宿を見ると、化け物というか怪獣がへばりついていた。


アルフ「でっけー、いやでかすぎ。宿屋よりでかくね?ありゃ部屋に入らんわ」

ガルマ「罠アイテムがムダになってしまったな」

ベルタ「って、どうすんのよあんなの、他に手はあるの?」

アルフ「どうするって、町出ようぜ」

ベルタ「へ?」

ガルマ「うむ、倒して食うのが難しいのであれば、見なかった事にするしかなかろう」

ベルタ「えー、こんだけ騒ぎ起こして、しらんぷりする気?」

アルフ「いや、アレが狙ったのは俺達じゃなくて、この町だろ」

ベルタ「それはそうだけど、宿屋に誘導して壊しちゃったわよ。気にしなくていいの?」

アルフ「俺は誘導してないぞ」

返答に詰まるベルタ。


ガルマ「あやつ動かぬな。部屋に設置した、捕縛罠に脚が引っかかっておるのか」

アルフ「なら、火炎罠も起動してバーベキューにしちまおうか?」

ガルマ「火耐性が無ければ倒せるやもしれぬな。如何にも火に強そうな外見ではあるが」

アルフ「見掛け倒しかもしれねぇ。あれじゃ罠アイテムは回収できねぇから、一応やってみようぜ」


嫌な予感がして問いかけるベルタ。

ベルタ「一応って・・・それ、倒せなかったらどうなるの?」

アルフ「そりゃ暴れるんじゃね?」

ガルマ「怒り狂って大技を繰り出しそうであるな」


無言で二人の手を掴んで踵を返し、町の外へ向って歩き出すベルタ。

アルフ「どした?騒ぎ沈めるんじゃないのか?」

ガルマ「しらんぷりで良いのか?」


現状なら、化け物を罠で抑えましたと言い訳できるかもしれない。

だが暴れさせてしまっては、町の弁償を請求される事が目に見えている。

察したベルタは、問いには答えずに歩き続けた。


引きずられながら、化け物を見ていたアルフが呟く。

アルフ「警備兵で対処できないって事は、あの化け物は珍しいのかな」

ガルマ「想定外という雰囲気だな」

アルフ「俺達がこの町に寄ったのも想定外だったな」

ガルマ「我らの場合は予定外だな。そういえば、急遽この町へ向う事にした故、獣の多い地を抜けてきたな」

アルフ「あぁ~、俺達の臭いを追ってきたのかな」

歩みを止めるベルタ。


急遽この町へ向う事にしたのは、ベルタが女性としての事情で突如設備が必要になったからである。

具体的な説明は避けたかったので、ベッドで寝たいと言い張って予定変更したのだった。


ベルタ「あたしのせいじゃない」

か細く呟くベルタ。生理現象なのだから仕方無いじゃないと心の中で思う。


アルフ「へ?あぁベルタのせいだと言ってる訳じゃねぇぞ」

ガルマ「うむ。近かった故、瞬間帰還器を使わぬ判断をしたのは我であるしな」

アルフ「そうそう。俺も途中で獣を捕らえて食えるかな~、と思って歩こうって言ったんだ」


本音かは不明だが、フォローを受けて少し気が楽になるベルタ。

とは言え化け物は気になる。襲来の原因が自分達である可能性に気付いたのだから。

だからと言って自分の手には負えそうに無い。

ガルマに頼んだとしたら、それこそ後悔してもしきれない大惨事になる可能性がある。

しばらく悩んでから、アルフを見て結論を出した。


ベルタ「軍隊に救援要請してる筈よね。みんな避難済みだし。うん大丈夫、大丈夫よきっと」

ベルタはアルフを見て、時には能天気になる事の重要性を学んだのだった。


数時間後、化け物は軍隊に処理された。

三人は化け物の足止めを感謝された。罠アイテムで抑えてなければ甚大な被害があったと想定されたからだ。

本来は警備兵の仕事だが、突然且つ想定外の化け物であった為、町人の避難を優先して手が回らなかったのだ。


宿屋は損壊したが、天災扱いで保険がおりるので、問題は無いらしい。

化け物が町を襲った理由については、偶然に有り得る事なので特に調べられる事は無かった。


ガルマ「町から謝礼金を支給したいと言ってきておるぞ」

ベルタ「そんなの受け取れませんよ。あたし達のせいで襲われた可能性だってあるのですし」

アルフ「あの肉は食えないのかな。こんがり焼けて、良い匂いしてるぞ」

ベルタ「肉は分けてもらってもいいかもね?食べられるとしたら凄い量だし、町で配っても余る筈だわ」

ガルマ「では謝礼金の代わりに肉を食わせてもらえぬか聞いてみよう」

肉はそれなりに美味で、その場で誰でも食べて良い事になった。

近所に住む人達が手分けして調理して振舞ってくれた。

一番大量に食べたのはベルタであった。


一行が町を去った後、ちょっとした武勇伝が噂になっていた。

町の被害が抑えられたのは、警備兵が逃げ出す程の化け物を、ベルタが果敢に大声で引き付けたお陰であると。

実際にはただの悲鳴だったのだが、恐怖に怯えながらも命がけで誘導していたかのように思われたらしい。

誤解で勇名をはせる事になったが、当のベルタには知る由も無かった。


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