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あたしのせいじゃなーい  作者: わかいんだー
本章~ファンタジックな旅の日常~
36/52

おまけ:任意収容所

賑やかな町に訪れたアルフ一行。

王都ほどでは無いが先進の施設が立ち並んでいる感じだ。


しかし町中は何かおかしな雰囲気を漂わせている。

妙に身なりの良い者とゴロツキのような者ばかりで、普通の容姿の者が殆ど居ない。


アルフ「賑やかだけど何か変だな。生活に活気があるんじゃなくて酔っ払いが騒いでるだけなのか」

ベルタ「綺麗な町だけど嫌な雰囲気ね」


「おねぇちゃん、ヒック、そんな大きな荷物背負って、ヒック、どこ行くの」


まだ明るいのに酔っ払いがベルタに向って歩いてくる。

だがティアラの光で酔いが覚める。


「あれ。急に酔いが覚めちまったぞ。ちっ、呑みなおすか」


呟くと男はどこかへ去っていく。


アルフ「ティアラの光は酔い覚ましにも効果があるみたいだな」

ベルタ「よく見たらお店が酒場とか賭場ばっかりよ。何よこの町」


酒場くらいは大抵の町にも在る。

だが賭場など無いし、酒場も探さなければ見つからない程度だ。

この町は酒場と賭場ばかりが密集しているので雰囲気がおかしくなっている。


アルフ「でっかい闘技場みたいなのが見えるぜ」

ベルタ「歓声が聞こえるわね。行って見ましょうか」


闘技場らしき施設に着いてみると、そこには競馬場と書かれていた。

物凄い人ごみである。


アルフ「これも賭場だったか」

ベルタ「町ごと堕落しているみたいね。またダメ領主なのかな。警備兵にも警戒しないとね」


警備兵をも買収して配下に置いていた領主を思い出すベルタ。


バチッ

「ちっ。子供のクセに盗賊避け持ちかよ。しくったぜ」


アルフを狙ったスリが拘束された。


アルフ「スリも博打気分かよ」


警備兵がスリを引き取りに向ってくる。


警備兵「スリの捕縛協力に感謝します」

アルフ「兄ちゃん。この町って酒場や賭場ばかりでおかしくねぇか。領主がおかしいのか?」

警備兵「いや。ここは大人の娯楽の町だからだ。沿革についてはそこの案内板でも見てくれ」


警備兵は簡単に説明するとスリを連行して去る。

異常な店の偏りは大人の娯楽の町という事なので目的に沿っていた。


案内板には町の地図と説明が記されていた。

読もうとしたら隣の案内所から女性が声をかけてきた。


案内人「お探しの施設がありましたら、こちらで御案内しますよ」

アルフ「探しているのは宿屋なんだけど。その前にこの町の事を聞いても良いかな」

案内人「はい。町の説明についても、こちらで承っております」

アルフ「何でこの町はこんななの」


アルフの大雑把な質問を即座に察する案内人。

子供のアルフにはつまらない町に見えるであろうと思った。


案内人「あはは。大人の息抜きが目的の町なので、貴方にはまだ分からないかもね」

アルフ「大人のって言うけどさ。金持ちか浮浪者かって両極端だぞ。普通の奴が殆ど居ねぇ」


店の偏りは分かるとしても客の偏りがおかしいのだ。

大人の中でも極端な層しか見当たらない。


案内人「そうですね。真面目に働いている方はここまで息抜きに来る事も無いでしょうね」

アルフ「働いている奴が来ないのなら息抜きになってねぇよな」

案内人「受け皿として用意はしているけど利用されていない感じですね」

アルフ「なら施設を変えた方が良いんじゃねぇの」


説明された目的が全く果たされていないのだ。

目的に合わせて運営方針を変更するのが筋である。


案内人「これはこれで国への貢献になっているのよ。利用者にも好評なんですよね」

アルフ「へ。酒呑んで博打していれば国に貢献できるの?」


アルフの意見を否定せず、目的外の価値を示唆する案内人。

目的を果たせていない事を認識してはいるが、それでも継続する意義が有るとみなしている。

しかし堕落して国に貢献と言われてもアルフには理解し難い。


案内人「はい。収益の二割は国が徴収しています」

アルフ「二割ってえげつねぇな。それじゃ博打する奴って確実に損するんじゃねぇの」

案内人「お金儲けを目的とするなら、ごく一部の例外の方を除けば皆さんが損していますね」

アルフ「ここに居る奴は皆バカなのか」


ほぼ確実に損すると分かっていながら集っているのである。

やはりアルフには理解し難い。


案内人「バカな人も居るでしょうけど、皆さんがそういう訳でも無いですよ」

アルフ「何かメリットがあるの?」

案内人「一つには娯楽として楽しまれる場合。例えば競馬の観戦料と思えば少量の掛け金は価値あるでしょう」

アルフ「ここで稼ぐ必要の無さそうな金持ちが来るのはそういう事か」


賭けは小銭一枚から成立する。

観戦料として高いとは言えない上、増えて戻ってくる可能性まであるのだ。


案内人「あとは夢を買うって事ですね。損する可能性は高いですが、運さえ良ければ大儲けですから」

アルフ「なるほどな。夢を買った対価と思えば妥当って事か」


夢という一時の幸せに価値を見出すのであれば多少の対価は納得がいく。

アルフにもこの町の存在意義を理解出来た。


案内人「娯楽として楽しまれるには優れた施設なのですが。人生を賭けてしまわれる方は残念ですね」


理性の弱い者が散財する事も認識されている。

だが堕落は当人の問題であり施設の問題では無い。

施設を無くした所で散財する場所が変わるだけであろう。


アルフ「ありがと。すっげぇ良く分かったぜ。んじゃ宿屋を教えてくれるかな」

案内人「はい。合わない人向けの区画があります。そちらの宿屋がこの道の500m程先にあります」

アルフ「合わない人向けの区画? 何でそんなのがあるの?」


合わないなら来なければ良いのだ。

なのに合わない人用の区画を用意する意図が分からない。

アルフにとっては理解し難い事だらけの町である。


案内人「例えば御家族でいらして、奥さんと子供は公園で遊ばせたいような場合ですね」

アルフ「いや。それ家族は連れてこなくていいだろって思うけど。需要があるんだな」

案内人「御家庭の事情はそれぞれですしね」

アルフ「ありがと。気遣い助かったぜ」

案内人「たちの悪い大人が多いから気をつけてね」


案内所を後に宿屋へ向うアルフ一行。


アルフ「ダメ領主って訳では無いみたいだな」

ベルタ「雰囲気がおかしいのは利用する側の問題って事か。理性が低い人は利用制限すべきじゃないのかな」

アルフ「理性が低いのならここだけ制限してもダメじゃね。むしろここに集めた方が全体としては良いかも」

ベルタ「その考え方も酷いわね。ダメな人の収容所みたいだけど。自分の意思で来るのなら問題は無いのかな」


この町が人をダメにするとしたら、多少の利益が出ると言っても国家の損失になる。

だがダメな人を隔離するのであれば国家の利益と言えよう。



突然アルフにすがりつく男。


変な男「頼む! 金を貸してくれ。少しで良いんだ」

アルフ「へ。あんた誰だ」


賊には慣れたアルフだが、いきなり突拍子も無く懇願してくる男に戸惑う。


変な男「必ず返す。すぐに倍にして返すからさ」

アルフ「言葉が通じないのか?」


変な男はアルフの問いに答えず、ひたすら金を無心する。

名乗りもしない男が根拠も示さずに、必ずとかすぐに倍返しなんて言っても誰が信じると言うのか。


変な男「助けると思って。頼むよ」

アルフ「貸す訳ねぇだろ。少しは頭使えよ」

変な男「絶対。絶対返すからさ」


アルフが子供だからと舐めているのか。

変な男は考え無しのゴリ押しを続ける。


ベルタが手を挙げて警備兵を呼ぶ。


警備兵「こらこら。他人に迷惑をかけるな」

変な男「俺はただ頼みごとをしているだけだ」


警備兵に逆切れする変な男。

アルフからの問いを無視したのに警備兵には答えている。

答えなければ捕縛される事が分かっているのだ。


警備兵「断られたんだろ。それでもつきまとうならストーカーだ」

変な男「考え直してもらおうとしているだけなんだ。何も強制していないし」

警備兵「お前の相手を強制させられているだろうが。明確な犯罪行為だ」

変な男「いやだから強制じゃなくて頼みごとをだな・・・」


埒が明きそうにないので警備兵に任せてその場を去るアルフ一行。


アルフ「早速きたな。たちの悪い大人とやらが」

ベルタ「警備兵が見える場所でやるなんて犯罪意識が無いみたいね。ある意味凄いわ」


この町は警備兵が多い。

脅したり奪ったりすれば即座に犯罪行為として捕まる。

それ故、変な男はひたすら頼む策にしていた。

進路妨害したりつきまとったりするだけでも犯罪になる事を知ってはいたが、誤魔化し通せると思っていた。



突然アルフにすがりつく男。


変な男「頼む! 金を貸してくれ。少しで良いんだ」

アルフ「またか」


さっきとは別の男だが台詞が全く同じである。

マニュアルが有る訳では無いが、見よう見まねで成功例が広がっていた。


変な男「必ず返す。娘が病気なんだ。治療費が必要なんだ。助けてくれ」

アルフ「お。さっきの奴よりは頭を使っているな」


名乗らないのは一緒だが理由を考えてきただけ知能はマシかも知れない。


変な男「何の話しだ。俺は本当の事を」

ベルタ「案内して下さい」

変な男「へ」

ベルタ「娘さんの所へ案内して下さい。病気ならこの光で癒せると思います」


詐欺であろうとベルタは察するが、万一の可能性を考えて治療を申し出る。


予想外の申し出に、変な男は懸命に言い訳を考える。


変な男「い、いや。凄い難病なんだ。特別な薬しか効かないんだ」

ベルタ「ウンディーネ様のお力が人の薬に劣る訳が無いでしょう。いいから案内して下さい」


ベルタの言葉の意味は理解出来ないが、全く動じない態度に自信が見える。

信憑性を認めざるを得ない変な男。

光で癒せるとしても連れて行けない理由を必死で考える。


変な男「え、えーと。そう、感染するから隔離されているんだ。一般人は近づけないんだ」

ベルタ「光で護られているので大丈夫です。医者だろうが役人だろうが説得します」


治療を拒む理由を考えるのはムリだと察する変な男。

別の言い訳を模索し、連れが居るならあまり時間は割けない無いだろうと考える。


変な男「ここからじゃすげぇ遠いんだよ」

ベルタ「問題ありません。ここに戻るのは瞬間帰還器で一瞬ですし、呼ばれているのはアルフだけですから」

アルフ「え。俺放置かよ」

ベルタ「方向さえ聞いておけば、あんたの足なんてすぐに追いつくわよ」

アルフ「それもそうか」


万策尽きてマヌケな言い訳を始める変な男。


変な男「じゃぁ病気だけじゃなくて怪我もしているって事で」


本当に怪我をしているとしても病気の治療を拒む理由にはならない。

娘が心配ならサッサとベルタを連れて行こうとする筈だ。

万一本当の話だったらという懸念は吹き飛んだ。

ベルタが手を挙げて警備兵を呼ぶ。


警備兵「こらこら。他人に迷惑をかけるな」

変な男「俺はただ頼みごとを・・・」


さっきと同じパターンぽいので警備兵に任せてその場を去るアルフ一行。


アルフ「なんか笑えるほどにバカだな」

ベルタ「同じような手口が蔓延してそうね。押しきられちゃう人が居るんじゃないかな」


こんな手口が広がるくらいに金を出してしまう者が居るのだ。


アルフ「どっちも迷惑だな。これだけ警備兵だらけなんだから一声かけるだけで済むだろうに」

ベルタ「頼むだけじゃ通報するほどの犯罪にならないと思って躊躇うのかもねぇ」

アルフ「犯罪者の肥やしみたいな奴だな」


犯罪者が悪いのは確かだが、それを助長するように金を出す者も悪い。

この町では悪循環が構成されてしまっているようだ。



警備兵がアルフ一行に近づいて話しかけてきた。


警備兵?「この辺りは不審者が多いのでお気をつけ下さい」

アルフ「おぉ。さっきから絡まれっぱなしだわ」


言われるまでも無いとばかりに軽く流して去ろうとするアルフを品定めするように見る警備兵。


警備兵?「む。そのレイピアは盗難届けが出ていますね。こちらで預かります」

アルフ「へ? 盗品なら俺を逮捕するべきだろ。これは俺のだ。詰め所に付き合うから届けを確認しようぜ」


似たような品が出回っている可能性はある。

故に疑われるだけなら仕方がないが、盗品と断定されて不愉快なアルフ。

潔白を証明しないと気がすまない。


警備兵?「いや。逮捕は見逃してやるからレイピアだけ渡しなさい」


警備兵が逮捕を見逃すという発想がありえない。

偽者だと察するアルフ。


アルフ「見逃してもらう必要はねぇっちゅうの。それとも詰め所に同行出来ない理由でもあんのか」

警備兵?「俺は好意で言ってるんだぞ。拘留されて前科なんてつけたくないだろ」


発言がどんどん警備兵にあるまじき内容へとずれていく。

呆れて一喝するアルフ。


アルフ「警備兵が盗賊に好意を示してどうすんだ」


ベルタが手を挙げて警備兵を呼ぶ。


警備兵「どうかされましたか」

ベルタ「こっちの警備兵さんの言動がおかしいのですが。本物ですか?」

警備兵?「げ。やば」


警備兵に気付いてダッシュで逃げ出す偽の警備兵。


警備兵「あ。追わねばならぬので失礼します」


警備兵は偽者を追って走り去った。


アルフ「今のは少しマシだったか? そうでもねぇか」

ベルタ「装備を真似る辺りは手が込んではいたけどね」


警備兵の姿で安心させた上、国家権力で言いなりにさせようとする卑劣な悪知恵はあった。

だが見抜かれた時の対処まで考えられるほどの知能は無かった。



少しづつ手の込んだ賊になってきている。

次はどんな手だと警戒するアルフ一行。

その警戒を虚仮にするかのように気の抜けた声をかける者が現れた。


不審者「よう。久しぶり。俺だよ、俺」


即座に警備兵を呼ぶアルフとベルタ。


不審者「待てや。俺は何もしてねぇだろ」

アルフ「で。お前は誰で何の用だ」


警備兵の前で言葉に詰まる不審者。


不審者「あ~人違いだったわ。んじゃな」


誤魔化して立ち去ろうとする不審者に警備兵が詰問を始める。


警備兵「待ちなさい。君は何者だ。彼を誰だと思ったんだ」

不審者「うるせぇな。ただの人違いだって。何もしてねぇんだから放っておけよ」

警備兵「そうはいかない。不審者には職務質問をするきまりだ」

不審者「うぜー。俺は・・・えーと・・・」


人違いだと言われたので警備兵に任せてその場を去るアルフ一行。


アルフ「これだけ頻度が高いなら、最初から警備兵に付いてきてもらった方が良いな」

ベルタ「警備兵どころかガルマさんが居るのにねぇ」

アルフ「バカだから竜人を知らないんじゃね」

ベルタ「流石にそれは。本物の竜人様だと思っていないのかな」



ようやく隔離された区画に着くアルフ一行。

たった500mが随分と長く感じた。

案内された区画では酒場や賭場は見当たらない。

公園や休息所などによる閑静で健全な造りになっていた。

警備はより厳重になっており、酔っ払っているだけでも入場を拒まれるほどだった。


ベルタ「こっちの区画は他の町よりも治安が良いくらいの感じね。人も施設も両極端だわ」

アルフ「まぁ確かに、普通に働いてる人は空いた時間にやりたい事も多いだろうし。ここには来ねぇわな」


教えられた宿屋はアルフ一行が浮いてしまいそうなくらいに上品な雰囲気だ。

ロビーに入って周囲を見回すが豪勢な造りの割りに従業員しか見当たらない。


ベルタ「なんか場違いな感じがするわ。この区画の宿屋って皆こんな感じかしら」

宿の主「どうか御気になさらず。雰囲気を楽しんでいただけると幸いです」


呟くベルタに歩み寄って答える宿の主。

静かなので呟き声でも遠くまで届くようだ。


ベルタ「失礼かもしれませんがお伺いします。料金は普通みたいだし、経営的に不味くはないのですか」


醸し出す雰囲気に応じて維持費がかかっている筈なのに宿泊料は高く無い。

犯罪者だらけの町なので、宿屋も加担しているのではないかと不安を隠せないベルタ。


宿の主「町の儲けが大きいので助成金が出ているのですよ」


よく聞かれるのか、笑顔で即答する宿の主。


ベルタ「あっちの恩恵がこっちにもまわっているのか」

宿の主「あっち(笑)の大事な御家族をお迎えする場所ですからね。蔑ろには出来ません」


ベルタも納得する。

この区画の警備が厳重な事で裏付けられている。


ベルタ「では夕食と一泊をお願いします」

宿の主「かしこまりました。お部屋へ御案内します」


荷を置いて食堂へ繰り出すアルフ一行。

広くて綺麗な割りに客は少ない。

無駄遣い感が半端無い。


ベルタ「お金も余っている所には余っているもんねぇ」

アルフ「人生を投げた連中の血で出来た金だな」


実際、娯楽で楽しんでいる人はそれほど金を使っていない筈だ。

この町が潤っている事は、それだけ散財した人が居る事を示している。


ベルタ「変な事を言わないでよ」

アルフ「本望じゃねぇの。誰かの役には立ってる訳だし」

ベルタ「寄付したと思える人なら良いけどねぇ。そんな人が人生を投げたりはしないと思うわよ」


給仕が済んで食事を始めるアルフ一行。

料理は値段の割りに上質で量もあった。


アルフ「この町に住むのも悪くは無いんじゃね」

ベルタ「この区画に住むのならお得な感じよね。それだけに土地代も凄そうだけど」

アルフ「だろうな。飯は格安で美味いのに人が少ないし。何か制約はありそうだ」


この町に住めるのは、この町で働く者だけであった。

地方領主が居らず、国が直接管理する特殊な町であった。


食事を終えて部屋に戻るアルフ一行。


ベルタ「最初はダメな町だと思ったけど。ちょっと見ただけじゃ分からないものね」

アルフ「酔っ払いとか変なのが多いのは確かだけどな」


ダメな部分があっても全体的に見れば意義がある。

理屈では分かってはいた事を実感させてくれる町だ。


ベルタ「折角与えられた自由を無為に過ごすなんて勿体無いと思わないのかしら」

アルフ「生まれつき自由だと自由の有難みが分からないとかお前が読んでくれた本に書いてあったような」


町の意義は理解したが堕落した人の多さに嘆くベルタ。

堕落しても生きていける社会の甘さが害になっているのかも知れない。


ベルタ「恵まれ過ぎているのも問題ね。幼い内に野生を経験させるべきなのかしら」


社会の外という意味で野生なのか。

サバイバル生活で学ぶ事は多かろうが、堕落とは関係無いかもしれない。


アルフ「死ぬって。経験させるなら野生じゃなくて不自由だろ」

ベルタ「不自由か。戦争があった頃は兵役とか奴隷制度とかあったらしいけどね」

アルフ「それも違うくね」

ベルタ「うん。問題だから廃止された訳だしね。有難みを教育で自覚させられれば良いんだけどねぇ」


拘束される制度で自由の有難みを理解する事は出来よう。

しかし学ぶ機会として適しているとは言えない。


アルフ「痛い目を見るまで理解出来ないのが人だとも書いてあったな」

ベルタ「ここは痛い目を見ても理解出来ない人だらけよね」

アルフ「バカは死ぬまで治らないってな」

ベルタ「ウンディーネ様のお力でもダメだもんねぇ。本当に救いようが無いわ」


絡んできた犯罪者を思い返すアルフとベルタ。

反面教師として脳裏に刻む。


アルフ「この町で得る物は無さそうだ。さっさと寝て明日は早くに出ようぜ」

ベルタ「そうしましょう。ここじゃマアマさんも退屈そうだし。でもベッドが凄く快適そうな事は嬉しいかも」


翌朝早々に町を出てアルフ一行は旅を再開した。


町を出るまでに何度かおかしな者に絡まれはしたが面倒なのでガン無視。

町の出口まで付いてきた者はまとめて警備兵に引き渡した。


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