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あたしのせいじゃなーい  作者: わかいんだー
本章~ファンタジックな旅の日常~
29/52

おまけ:健康の為の不健康

アルフ一行は町へ着いた。

町の入口には長い行列が出来ている。


アルフ「何だこりゃ。入るの止めとくか?」

ベルタ「これだけ人が来るなら、中で良い事があるんじゃないの? 美味しい物とか」

アルフ「並ぼうぜ」


検問が厳しい訳では無く、単に町に入る人が多いだけのようだ。

歩みを止める事無く、行列はスムーズに進む。


警備兵「ようこそ。旅の方ですね。恐縮ですが現在、連続殺人犯を捜索中です。宜しければ御協力下さい」


入口の警備兵はアルフに、手配書のような人相書きの付いた紙を渡した。

話しかける間も無く行列は進む。

人ごみが凄いので、アルフは受け取った紙をポケットにねじ込む。


ベルタ「連続殺人て何よ。そんなに殺したい人が一杯居る訳?」

アルフ「誰でもいいから殺したいって。精神病の類が有るんじゃなかったか」

ベルタ「だからって本当に殺しちゃうなんて。ありえないわよ」

アルフ「精神がおかしくなっているのなら仕方が無いのかもな。害虫を殺す程度の感覚なのかも」

ベルタ「だったら害虫だけを殺してよ。意図的に殺人を犯す人なんて居なくなれば良いのに」

ガルマ「それでは人が滅ぶな」

ベルタ「へ」


カッとなっていたベルタの頭が冷める。

今の話は、同属である人による殺人の話である。

ガルマの粛清や、人を襲う獣を含めた話では無い。

人が人を殺さねば、人が滅ぶと言うのか。


ガルマ「人を産む者は全て人殺しだ。人殺しが居なくなれば人は滅ぶ」

ベルタ「・・・生まれた子はいずれ必ず死ぬ。つまりは殺している、と言う事ですか」

ガルマ「うむ」

ベルタ「そういう理屈じゃなくてですね、悪人・・・あ。善悪が無いなら、殺人が悪という事も無いのですか」

ガルマ「殺人者を悪だと定義して殺すのは自由だ。どちらもやっている事は変わらぬ。我も大勢殺している」

ベルタ「ガルマさんから見れば、ただの弱肉強食なんですね」


ガルマは人を寿命で縛り、場合によっては粛清する側である。

つまり人殺しを問題視しないどころか実践しているのだ。

その上で、人が殺し合うか助け合うかは自身で考えて選べと、裁量の自由を与えているのだ。


ガルマの考えは理解しているが、ベルタには認める事は出来ない。

少なくともここは法治国家だ。

人が助け合う社会を築いているのだ。

個人の裁量で殺すと言うのであれば、社会を敵に回すと言う事だ。

社会の一員として、敵を許容する事は出来ない。


ベルタ「あたしとしては違法な殺人が許せないかなぁ」

ガルマ「法とやらのお陰で、死にたくとも死ねぬ者も大勢居るな」

ベルタ「えぇ? ・・・病気で苦しんでる人とか、自殺に踏み切れない人かな。どうすれば良いのでしょうね」

ガルマ「考えよ。法とやらが正しいとは限らぬ。己で判断するしかない」

ベルタ「あはは。やっぱりそうなるんですよね」


アルフ「おかしな法に曖昧な法。正しそうな法に則っても冤罪があるし。俺でも法依存はねぇな」

ベルタ「かと言って法を無視しちゃうと秩序を維持出来ないしね。竜神様が決めてくれればいいのに」


アルフですら法の矛盾は理解している。

所詮は人の作った法なのだから、完璧には成りえない。

曖昧な法を、臨機応変に運用し続けるしか無いのだ。

その過程で生まれる犠牲は多く、極めて大きな問題もある。

それでも犠牲には目を瞑るしか無い。

今の人の限界なのだ。


アルフ「竜神様は、自分で考えろって言うんだろ。なら、殺したければ殺せって事じゃねぇの」

ベルタ「ひぃ。実際そうなんでしょうねぇ。どうすれば良いのやら。あたしには難し過ぎるわ」


アルフ「連続殺人犯が気に入らないなら、マアマに頼んで牢に送れば良いんじゃねぇの」

ベルタ「今の話を聞くとねぇ。殺してる相手次第では赦されるのかな、とか思えちゃうのよね」


ベルタも当然、犯人確保は考えていた。

しかし実際に自分が襲われた訳では無く、犯行現場も見ていない。

つまりは冤罪の可能性を否定出来ない。

本当に殺していたとしても、以前拘束した領主のような相手なら、違法に殺したとしても赦さざるを得ない。

官憲も司法権限も侵食したような相手であれば、違法でも自分で手を下すしか無いのだから。


アルフ「あぁ。無差別とは言って無かったな。まぁ狙われなきゃ気にしなくても良いんじゃね」

ベルタ「そうね。法治国家なんだし。まずは官憲に任せましょう」


宿くらいは開いてるのかなと町を見渡す。

流石に人通りも少なく・・・無い。

誰も連続殺人犯など警戒していないかのように、子供たちも無邪気に駆け回っている。

おまけに、あちこちでイベントが行われているようで賑やかだ。


走り回っている警備兵は確かに多いのだが、にこやかに子供を連れて走っている。

連続殺人犯を油断させる策なのだろうか。


ベルタ「幾らなんでも無警戒過ぎると思うんだけど」

アルフ「楽しそうに騒いでいれば、連続殺人犯も気になって出てくると思ったんじゃねぇの」

ベルタ「御伽噺じゃあるまいし。でも本当に、そんな雰囲気よね」


アルフは事件よりもイベントの方が気になる。

パン食い競争のような、食べ物絡みのイベントがあるかもしれない。


アルフ「お。そこで腕相撲大会をやってるぞ。ベルタなら楽勝じゃね」

ベルタ「かよわい乙女に何を言ってるのよ」

アルフ「・・・力なら村でも一番だっただろ。腕相撲なら勝てるんじゃね」

ベルタ「あたしはガルマさんの加護を受けてるからねぇ。勝ててもインチキよ」

アルフ「あぁ。競技は公平性に欠けるか。まぁムリに参加する事もねぇか」


よそ見しながら歩き出したアルフに、男が近づく。

バチッ

「うわ。なんだ。離せ」

盗賊避けの罠アイテムが、スリを捕獲したようだ。

両手両足を拘束されて転がっている。

気付いた警備兵が向ってくる。


アルフ「こいつ罠アイテムを知らないのか? 捕まる奴は初めて見たぜ。どうどうと犯行とかアホじゃねぇの」

ベルタ「あたし達も村に居た頃は知らなかったでしょ。町から出ない人なら知らないのかも」

警備兵「犯罪者の捕縛に御協力ありがとうございます」

ベルタ「この町では、罠アイテムは普及していないのですか?」

警備兵「平穏な町なので。無防備な人が多いですね。たまに、こういう輩が現れる程度ですか」

ベルタ「え。連続殺人犯を捜索中ではないのですか」

警備兵「あぁ。そちらはもうすぐ捕まってしまいそうですね。ははは。ではスリの身柄はお預かりします」


警備兵はスリを立たせると、詰問しながら連行していった。


止める機会を失って立ち尽くすベルタ。

詰問は警備兵にしたいと思っていたのだ。

だが職務を邪魔する訳にはいかない。


ベルタ「捕まってしまいそう? 何よそれ。やっぱりおかしいわよ」

アルフ「捕まると困るって訳でも無さそうだったな。笑ってたし。言ってる事と態度が合ってねぇな」

ベルタ「官憲の腐敗にしては皆明るいし。町ごと能天気なの?」


ズガーン

銃声が響いた。

警備兵ですら銃は所持していない筈だ。


ベルタ「出たわね」

アルフ「捕まりそうって言ってたし。最後の抵抗かな」

ベルタ「銃なんて、どうやって入手したのかしら。町の人が心配よね。一応見に行ってみましょう」


ベルタの後を追うアルフは思う。

野次馬根性で事件現場を見に行きたがる者は居る。

だがベルタが行く理由は違う。

性格でも体力面でも警備兵が向いてるのでは無いかと。


アルフ「お前も将来は、警備兵が向いてるんじゃね」

ベルタ「あたしは農業をやる気だったけど。今は進化を目指さないとねぇ」


銃声がした辺りに到着する。

広場になっていた。

人は多いが特に慌てた様子は無い。


アルフ「この辺りだったか」

ベルタ「人だかりが出来てるわね・・・もう説明の看板が立ってるわ」


看板には、こう書かれていた。

 軍隊による 射撃実演コーナー

 ゴム弾を使っていますが それでも危険なので 柵内には入らないで下さい


アルフ「事件じゃなかったのか」

ベルタ「何なのよこの町は! 人騒がせにも程があるでしょ」


ベルタは切れかけと言うより切れている。

連続殺人犯が野放し状態なのに紛らわし過ぎる。

これでは犯行に銃が使われても、銃声を気にしない人が多いだろう。


アルフ「町おこしの興行かね。町中でイベントやってるよな」

ベルタ「こういう時は中断するもんでしょ。普段が平穏過ぎてボケちゃってるのかしら」

アルフ「軍隊まで来てるせいかな? 安心しているのかもな。嫌なら町を出るか?」

ベルタ「大丈夫そうならベッドで寝たいけどね。さっさと宿をとっちゃいますか」


ベルタは適当に宿を決めて、早目の夕食を注文する。

食堂にはまだ他の客は居ない。

食事を取っていると外からアナウンスが聞こえた。


「連続殺人犯による25人目の被害者が出てしまいました。見つけたら無理せずに警備兵に任せましょう」


ベルタ「やっぱり危険なんじゃない。何よこの呑気な放送は。25人よもう」


席を立って怒鳴るベルタ。

給仕に来た宿の主は、笑いながら答える。


宿の主「ははは。気になりますか。まぁ明日には捕まるでしょうよ」

ベルタ「笑い事じゃないですよ」

宿の主「うちの子もやられちゃいましたけどね。自分で捕まえようとしちゃあ仕方ないですね」


笑顔のまま、仕方無さそうに両手を挙げる宿の主。

子を奪われた親の態度には見えない。


愕然としつつも、残った人々の安全を考えるベルタ。

今こうしている間にも、連続殺人犯が襲って来るかも知れないのだ。


ベルタ「そんな。皆さん避難するべきですよ」

宿の主「あぁ。こっちには来ませんよ。警備兵だらけですからね。逃げながら一人でも多くを狙うでしょう」


宿の主は上機嫌のまま受付に戻っていった。


呆然とするベルタ。

やはりこの町はおかしい。

子を殺されて平然としている宿の主の態度は、人としてありえない。

この町の人々は、悲しみや恐怖の感情を奪われているかのようだ。

だがそんな事が可能なのだろうか。


ベルタは葛藤する。

マアマに頼んで、連続殺人犯を捕らえてしまうべきだろうか。

だがそれは驕りでは無いのか、との思いに捉われる。

何故ならガルマが犯行を問題視していないのだ。

この状況で、自分の判断で動いては、麒麟の時の二の舞になりかねない。


緊迫感は無いが、警備兵は捜索に動いている。

ならばやはり任せておくべきなのか。


ベルタ「何か頭がおかしくなりそうだわ。皆おかしいわよ。感情を壊すような魔法でもかけられてるのかしら」

アルフ「それなら俺達にも影響あるんじゃね」

ベルタ「うーん。あたし達が来る前に、町の人達にかけたとか」

アルフ「旅で寄ったぽい人も次々に来てるけど。皆平然としてるしなぁ」

ベルタ「あぁもう。分からないわね。お風呂でさっぱりして、さっさと寝ましょ」


食事を終えるとベルタは風呂に入った。


寝る前に着替えようとしたアルフは、ポケットにねじ込んだ紙に気付く。

町へ入るときに警備兵から貰った、連続殺人犯の人相書きが付いた紙だ。

捨てる前に一応目を通して呆れる。


アルフ「何だよ。そういう事かよ。ベルタ・・・は風呂か。明日でいいや」


アルフは一人で呟くと、紙を捨てずに再びポケットにねじ込んで寝床に就いた。


そして何事も無く翌朝を迎える。


アルフは寝ぼけている。


ベルタは事件に関わらない事を決めていた。

協力はしたいが、その結果がより悲惨な事になる可能性を否定しきれない。

他に手が無いならともかく、警備兵が対応している。


ベルタ「あたし達の出る幕じゃ無さそうだし。さっさと町を出ちゃいますか」


外からアナウンスが聞こえる。


「間もなく大食い大会のエントリーを締め切ります。参加される方はお早くお越し下さい」


アナウンスを耳にして、完全に目を覚ますアルフ。


アルフ「うぉ。大食い大会だって。あれならガルマさんの加護も関係無い。参加しても良いんじゃね」

ベルタ「毒でも盛られていたらどうするのよ」

アルフ「そんなのは何処でもありえるだろ。気にしてたら何も食えないぜ」

ベルタ「確率の問題だと思うけどねぇ。まだ捜索中の連続」


ベルタの言葉を遮ってアルフは続ける。


アルフ「そもそも毒対策なら参加した方が良いんじゃね。他の参加者の分もティアラで浄化されるだろ」

ベルタ「あぁそうか。毒はもう心配しなくても良かったんだ。そういう事なら参加してみますか」


早朝からの大食い大会にも関わらず参加者は多かった。

武装した人が多い事が、少しだけ気にかかる。


参加者の内、子供はアルフとベルタだけだ。

10分の間に食べた肉の量を競う。

一皿200gだ。


他の参加者には、子供であるアルフとベルタは眼中に無いようだ。

一方でアルフは、ベルタにのみ対抗心を燃やしている。


競技開始と同時に、参加者は飲物であるかのように肉を飲み込んでいく。

ベルタは異物を確認するように噛んでから飲み込む。


それでも勝ったのはベルタだった。

他の参加者が満腹になってペースを落とす中、最後までペースを維持しての逆転勝利だ。

58皿目で時間切れになって、残りの肉をまだ物欲しそう見つめていた。


アルフ「くそ。やっぱベルタにだけは勝てねぇ」

ベルタ「失礼ね。人を大食らいみたいに言わないでよ」

アルフ「大食らい大会で優勝しておいて言うなよ」

ベルタ「変な物が入って無いかを確認するのに夢中だったのよ。だからあんまり食べた気はしないわね」

アルフ「賞品は何だったんだ」


ベルタが抱えてきた箱の中身が気になるアルフ。

アルフでは持てるのか怪しそうな大きさと重量感だ。

高級感は全く無いが保存性能は良さそうだ。


ベルタ「高性能薬品セット? 医薬品かしら」

アルフ「肉じゃなかったか。賞品は軍隊のお下がりから提供されています、だってよ」

ベルタ「じゃぁ、この町のイベントって軍隊が主催だったのかな。軍隊の薬品て危険じゃないの」

アルフ「どれどれ。一粒で三日は眠気がきません。一本で三日は痛みを感じません。一口で三日は排泄」


ベルタの抱える箱から次々と薬を取り出し、読めるラベルだけを読み上げるアルフ。

まともな薬もあるのだろうが、明らかに怪しい薬だらけである。


ベルタ「もういいわよ! そんな不健康な薬品要らないわよ」

アルフ「こんな物が必要になるような仕事なんだろうな。軍隊は」

ベルタ「苦労は察するけど。あたしが貰ってもねぇ」

アルフ「売り飛ばすか?」

ベルタ「次の町までは一応持っていくかな。貰ってすぐに売るんじゃ、主催者に失礼な気がするし」

アルフ「ほい。お下がりだから気にしなくても良いとは思うけど。ベルタなら重いって程でも無いか」


出した薬を片付けるアルフ。


「要らないなら譲ってくれないかな?」


背の高い戦士風の女性が、ベルタの目線まで身をかがめて話しかけてきた。


ベルタ「え? どちら様ですか」

冒険者「あちこちを旅してる冒険者なんだけどね。迷宮とかで迷った時の保険に欲しいんだ」

ベルタ「なるほど。不健康な薬でも、いざという時には役に立つって事か」

冒険者「うちのメンツも賞品目当てに参加してたんだけどね」


冒険者は振り返って、仲間らしき連中を見やる。

如何にも限界まで食べた、という感じで座ったり寝たりしている。


冒険者「全然歯が立たなかったよ。あんた凄いね」

ベルタ「いえそんな。ではどうぞ。必要とする方が持って行かれた方が良いと思います」


薬の価値は理解したが、ガルマとマアマが同行している以上は使う機会が無い。

対して冒険者にとっては、命を左右するほどに重要な品だ。

恵みの欲望が強いベルタにとって、譲る事に否やは無い。


冒険者「ありがたい。お代は幾らかな」

ベルタ「結構ですよ。どうせ要らなかった物ですし」


対価の支払いを断られて、少し驚いた様子の冒険者。

ベルタの装備を軽く観察して頭を抱える。


冒険者「・・・そう言えば何か凄そうな装備してるね。お金には困ってないか。う~ん」

ベルタ「本当に気にしないで下さい」


ベルタの気遣いに笑顔で応じながら、何か閃く冒険者。


冒険者「まぁまぁ。喜ばせてくれた人には喜んで欲しいじゃない。あんた達も旅人だよね」

ベルタ「はい」

冒険者「ならこれは使えるんじゃないかな」


冒険者は懐から取り出した小物にサインをしてベルタに渡す。


ベルタ「通行証?」

冒険者「あたし達が通った国なら、自由に行き来出来るようになる筈さ。あたしのサインが保証人て訳」

ベルタ「え? 冒険者の方に、そんな権限があるのですか」

冒険者「少しは名も売れてるんでね。薬の礼には足りないかもしんないけど、役には立つと思うぜ」

ベルタ「凄く助かります。これから、どこの国へ行くかも分からない状態だったので」

冒険者「あはは。アテの無い旅かい。そういうのもいいね。んじゃ気分良く交渉成立って事で」

ベルタ「はい。ありがとうございます。感謝します」

冒険者「お互い様さ。またどこかで会えたらいいな」


冒険者は仲間らしき者達と合流して去っていった。



アルフ「何が役に立つか分かんねぇもんだな」

ベルタ「本当よねぇ。子供じゃ身分証なんて発行してもらえないし。他所の国から呼ばれたら終わりだったわ」

アルフ「そん時はガルマさんとマアマに頼るしかねぇと思ってたぜ」

ベルタ「それでも通れはするだろうけど。不正入国者扱いになっちゃうわよ。宿にも泊まれないなんて嫌よ」


国によって法は異なるが、不正入国となれば何処の国でも指名手配される事は間違い無いだろう。

ばれないように入り込む事は出来ようが、町では服装や言葉遣いや仕草で怪しまれる。

その時に通行証を提示出来なければ不正入国確定である。

ましてベルタは、これ以上は無いくらいに目立つ存在だ。

官憲相手に立ち回るような事になっては旅どころでは無くなってしまう。


アルフ「なら王様に頼むとか」

ベルタ「頼めば作ってはくれたでしょうけどね。村娘が王様に頼む事じゃないでしょ」

アルフ「ベルタって、そういう事気にするよな。あの王様なら、むしろ喜んで引き受けそうだけど」

ベルタ「あんたが気にしなさ過ぎなのよ。王様が国民一人一人の相手してたら幾ら時間あっても足りないわよ」

アルフ「なるほど。確かに忙しそうではあったな」

ベルタ「それに国交の問題があるからね。王様の保証だと問題も起き易いでしょうね」

アルフ「あぁ。仲の悪い国もあるか。王様の知り合いだとばれたら狙われる可能性も増えるな」


今の人の世界に戦争は無い。

だが武力行使をしていないというだけで、全ての国が仲良しな訳では無い。

この国は様々な面で恵まれており、他国から妬まれている事も多かった。


ベルタ「冒険者なら、各国の問題を解決して周っているでしょうから、好意的に通して貰えるんじゃないかな」

アルフ「あの姉ちゃんならそうだろな」

ベルタ「冒険者の人って初めて見たけど。格好良いわね。強そうだし。優しいし」

アルフ「冒険者がって言うよりは、あの姉ちゃんが良い人だったんじゃね」

ベルタ「それもそっか」


冒険者とは何でも屋だ。

違法行為を除けば殆ど何でも引き受ける。

何でも引き受けるとは言え、相応の対価は必要だ。

対価が高い故、冒険が必要になるような依頼しか来ない。

それで冒険者と呼ばれるようになった、という話もある。

趣味で冒険をしている人の事では無いのだ。


国を渡るような冒険者は、地方や国家レベルの難題を引き受ける実力者だ。

名が売れると世界中から声が掛かるようになり、多くの強い権限も与えられるようになる。


アルフ「んじゃ折角の通行証をムダにしない為にも出発するか」

ベルタ「結局、連続殺人犯には遭遇しなかったわね。解決すると良いんだけど」

アルフ「あぁ。それ、これじゃね」

ベルタ「・・・ドキドキ体験イベント?」


町に入った時に、警備兵からアルフに渡された紙には、こう書かれていた。

 警備兵のお兄さんに協力して、連続殺人犯を捕まえよう!

 君の役割は、連続殺人犯を見つけたら警備兵のお兄さんに報せる事だ

 カラーボールで赤い塗料を着けられたら君は死体だ

 当てられないように逃げながら、警備兵のお兄さんを呼んで捕まえて貰おう!


アルフ「いざ犯罪者に遭遇した時に、身が竦んだり挑んだりしないようにって、訓練も兼ねてるみたいだな」

ベルタ「あんた。何で黙ってたのよ」

アルフ「寝る前に捨てようとして気づいたんだけどさ。寝たら忘れてたわ」

ベルタ「勿体無い事したわ。大食い大会の肉の味、全然楽しめなかったわよ」

アルフ「悪かったけどさ。誰も殺されて無かったんだから素直に喜ぼうぜ」

ベルタ「仕方ないわね。お昼はマアマさんにお願いして口直ししましょう」

マアマ「おっけー」

アルフ「まだ食うのかよ」

ベルタ「お昼って言ったでしょ」

アルフ「あれだけ食ったら普通・・・ベルタならあのくらいは普通か」


町を後に、アルフ一行は旅を再開した。


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