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異世界転移なんてありふれている  作者: たかしゅー
ラントヴァッサ王国
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トリフト領にて4

 ギルドで勧められた宿、その名は『ベジタブル』だった。一階は食堂で、二階が宿になっている。

 入り口には『食堂ただいま準備中』という札が掛かっている。

 冒険者と言えば肉食系というイメージであり、ユキトに確認したところ、事実とのこと。そのため繁盛してなさそうなイメージだ。

 中に入ると、この宿の主人だろう40代くらいの男がカウンターの置くで座り、新聞の様なものを読んでいた。


「飯なら準備中だ、日が沈む頃にまた来てくれ」


 俺たちが入ってきた事に気づいた主人が、新聞を畳みながら声をかけてきた。が、全然飯の準備をしている様に見えない、不思議だ。

 ツッコミを入れたい所だが、指示されていない場合は主人が対応するらしいのでユキトに任せて黙っておこう。


「いや、宿をお願いしたい。冒険者ギルドで紹介されたのだが」


「別に紹介なんてしなくていいって言ってんだがなあ。まあいい、そっちの兄ちゃんは奴隷だろ、1人部屋は1泊銀貨3枚と銅貨5枚、夜朝の飯込みだ。んで奴隷は銅貨5枚で主人と同じ部屋、飯は無し。代金は銀貨4枚先払いだ」


「いや、二人部屋で頼もう」


「あいよ、じゃあ銀貨6枚だ。体を拭く湯が欲しかったらここに来てくれ、桶1杯銅貨1枚だ」


「わかった」


 ユキトが銀貨6枚を払い、部屋の鍵を受けとる。部屋は階段を上がって一番手前の部屋、8号室だそうだ。

 鍵を受け取ったユキトは主人に礼を行って階段を上がっていき、俺はそれについて行った。


「飯は日が沈む少し前からだ、沈んでからだと混むから早めに降りてこいよ」


 ユキトについて行く途中、そんな声が聞こえたが、本当に混むのか疑問だ。


---


 ベッドと小さなテーブル、テーブルの上にはランタンの様なもの、100パーセント木でできた窓という簡素な部屋に入り、お互いベッドに腰かけた。

 きちんと掃除されているらしく、埃っぽさは無い。ハウスダストに弱い俺に優しい宿のようだ。


「さて、今後の予定について少し話そうか。明日は達成できそうな依頼を受けて街を出て、依頼と同時にマサキの魔術の操作能力や威力を見ようと思う。場合によっては2日か3日これを続ける」


「了解、その後は?」


「その後はこの国を適当に回りながら王都を目指す。適当にと言っても他の一等爵の直轄領を回って王都入りするだけだが」


「王都に直行しないのか?」


「あぁ、別に直行でも良いのだが、ルーデンドルフ直轄領には行っておきたいのでな。なのでこの街を出たら、まずはルーデンドルフ直轄領に行く。他の領地はついでだが、せっかくの自由な冒険者だ、そう急ぐこともない」


「りょーかい」


 ユキトに今後の予定以外、この待ちのことや街周辺のこと、ルーデンドルフのことについて、話を聞いた。

 特に記憶に残ったのはルーデンドルフについてだ。

 ルーデンドルフ領にはラントヴァッサには珍しく、上級・中級・下級のダンジョンが複数存在するらしい。

 ダンジョンとは、日本にいた頃の認識通りだった。下へと階層が広がっており、モンスターを産み出し、希にお宝を排出させ、死体を養分に巨大化していく、それがダンジョンとのこと。

 有名なダンジョンを数多く保有している国もあるが、普通は1国にそう何個もあるものでは無いらしい。ラントヴァッサにはダンジョンが6個あり、そのうちの4つがルーデンドルフにあり、トリフトには無いと、ユキトが少し悔しがっていた。

 そういった話を聞いているうちにうとうとしてしまい、話を切り上げ、昼寝タイムをくれる辺り、ユキトは本当に良い主人だ。

 寝る直前、そういや昼飯食ってねえなと思ったが、夜に食えばいいと寝てしまった。


---


「目が覚めたか」


 昼寝から起きたら完全に夜だった。おそらく魔術具だろうランタンに部屋が照らされていた。

 ユキトも少し眠っていたらしいが、身だしなみはバッチリだった。一方の俺は服にシワが。完全にミスだ、脱いで寝るべきだったと少し落ち込んだ。すぐに飯に行くかと言われて、回復したが。

 そして回復した気持ちはどん底に突き落とされた。

 階段を降りて食堂部分に行くと席が人に埋め尽くされていた。


「そんな馬鹿な」


 俺かユキトか。たぶん俺だと思うが、ボソッとそんな言葉を漏らしてしまった。

 そういえば2階に上がるとき、宿の主人が混むから日が沈む少し前に降りてこいと言われていたが、まさか席が全く無いほど混むとは思っていなかった。

 というかユキトは言った、冒険者は肉食だと。


「サラちゃん野菜炒め3皿とエール3つ追加ーー!」


「サラちゃんこっちも野菜炒め2皿と豆2皿、あとエール4つ追加ーー!」


「サラちゃん、今日のスープの具は何!? とりあえず野菜炒め6皿とスープ4つとエール4つ!」


「皆さん一気に言わないでくださーーーい! 順番に聞きに行きますから!」


「「「おうッ!!!」」」


 ものすごく喧しい食堂に、それ以上の野太い返事が飛んでいる。

 誰だ冒険者が肉食って言ったやつ、誰だ冒険者は野菜食わねえって言ったやつ。

 バリッバリ草食じゃねーか冒険者…

少しずつ頑張るので生暖かく見守ってください。

次回も日曜に更新できるはず…

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