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プロローグ3

なかなかテンポ良く書けないな、と自身の至らなさを痛感。

ちょっとずつ頑張っていきたいと思います。

 朝食までにあまり時間が無かった。頭の中を整理したものの、いろいろなものがはみ出たり、飛び出していったりしている。友達からは能天気やマイペース、といった評価をもらっているが自分でもその通りだと思う。

 正直なところ、あーだこーだと百回言われるより一回自分で見たり、感じたりしないとすぐに頭から抜けるのだ。考えると回りを気にせず思考にぬめり込むくせに、翌日にはすっかり忘れている、なんてこともある。一方、自分で見たり、感じたりしたことはなかなか忘れない。

 人間はそういう風にできているのだ。持論だが。

 そしてここは異世界で、実際に魔法も使っている。奴隷スタートなのはもちろんショックだが、男色趣味の変態紳士の相手をさせられるわけではない。冒険者として活躍できれば奴隷からも抜け出せられる。

 俺を呼びにきた執事さんに連れられて食堂のような場所に着いた時には、だいぶ気分も持ち直してきていた。


---


 食堂のような場所に入り勧められた丸テーブルの席に着く。向かいにはユキトがいる。

 食堂というよりかはカフェか。二人用の小さな丸テーブルとイスが十数セットに長方形の大きいテーブルが三つ。内装は派手すぎず、装飾品は風景画くらいしかなかった。部屋の奥の扉はおそらくキッチンに繋がっているのだろう。


「丸一日眠っていたのだ腹も空いているだろう」


「そうだな。そもそも俺、丸一日眠っていたのか。数十分気を失ってるだけだと思ってた」


 席に着き、ユキトと一言交わすと朝食が運ばれてきた。

 貴族様の、それも王様の次に偉い貴族様の朝食にわくわくしていたが、実際に見るとこんなものかと思ってしまった。出てきたのは葉野菜とタレのかかった肉が盛られた皿とスープが入った器だった。中央にはパンとリンゴが入った籠が置かれている。

 豪華な朝食を期待していた自分に対して少し驚く。奴隷になってしまったショックが一切無くなってしまった訳ではないと思いたい。


「はぁ…マサキはもう少し思ったことを顔に出さないようにした方がいい。豪華な朝食を期待していたのに残念だ、という顔をしているぞ。とりあえず食べてみろ」


 言われるままにパン、野菜、肉、スープととりあえず一口ずつ食べていく。そして気づいたら目の前の食べ物はリンゴを残してきれいに消えてなくなっていた。そう思えるくらいに、夢中になって一気に食べてしまった。


「さて、あまり豪華な朝食ではなかったが味はどうだっただろうか」


「美味すぎて何も言えねぇ!」


「そうか、それはよかった。ちなみにこの肉はワイバーンの肉だ。貴族か冒険者の上位の者でなければなかなか口にできる機会が無い肉だ。今後、自分たちの実力でこの肉を食べたいものだな」


 思わず首を激しく縦に振る。

 この美味い飯を食える冒険者になる。奴隷から解放という目標と同じくらい高い優先度の目標ができた瞬間だった。


---


 俺は食い終わったが、ユキトの朝食はまだ半分ほど残っている。籠に残っているリンゴを食べながらユキトを待つ。そのリンゴも日本で食べたことのあるそれではなく、とてもみずみずしくて甘みが強かった。


「なあユキト、スゲー今更だけどさ。本当にこれでいいのか?」


「これでいいとは?」


「言葉使いとか、呼び捨てにしちゃってる事だけど」


「『言葉使いはそのままでいい』と言ったが、正直ここまで砕けた言葉使いになるとは思ってはいなかった。が、べつにそれならそれで構わない。どうせ今日から冒険者だ。いちいちそんなことに目くじらを立てていては疲れてしまう」


 懸念事項の一つが解消され、ますますリンゴを食べるスピードが上がる。

 日本の高校生にきちんとした敬語が使えるわけが無い。無論、すべての高校生が敬語を使えないといっている訳ではないが、そもそも敬語を使う機会が無いのだ。いきなり敬語で話せといわれても話せるわけが無い。


「さて、待たせたな」


 俺が黙々とリンゴを食っている間にユキトも朝食を食べ終えたようだ。ユキトの分のリンゴを置いておかず、食べきったことに罪悪感が生じる。少しだけ。

 その罪悪感からか、ユキトが少し起こっているように感じる。食べ物の恨みは万国共通で怖い。きっと異世界でも一緒だろう。


「べつにリンゴを残しておかなかったことは怒っていないぞ」


 ふむ、本当に顔に思ったことが書いてあるのか? 表情から読み取っているにしては的確過ぎないだろうか。


「怒ってないのか、何となく目つきか鋭くなったような気がしてさ」


「そうだな、やはり緊張はしているのだ。これで当分の間はこの家出食事しないと思うとな」


 その言葉に執事さんが悲しそうな、寂しそうな顔をしているのが目に入った。


「さっき言ってたけど今日、冒険者登録に行って当分の間はこの家に戻ってこないってことか?」


「そうだ。食事も終わったことだ、さっそく冒険者登録に行くとしよう」


 そう言ったユキトの表情は執事さんとは逆で、少し緊張しつつもワクワクしている少年のような表情をしていた。

 

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