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女神の娯楽に巻き込まれて  作者: 下記の種
2章→無人島編
9/16

9話/無人島生活 ⒍

 無人島生活6日目、海の家に新しい住人が増えた。


「…………あれ、いない」


 ベットから起き上がったリミアは部屋の中を見渡すが、他に人影は見当たらず、仕方が無いと布団から体を出し、予備で作ったサンダルに足を通す。


「もしかして、フードコート?」


 部屋にいない人物が行きそうな所を考えて辿り着いたのは海の家のフードコート。そして、行ってみると確かに彼女はフードコートにある椅子に座り、糸を布に通していた。


 裁縫だろうか?


「セラ、何をしているの?」


「あ、リミア様。おはようございます」


「え、ああ、おはよう」


 セラはリミアの事を見るなり作業している手を止め席を立ち、頭を下げて挨拶をした。リミアも戸惑いつつ挨拶を返す。


「それで、セラは何を縫っていたの?」


「これですか?ふふ、リミア様の為に簡単なものですが服を作ってみました。どうですか?」


 そう言ってセラは両の手でその布を広げた。セラが縫っていたのは白く薄い生地で作られたワンピースだ。勿論、生地や糸、針に関してはリミアが作ったものだが。


「どうって言われても。何でそんなの作ったの?もしかして、この為に昨日“裁縫”の技能を作って欲しいと言ったのかい?」


 昨晩、セラに頼まれて不思議に思いながら“裁縫”という技能を作ってあげていた。セラはリミアの技能を使えるそうなので、リミアが“裁縫”の技能を覚えるとセラもそれを使えるようになるのだ。そして、それを作った理由は目の前のワンピースに辿り着くだろう。


「これは、リミア様にそのような格好をいつまでもさせるわけにはいきませんので」


「……別に僕は気にしないんだけどなぁ


 リミアの今の格好はローマをイメージした映画で出てきそうな、布を適当に巻いただけの姿だ。それにも少し事情があり、先日まで着ていたメイド服は現在、セラが着用していた。


 昨日、セラが人化したまではいいものを着ているものが何も無かったので、リミアが仕方がなくメイド服を渡したのだ。セラはそれは受け取らないと強情に断っていたのだが、それはリミアも同じで最後にはセラの方が折れて着る事になった。


 ならばと、全裸のリミアに似合う服を自分で作るとリミアに技能の制作を願い、徹夜して作り上げたのだ。


「でも、一晩で作り上げるなんて凄いねセラ」


 セラから受け取った白いワンピースを試着する。サイズは丁度よく、軽く跳ねたり動いたりしても破けない位には丈夫だ。しかも、何かと力も湧いてくる?


 力が湧いてくる?


「ワンピース自体はさほど問題ではありませんでした。しかし、付与魔法でワンピースに付与するのになかなか苦戦しまして、時間はそちらで使ってしまいました」


「え、付与魔法?」


 セラの言葉に首を傾げる、“鑑定”の技能を使ってワンピースを見てみる。すると、それには明らかにオーバーな付与魔法が付けられていた。


白亜のワンピース


製作者︰セラ

防御 ︰10’000

付与 ︰筋力上昇(小)、俊敏上昇(小)、腐敗不可(大)、破壊不可(大)、汚染不可(大)、物理攻撃耐性(中)、魔法攻撃耐性(中)


 ワンピースに付けるレベルのものではない。これ一つで冒険に出られるだろう。一応、セラの着ているメイド服も“鑑定”で見ておく。


神聖メイド服


製作者︰女神アリア

防御 ︰100’000

付与 ︰腐敗不可(女神)、破壊不可(女神)、汚染不可(女神)、物理無効、魔法無効


 こちらに関しては異常だろと突っ込むことすら馬鹿らしくなる。これ一着でドラゴンにでも挑めるのではと能天気な気持ちにすらなってしまうのだから。


「何だろう。もう技能なんて作らずに服だけで生きていけるような気がしてきた」


「ご冗談を。それに、今後も作っていくので楽しみにしていて下さい」


「まだ増えるんだ…………」


 少し呆れつつも楽しみにしておこうと苦笑するリミアだった。






 リミアの専属メイド、セラ・ハーベストについて分かったことが幾つかある。それは、昨日リミアが示腕輪をセラに無理矢理付けさせたことによって分かったことだ。




name/セラ・ハーベスト

種族 /半龍族

職業 /メイド

称号 /メイド長


◆Lv. 004


◆abirithi

筋力―1’600(+500)    

俊敏―1’900(+500)

防御―101’700(+100’500)    

技巧―105(+5)

魔力―5’000’000(+5’000’000)


◆skill

《normal》

・火魔法 Lv.1 ・水魔法 Lv.1

・風魔法 Lv.1 ・土魔法 Lv.1

・氷魔法 Lv.1 ・雷魔法 Lv.1

・光魔法 Lv.1 ・闇魔法 Lv.1

・回復魔法 Lv.1 ・錬金魔法 Lv.1

・空間魔法 Lv.1 ・召喚魔法 Lv.1

・付与魔法 Lv.1 ・重力魔法 Lv.1

・気技 Lv.1   ・解毒 Lv.1

・剣術 Lv.1   ・暗技 Lv.1

・弓術 Lv.1   ・暗歩 Lv.1

・投擲 Lv.1   ・鑑定 Lv.1   

・索敵 Lv.1   ・遮断 Lv.2   



《passive》

・魔力上昇(極大)・筋力上昇(極小)

・俊敏上昇(極小)・防御上昇(極小)

・技巧上昇(極小)・状態耐性(極小) 

・破壊不可(極小)・汚染不可(極小) 

・腐敗不可(極小) ・裁縫

・無詠唱    ・料理

・建築     ・解体



《unique》

・憑依

・以心伝心




 見ての通り、リミアのステータスの半分を見事に受け継いでいた。種族、アビリティ、技能の全てをだ。


 種族は邪龍族ではなく、半龍族となっている。これは、龍族としての半分という事らしい。それは見た目も同じで、リミアならば純粋な金眼なのだが、セラは薄金眼となっている。


 ステータスや技能、レベル感しても全てがリミアの半分で、リミアが成長するとセラも成長することになる。逆も同じで、セラが成長してもリミアも正長する。 そして、“技能創造”で新しく作った技能は同様にセラにも反映される。しかし、固有スキルに関してはそれに及ばないらしいが。

 固有スキル“憑依”と“以心伝心”は元々セラが持っていた技能だったりする。“憑依”とは意識が薄い、または無い状態の対象に乗り移ることが出来る技能。“以心伝心”は口に出さずとも、考えている事が伝わるようになる技能だ。しかし、これはリミア限定となる。


 これがセラについて分かったことだ。

 他に、説明書にあった情報のその先を詳しく伝えてくれたりする。ちなみに、食事や睡眠を必要とはしないらしい。


 まだまだ知りたいことは沢山あるのだが、聞いて答えてもらうには限度があった。という事で、別の手段をとろうと考えた。


「今日は狩りにでも行こうかな」


 狩りの場で、他にも分かりそうなことを知っていこうという浅知恵だ。しかし、これはセラが拒否をすれば無意味に帰すのだが。


「はい、では支度をしてきます」


 セラにとってリミアの命令(ていあん)を聞かないことは絶対にありえないのだ。そこに嬉しさと若干の気まずさを覚え、リミアも狩りの準備を整える。


「リミア様、支度が整いました」


 セラが支度をすると言い残して1分も経たないうちに帰ってきてしまった。実に早い、リミアはまだなんの準備も出来ていない。


「は、早いね」


「ええ、私が持っていくものなどあまりありませんから」


 言われてみると確かにそうだ。セラが持っているものは昼食用だろうと考えられるバケットのみだ。他にも何も持たず、並の鎧より硬いメイド服を着ているだけだ。それだけでも完全武装と言えなくもないが、リミアにとって心許なかった。


「セラ、これ使って」


 そう言って手渡したのはアリアから受け取った鉄製の細剣だ。とても軽く、それでいて切れ味が凄い。試し斬りに岩を斬ってみても刃こぼれ一つしなかった一品である。試しに鑑定をしてみればその正体も分かったりする。



女神産の細剣


製作者︰女神アリア

威力 ︰SS

付与 ︰破壊不可(女神)、腐敗不可(女神)

    対悪魔上昇、対天使上昇、対魔物上昇


 これだけで、メイド服並に馬鹿げているのよく分かった。


 威力というのは、武器につくランクのようなもので。一般の鉄剣ならばCがいい所だろう。そして、伝説級といわれる武器がSだとすれば、SSはまさに神界級となるだろう。


 そんな代物を受け取ったセラは戸惑い、困ったような顔をしてリミアに返そうとした。


「困りますリミア様、私にこのような上物を。それに、これを無くしてはリミア様が持つ武器がありません」


 それについては、リミアに考えがある。リミアは後ろに隠していたものをセラに見えるように出す。


「僕はこれを使うのさ」


「杖でございましょうか?」


「そう、僕が使うのは魔術杖だよ。昨日のうちに作っていたんだ」


 僕が手に持ったのは魔術杖という魔術師専用の武器だ。これを使うことによって魔法の威力が上がる他、命中率や制御が格段に上がるのだという。以前、説明処を読んでいた際にこの事を見つけ前々から作ろうと考えていたのだ。


 しかし、これは完成品ではない。


「失礼ながら申し上げさせていただきます。その魔術杖には魔石が埋め込まれていません。その場合、魔術杖というものの恩恵が格段に下がってしまいます」


「うん、それは知っているんだけどさ」


 一般の魔術杖には魔石を埋め込むようになっている。しかし、リミアは魔石というものを一欠片も持ってなどいなかった。理由は単純、魔物に一度も出会ってなどいなかったからだ。


 魔石は魔物の心臓部である為、魔力が溜まりやすい物となっていた。本来、魔道具などは魔力を直接注入するのではなく、電池式に魔石に魔力を込めて無くなるまで使うものだったのだ。しかし、魔石を持たないリミアはそれを自身が持つ魔力の膨大さで補っていた。


 この魔術杖も少しくらい魔法の威力が上がったり、扱いやすくなったらいいなという小さな気持ちで作ったものだった。


「僕はこれでいいんだよ。それに、後々魔石も手に入るでしょ。その時にはまた作ればいいさ」


「リミア様がそうご決断なさるのでしたら私が言えることは何もありません。無為なご意見失礼致しました」


 セラがその場で頭を下げる。


「いいよ、そんな事しなくても。セラは僕の身を案じてくれたんだ、それを責めるなんて女神(あくとう)がする事だよ。ほら、頭を上げて狩りに行こう」


「はい、リミア様」


 リミアの準備が整った後に、2人は狩りをしに森に入った。







「索敵は任せたよ」


「はい、畏まりました」


 リミアは森に入って早々にセラに獲物を捉える索敵を任せていた。理由は実際、リミアが索敵に向いていなかったからだ。索敵とは普通の人間でも使用することが出来るのだが、その精度はレベルと集中力によるところも大きかったりする。リミアはその集中力が足りず、獲物を捉えても気づくのに遅れたりすることがたまにあったのだ。

 そこで登場したのがセラだ。セラは元々が技能であり、人間ではない。更にでいえば休みなく集中力が続いてしまう体質なのである。従って向いてる者に向いたものを与えた迄だ。


 決して楽をしようと考えていた訳では無い。そう、決して。


(リミア様、獲物を捉えました。東東南の方向に6メートルです)


 早速見つけたのか、セラは“以心伝心”でリミアに目標の場所を詳しく伝える。リミアはそれを聞き、教えて貰った場所に振り向く。そこには金猪が一頭、森の道草を食べていた。


 こちらには気づいてはいない。


(セラ、最初に僕が足止めをするから、そのうちに首を落としてくれ)


(承りました)


 僕はゆっくりと金猪の死角となる場所に移動し、杖を構えた。

 

 使う魔法は先日寝る前に思いついた重力魔法“重圧帯”である。これは一つの点を中心とした半径1メートル半の範囲の重力を底上げする魔法だ。範囲は縦に伸びる直方体ではなく、球体として広げるため魔力の消費も少ない。これはセラにも影響が出る魔法なので、予めセラには別の軽減魔法を掛けておいた。


(食らえ、“重圧帯(ヘビースペース)”)


 魔法は発動し、金猪を中心とした半径2メートルの全てが見えない圧力に抑えられるように潰れていく。あくまで足止めなので、金猪が動けない程度の重力なのだが、それでも辛いようで息が相当上がっていた。


「───!」


 魔法の発動と同時に走り出したセラは、金猪との距離を詰めていき、その差を後3メートルの距離まで来ていた。が、そこで問題が起きる。


「セラ!離れろ!」


 リミアが魔力操作を誤り、重力を上げてしまった。正確に表すのなら、金猪が肉片を残さず潰れる程の重力帯がそこには出来ていた。


 地面は罅割れ、それがリミアの足元まで広がっていく。異常事態にいち早く気づいたリミアはセラに後退の命令を出し、セラは疑いもせずそれに従った。


 しかし、時既に遅かった。


 地面の罅は硝子のように広がっていき、重力帯があった場所を中心に大穴が開いた。


 陥没。


「セラ!」


「リミア様、お手を!」


 崩れいく地面に足を留めることが叶わず、崩落に2人は巻き込まれていく。落下する2人は互いに手を伸ばすが届かない。しかし、明らかに異常事態だ。たかが魔法の一つでここまでの大穴が出来るはずがない。その答えはしたに視線を移すことで理解することが出来た。下は奈落となっていた。それは決して魔法で作り出されるものではなく、元々あった大穴に落ちてしまっていた、それが正しい答えだった。


「リミア様、縄を投げてください!」


「あ、ああ。“無限収納(ポケット)”」


 落下が続く中、セラの咄嗟の声にリミアは思考を捨て、素早くそれに従う。“無限収納”から丈夫な縄を取り出しそれをセラに向かって思い切り投げた。


 セラはそれを掴み自分の場所へと引きつけるように縄を引っ張り、引き付けられたリミアを優しく抱きとめた。


「“転移”、“転移”、“転移”!」


 リミアを抱きとめたセラは、迫る地面に目をつけず空間魔法の転移を連続で使用した。転移先は同じ空中だ。同じ場所に連続で転移することによって勢いを殺し、落下によるダメージを防ぐためだ。直接、地上の方へと転移すれば良い話なのだが、セラにはそれが出来なかった。

単純にレベルが足りない。


「リミア様、衝撃に───」


 セラの忠告は最後まで続かず、体を貫く衝撃が2人を襲った。しかし、リミアはセラに抱き締められていた為にダメージはそれ程なく、女神の作ったチート級のメイド服を着ていたセラは無傷とはいかなかったものの、掠り傷ですんだ。


「だ、いじょうぶか、セラ」


「なんとか、しかしここは」


 2人は周りを、そして頭上を見上げる。

 2人の立つ場所から見上げた地上は、小さな穴となっていた。恐らく相当の深さがある奈落に落ちたようだ。そして、辺りを見渡すと、石でできた建造物が並んでいた。


「ここは何処なんだ?セラ、わかるか?」


「はい、説明書にも記載されております。リミア様ここは魔物の巣窟、迷宮と呼ばれる場所です」


「迷宮?」


 リミアの飛ばされた無人島の地下、そこには魔物が多く存在すると言われた迷宮が存在していた。

誤字脱字や、訂正箇所がありましたら感想にてお願い致します。

感想、評価、追加待ってます。


またまた思いつきの急展開となってしまいました。思いつきは怖いですね、終わりが見えないのですから。

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