8話/無人島生活 ⒌
本日の2本目です。
書いて、上げて、上げてしまったので誤字脱字が多いかもしれません。ごめんなさい。
登録者がまた増えていました……はは、それがもう、心の拠り所……(亡)
《どうかされましたか?リミア様》
状況を上手く飲み込めていないリミアを心配するように頭の中の機械音、セラは声をかけていた。しかし、その声は余計にリミアを混乱させる事態に一役買ってしまっている。
「ちょっと落ち着け、フリーズ、落ち着くんだ僕」
自分を冷静にさせるように目を瞑り、うわ言のように呟いていく。だが、そんな事をしていても状況が好転するわけがない。
「えっと……セラだっけ?」
《はい、私はセラです》
リミアは目視のできない相手に声をかける。間を開けずにセラもそれに答えていた。
「あぁ、あの君は何なんだ?」
何を聞こうか戸惑い、出てきたのは最もな疑問だった。
《最初にお伝えいたしましたが、私はリミア様をお守りして愛して支えちゃうセラです》
「なにか増えてない!?」
《勘違いでしょう》
ご冗談ですよ、と案に行っているような口調なのだが、冗談が苦手な頭の硬いリミアにはそれが伝わっていなかった。
純情なのだ。
「じゃ、じゃあ、君は何で僕の頭の中で喋っているんだい?それにさっきの激痛は」
《一つ目の質問には、私がそういう存在だからと回答いたします。それと激痛に関しては私が生まれた影響です。私という存在を作るために少しリミア様の情報という概念を改造させていただきました》
「か、改造?」
突然の受け入れ難い事実に困惑するリミア。それを気遣うようにセラは言葉を続けていく。
《心配はありません。改造とは言っても情報の操作だけです。実際にリミア様に害が出る訳ではありません》
「いや、痛かったんだけど」
なお食い下がるリミアだが、それも不毛だと薄々感じ始めていた。この事態を解決するのに、そんな事をしている場合ではない。
「それじゃあ、君は一体、“脳内設定”って一体なんなんだ?ついでに“色欲”も」
根本的な疑問と、それに関連しているのではと色欲についても聞いてみることにした。
《失礼ですが、お答えする前にお願いを聞いてもらえないでしょうか?》
「なんだい?」
《説明書を手に取って貰いたいのです》
「説明書を?なんで」
《それが一番の近道だからです》
「…………分かった」
仕方がない、と“無限収納”に仕舞っておいた説明書を取り出す。すると、手に取った説明書は突然に光を放ち、数秒の後にその光は音を立てずに消えていった。
「なんだ?いきなり光ったと思ったら」
《リミア様、説明書を開いてみれば分かるかと》
セラに言われるがままに説明書を一枚、ペラっと捲っみる。が、1ページ目にあった全ての記述が白紙となっていた。次のページも、その次も、ペラペラと前ページを捲って見てみるが、全てが白紙だった。
説明書のそれは、説明書ではなくなっていた。
「これはどういうことだ?」
《それはもう説明書では御座いません。説明書の情報は全てセラが頂いてしまいましたので》
「は?頂いたって」
《ええ、ご馳走様です》
満腹です、と後に続きそうなくらいに満足そうな声が頭の中に響いた。
つまり、説明書の中にあった全ての記述が、情報がセラに吸収されてしまったようだ。だが、リミアはそこで思う、何故?と。
《先程のリミア様の質問にお答えしましょう。私が“脳内設定”から生み出されたのはもうご存知かと思われますが、そもそも“脳内設定”と“色欲”の二つの固有スキルは女神アリアが、リミア様に内緒で与えていた技能なのです》
「またアリアのせいなのか…………」
リミアの脳裏に一人の、銀髪の女性が浮かび上がる。もちろん好意でではない、大嫌いだ。
「で、その二つの技能はどんなものなの?」
《まず、“脳内設定”は使用者が設定した人格を作り出し、説明書の本来の情報をより詳しく教えるための技能なのです。リミア様の世界でいうところの、学習する人工知能といいましょうか》
「ああそれで。でも僕設定なんてしていないんだけど」
《今回は事前に女神アリアが設定を行っていました。テーマは『寡黙で厳しめ、だけど純愛のメイド長』だそうです》
「訳が分からないよ」
もう寡黙でも厳しくもない頭の中の人工知能に怒りを通り越して呆れていた。
《それと、“脳内設定”について女神アリアから伝言を預かっています》
「…………言ってみて」
《では、「リミアちゃん、おっ久!これを聞いてるってことは脳内設定と色欲を見ることが出来たんだね、おめでとう。あ、そうそう“脳内設定”についてだったね。まあ、難しく言いたくないから、簡単に言うけど、決して裏切らない味方、そう考えるといいかも。それにメイド長設定だから凄く便利だと思うよ。あと、最後にセラちゃんに“許可する”って言ってあげてね」……これが女神アリアからの言葉です》
「聞きたくなかった。裏切らない味方って……味方が裏切っちゃ駄目でしょ」
さも当然のことを口にしたリミアはその場で項垂れた。アリアの伝言にも頭を悩ませるが、それもアリアの声で伝えられ更に頭を抱えていた。セラの伝言の時の声がアリアに酷似していたからだ。
セラは演技派だった。
《それとリミア様、もう一つ“脳内設定”についての伝言があります》
まだあるの?と顔を上げるリミア。このまま聞かなくてもいいような気がするが、それもそれで後々問題になっても困るので大人しく聞くことにした。
《では、「リミアちゃん、一人じゃ寂しいだろうからセラちゃんを作るようにアリア様に言ってあげたんだよ。だから、セラちゃんとは仲良くしてあげてね。あと、物凄く可愛いから」これが2件目の伝言です》
「…………それ誰が言ってるの?」
《それは、禁則事項です》
セラから聞いた伝言は、声はセラのままだったが、内容はアリアのものでは無かった。それに、その内容がリミア自身の心配をしている、好意にしている、それが最も分からない部分だった。
リミアの知らないその禁則事項の相手、それが誰なのか異様に気になっていた。
「うー…………知らないような知っているような感じなんだよね。ま、悩んでいても仕方が無いか。セラ、色欲についての説明をお願いできる?」
《はい。“色欲”も女神アリアがリミア様に与えた技能です。これは、異性同性問わず、全ての生物の意識を惹き付ける技能となっています。他にも、他人を故意に魅了して洗脳することさえ可能です》
「いらない、そんな能力、絶対にいらないよ!?」
元々男だったリミアは、女の色気なんて知らないし、この世界に来て色恋をする気になどなれなかった。理由としては、男だったリミアが男に惚れるなんて拒絶物で、女に惚れるのも何か違う気がする。つまり、今のリミアにとって“色欲”は本当にいらない技能だった。
洗脳など論外である。
《それと、こちらも伝言を預かっています》
「聞きたくない、けど……言って」
《分かりました。「リミアちゃんこれで君はモテ女まっしぐらだよ!良かったね!」》
「良くないよ!」
《それともう一つ》
「まだあるの」
《「リミア、見たぜお前の女の姿。すげぇいい女になってるじゃねえか。“色欲”ってのを勧めてやったのはこの俺様だから感謝しておけよ。まぁ、あんまりやり過ぎないことを祈ってるぜ」と》
「だから誰だよお前は!それにやり過ぎないようにって何をなんだよ……」
恐らく禁則事項などと言われ答えられないその人に、不満をぶつけるリミア。内容からして男だということは分かるが、それ以上は情報のないリミアには……
「……何故か心当たりがあるような」
そんな気がしていたそうな。
《以上が二つの技能の全容です。ご満足頂けましたか?》
「不満だよ、不満しか残らないよ!」
全く!と、涙目で答えるリミア。
《それで、リミア様。許可を頂けないでしょうか?》
「許可?ああ、最初の」
セラの申し出にあったねそんなこと、と答える。女神アリアからの伝言なので素直に従おうとは考えていなかったが。
「もし、僕がそれを言ったらどうなるの?」
《それは……禁則事項となります。言えることは言ってみれば分かるという事でしょうか》
答えになっていない答えを返すセラ。それに嫌な顔をしながらも仕方が無いと顔をあげる。
「じゃあ、許可する」
《感謝します。では“人化”開始致します》
すると、リミアの目の前に暴風が吹き荒れ始めた。
「え、うわぁぁあ!」
突然の暴風に戸惑い後ろに転げてしまうリミア。暴風は範囲を広げ海の家の中に並ぶ椅子やテーブルは横転し、砂浜の砂は舞い上がった。風に乗って砂が目に入らないようにリミアは両腕で目を庇う。暴風は徐々に範囲を狭めていき、終いには人の形を作り上げていた。
そして、暴風は爆ぜた音を轟かせ霧散した。そして、その中から一糸すら纏わない一人の女性が現れる。
髪は薄翠色、日本人形のように綺麗な肌を纏い、美しい作りとなっている無表情のその容姿。そこに埋め込まれた二つの薄金の瞳がリミアを見つめ微動にして動こうとはしなかった。
「えっと……もしかしてだけど、セラ?」
その名前を呼ぶと、無表情に徹していた女性の相貌は変わり、見るものを魅了する笑顔となった。
名前を呼ばれたことに対する喜び、そんな笑顔だ。
「はい、お初にお目にかかりますリミア様。私がリミア様のメイドをさせて頂くセラ・ハーベストです。今後とも宜しくお願いいたします」
そこでペコッと頭を下げる。
そして、頭を下げて3秒の後にセラは頭を上げて、主であるリミアに視線を移す。が、リミアは固まっていた。物事の飲み込みが間に合わず、思考がショートしてしまっていた。
「───────」
「リミア様?」
突然動かなくなったリミアを見て、セラは狼狽える。
だが、考えても見てほしい、散々訳の分からない状況に流され、気付いたら自分に仕えるメイドですと、絶世の美女が全裸で目の前にたっていたのだ。
男ならば絶句するだろう。
今は女なのだが。
「リミア様?リミア様?」
「───────」
その後、数分の間リミアの放心は続いた。
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感想、評価、追加待ってます。
やっと登場人物を増やすことに成功しました。セラは今後ともレギュラーにしていくので覚えてあげてください。