7話/無人島生活 ⒋
今日の一本目です。
許してください、僕はステータスというものを書きたかったんです!書いてしまったんです!
無人島の生活が5日目となった今日、リミアは狩りには出掛けず、以前からやりたかった事をやろうと考えていた。
開拓と魔道具の開発だ。
「最初は……」
最初に取り掛かったのは開拓だった。
今日しようと考えたのは畑仕事だ。昨日に大量の食料を手に入れ満足していたリミアだったが、そろそろ日本食に飢え始めていた。米が食べたい、味噌の味を堪能したいと、異世界転移をした日本人の良くある中毒症状だ。
そこで考えたのが畑で作るということだ。
まず種は固有スキル“物質創造”で作り上げる。種の種類は米、麦、大豆の他に、芋やキャベツなどの野菜に、林檎や桃などの果物も植えることにした。“物質創造”でそれそのものを作ればいいのでは?と考えたりはしたものの、物質創造は複雑なものを創造することは出来なかった。
その為の種だ。
種を作った後は畑を作る。
土は森の奥で中々に雑草が茂っていた場所の物を拾ってきて使うようにした。適度な日当たりの場所に“無限収納”から大量の土を広げていき、形を整えていく。土をほぐすために土魔法でかき混ぜ、土の状態を良くするために肥料になりそうなものを撒いたりもした。何を撒いたかは想像に任せよう。
「よし、次だね」
土があらかた出来てきたら種を植える。
種を一つ一つ植えるのは人間を辞めたリミアでも一苦労なので、魔法を使って埋めていく。空間魔法の一つで“転移”というものがある。それを使って種を地面の中に埋めていくのだ。これは技能のレベルアップに繋がり、且つ時間の短縮にも繋がる。
「よし、植えた終わった。次は成長だね」
リミアは種がゆっくり育つのを待つなんて出来はしなかった。使うのはまたしても空間魔法、その中の“加速”を使う。これは対象の時間を加速させる技能だが、人間や動物には使えなかった。もっと生命力の小さいもの、植物や死体などに使える能力だ。
種とそれを囲う土と対象として発動し、時間を5倍の早さで進めていく。すると、見る見るうちに種から芽が出始め、どんどん成長して実を出すようになる。
「止まれ」
実が出たものだけ時間を止める。これによって腐ることもなく、これ以上育つこともなくなる。いつでも収穫可能の状態だ。これを全ての作物にしておく。
これで田植えの開拓は終了だ。
経過時間、たったの30分という短さだった。
「念のために“結界”」
畑の周りに“結界”を張っておく。畑は森に近い場所で、動物に荒らされる可能性は大きかった。それを防ぐために結界と、その結界に付与魔法を付けておく。付与魔法にはリミア自身の気配を付与しておいた。これによって動物は近づきたくても近づいてこないだろう。
「海の家に帰るか」
畑仕事が終わった次は魔道具作りだ。
◇
魔道具
これは錬金魔法の技能を習得しているものならば、誰でも作成は可能なものだ。しかし、それは安易なものに限る。繊細で、複雑で、理解外の事は持っているだけのものには到底不可能な領域となるだろう。
そして、リミアは持っているだけの人間だった。
「それでも関係は無いけどね」
魔道具の知識など皆無なリミアだが、リミアには説明書というものがある。その薄い雑誌には当然の如く魔道具の作り方も載っていた。
物は試しに一度魔道具を作ってみたことがあった。それは海の家に置いてある冷蔵庫と、倉庫の一部である冷凍庫だ。この二つは魔道具で、蓄えた魔力が切れない限り動かなくなることは無い。魔力はリミア自身が週一のペースで入れていくつもりなので問題は無い。ちなみに、魔力を蓄える貯蔵庫は別に作り、そこから魔道具に魔力を送るようにしてある。発電所と考えれば早いだろうか?
そして、今日作る魔道具は身につけられて役に立つものだ。例えるならアイテムポーチなどではないだろうか。しかし、アイテムポーチはリミアが持つ技能によっていらない子扱いとなってしまい、他の物も同様になる可能性は非常に高い。
そういう事で、今回作るのは身に付けて、役に立って、且つリミアに再現できないものとなった。それは中々ありはしないだろうと考えられるが、一つだけ条件に一致しているものがある。
それは“示腕輪”と呼ばれる魔道具だ。
その用途は使用者の力を、技能を表すことが出来る。所謂ステータスを表示できる魔道具だった。ステータスは鑑定や解析でも覗けなくはないが、それでもレベルが低く覗けないのが殆どだ。それもリミアとなると技能が多過ぎて覗くにも欠片ほどしか情報が得られなかった。
そこで登場したのが“示腕輪”というわけだ。示腕輪は腕に装着するだけという簡単な作りで、魔力を通すだけで自身のステータスを確認することが出来る。この魔道具はこの世界では主流のもので、魔物と戦うものならば一人一つは必ず持っているのだという。(説明書より)
材料や制作も簡単で、材料は使用者の血と動物の骨、そして綺麗な水だけだ。血の量は本の一滴で足りる程度、綺麗な水は水魔法で生成したものでいいらしい。
最初に動物の骨を粉々に砕いて綺麗な水と一緒に混ぜるのだそうだ。そして、混ぜ終わった骨水を錬金魔法で固めて形状を腕輪にしていく。形状は腕輪ではなく、指輪やネックレスでも可能らしいのだが、やはり一番は腕輪らしいのでリミアも腕輪にしておく。
そして、腕輪の形となったそれに自身の血を一滴垂らして完成となる。
「簡単過ぎだよ……まだ5分もたってないのに」
余りの制作の早さに不満を漏らすリミアは渋々とした表情で示腕輪を左腕に通した。すると、示腕輪の大きさが変化し、外れないようにリミアの腕に合わさった。これも説明書に載っていたのだが、使用者が肌身離さぬように作られた機能だいう。どういう原理でなっているのかは最後まで分からなかったが。
腕に馴染んだ示腕輪を擦りながらリミアは魔力を通していく。すると、示腕輪から滑るように透明の文字がリミアの目の前に現れた。
「これが僕のステータス……」
リミアの目前に現れたのは透明の文字が陳列されたステータス画面だった。
name/ミリア・ハーベスト
種族 /邪龍族
職業 /魔術師
称号 /開拓者
◆Lv. 008
◆abirithi
筋力―2’100(+1’000)
俊敏―2’400(+1’000)
防御―102’200(+101’000)
技巧―210(+10)
魔力―10’000’000(+10’000’000)
◆skill
《normal》
・火魔法 Lv.1 ・水魔法 Lv.2
・風魔法 Lv.3 ・土魔法 Lv.3
・氷魔法 Lv.1 ・雷魔法 Lv.1
・光魔法 Lv.1 ・闇魔法 Lv.1
・回復魔法 Lv.2 ・錬金魔法 Lv.3
・空間魔法 Lv.3 ・召喚魔法 Lv.1
・付与魔法 Lv.1 ・重力魔法 Lv.1
・気技 Lv.1 ・解毒 Lv.1
・剣術 Lv.1 ・弓術 Lv.2
・投擲 Lv.1 ・鑑定 Lv.3
・索敵 Lv.1 ・遮断 Lv.4
《passive》
・魔力上昇(女神)・筋力上昇(小)
・俊敏上昇(小) ・防御上昇(小)
・技巧上昇(小) ・全属性耐性(極小)
・状態耐性(中) ・破壊不可(小)
・汚染不可(小) ・腐敗不可(小)
・無詠唱 ・料理
・建築 ・解体
《unique》
・技能創造
・物質創造
・最適化
・脳内設定
・色欲
「って、なんだよこれ!?」
リミアは自身のステータスを見て色々と突っ込みたい気持ちに駆られた。
まず、アビリティが以上に高過ぎる。防御と魔力に関しては桁が違い過ぎていた。他にも身に覚えがない技能がある。固有スキルの“脳内設定”と“色欲”の二つだ。
「なんだこれなんだこれ?それに、色欲って大罪の?しかも、脳内設定って…………」
リミアが混乱して口々に疑問を吐いていく。だが、それは間違っていた。何をというならば、何も知らずにその固有スキルの名を唱えてしまったのだから。
《固有スキル“脳内設定”発動いたします》
「なんでなんで────え?今なんて」
リミアが気づいた時にはもう遅かった。その瞬間、リミアの頭は割れると感じてしまうほどの痛みが発生して、記憶と情報の嵐が舞い上がった。余りの激痛にリミアは頭を抑え転げまわり、痛みが収まるまでそれは続いた。
「がぁあああ!…………治った?」
一分近く続いたそれは、また前触れもなく止まっていた。
しかし、痛みが止まったことよりも、リミアは自分の中に出来た違和感に戸惑っていた。頭が痛む前はそんなものは無かった。しかし、それは突然現れたのだ。リミア自身の中にあるもう一つの何かの存在は。
「君は誰だ?」
リミアは誰でもなく自分自身に問うように言葉を漏らした。そして、答えはすぐに帰ってきた。
《私は“脳内設定”を核にして作られた存在、名前をセラと申します。リミア様の為なら死ねる、そんな存在になっていこうと思いますのでよろしくお願いします》
頭の中で響いた声はまさしく、機械音に近い女性の声で。その声はそんな訳の分からないことを言っていた。
「………………わっつ?」
そして、リミアの口から零れたのは思考という概念を全く取り込んでいない素の言葉だった。
つまりは意味不明だということだ。
誤字脱字や、訂正箇所がありましたら感想にてお願い致します。
感想、評価、追加待ってます。
今回は内容がカルピスだった気が物凄くします。
今後はもっと色濃く行きたい…………
最初はセラの名前をアサにしようとしていましたが、変更しました。