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女神の娯楽に巻き込まれて  作者: 下記の種
2章→無人島編
4/16

4話/無人島生活 ⒈

 拝啓


 父さん、母さん、お元気ですか?僕は元気かどうかは分かりかねますが、何とかやっています。

 そちらはお変わりがないことをここから祈っています。



 僕は現在とある理由で、とある神様を名乗る方と出会い、ある場所で生活を送っています。ここを一言で表すのなら自然の溢れるいい場所と言えばいいでしょうか。



 拝啓。

 僕は今、異世界で無人島生活を送っています。







「どうしよう…………」


 無人島と呼ばれるその島の一角、広大で果ての見えない海に面した砂浜の上で全裸の美少女が体操座りの格好で項垂れていた。

 その少女の容姿は美しく、紫色に染まった髪は神聖的で、金に光る目は何ものをも見通すものがあった。そして、少女の周りには黒く滲み出る雰囲気が囲っていた。


 その少女の名はリミア・ハーベスト、異世界クレシアンに2体と存在しない希少な種族である邪龍族であり、前世は好きな女子に告白寸前まで迫って死んでしまった悲劇の男の子であった。

 事故で死に、女神と名乗ったアリアに無人島に飛ばされたリミアは絶望と諦めに挟まれ3時間もの間、後悔と怨念とストレスと膝を抱えて泣いていた。


 全裸で。


 膝を抱え始めた頃は、もう死のう、生きる意味なし、というか生きる価値無しと愚痴口に現実逃避をしていたのだが、もうなってしまったのはしょうがないと腹を括り生きることを決意した。

 

「まずは…………服が欲しいかな」


 周りを見渡し最初に呟いたのはそれだった。

 潮風に晒されていたリミアの体は少しベタつき気持ちが悪いという感触があった。今すぐにでも海に飛び込みたいという気持ちもあるのだが、その後も大変そうなので服を着ることを選んだ。


(あれだよね、あれ。…………怖いな)


 服を求めたリミアが最初に目をつけたのは砂浜に不自然に置かれたアタッシュケースに似た何かだ。色は普通の白で、何かの現場に使われそうなだなと想像してしまいそうなものだ。しかし、そのアタッシュケースに一点、それだけで触りたくないと感じてしまう文字が刻まれていた。


“リミアちゃんへ!”


 これだけでいい予感はしないと、頭を悩ませてしまう。

 このアタッシュケースはリミアが無人島に立つ原因となった女神からの贈り物だ。本人曰く、リミア用の服と武器、そして異世界で役に立つ説明書とやらを入れているらしいが、怪しいの一点張りである。


「爆発とかしないよね?……死なないよね」


 意を決したリミアは恐る恐るアタッシュケースの止め具を外し、ゆっくりと開いた。すると、中身は真っ黒な布に覆われており、中身がよく確認ができなかった。


(なんだろうこれ?)


 アタッシュケースの中に綺麗に折りたたまれ巻かれていた黒い布を手に取り広げてみるとその正体が顕になる。


「これって」


 それは服だった。リミアが着るために用意された服だ。その服自体はリミア本人も見た覚えがあり、地球でも良くとは言わない迄もある役職につく人ならば制服にすらなりうる服だ。

 リミアは暫くその服を着るかどうかを一生懸命に、残った男の意地として悩み続け、少し肌寒くなってきたのを機会に着ることとなった。


(着方が……こうかな?)


 若干戸惑いつつもその服を着ていく。まずは下着を、男の頃には着たこともない白の上と、白の下。下の方はガーターベルトとなっていて、履くのに若干の抵抗はあったものの、無表情無関心を貫きそれを履いた。

 そして、黒の服に腕を通し、スカートを靡かせ、残された白色のエプロンを身にまとい、頭にナプキンを乗せる。少し邪魔になっていた紫色の長髪は一緒に入っていた白色のゴムで後ろに縛りポニーテールの様にして完成だ。


「はは、似合っているのかな?」


 リミアが着たそれは、日本でとある地域で活発的に着られる制服の一つ、給仕服だ。


 つまりはメイド服である。


「気にしても仕方が無いし、続きだ続き」


 よし、と自分を鼓舞するようにガッツポーズを取りながら残りの荷物も確認していく。


 アタッシュケースに入っていた残りの物は肩にかけるタイプのショルダーバッグと、コンビニの雑誌コーナにありそうな週刊誌サイズの雑誌が一冊、そして怪しげな手紙が入っていた。

 どうやらアリアから手紙が送り入ていたらしい。とても読みたくない気持ちに苛まれながらも、これからの役に立つのかもしれないと割り切りその手紙の封を切って手紙を読んでいく。


『はいはい、どうですか無人島は。楽しんでいますか?心は踊っていますか?』


 怒りが踊っています。


『勝手に無人島に送ってしまったことに少しの申し訳のなさと、とある事情で手紙を書かせていただきました』


 本当にそう思っているのか?と疑問しか浮かんでこないのだが、考えても分からないので続きを読んでいく。


『メイド服は気に入ってもらえましたか?それは私が用意した最高級の服なので大切に扱ってください。なんと付与魔法(エンチャント)が付けられているのですよ。とても凄い効果の付与魔法が付けられていますが、詳しいことは一緒に入っていた説明書に載っていますから見てください。説明書はメイド服の下にありますからそれを、もう一つ一緒に入っていたバックはアイテムポーチという世にも珍しくはないものなのでそれも活用してください。以上が私からお伝えすることです。残りで聞きたいことがありましたら説明書までどうぞ』


 そこで一度区切り、空を見て目を瞑る。

 正直ここまで懇切丁寧に親切一択で手紙が書かれているなんて考えていなかったため、ギャップと肩透かしを貰った感じである。

 リミアはその場で少しため息を落とし、手紙を一旦アタッシュケースに戻そうとした瞬間、手紙が二枚重ねになっていたのに気がついた。


 丁寧に説明をしてくれた一枚の事もあり安心してしまっていたリミアにとってそれは唐突の不意打ちだった。


『あーあと、その島じゃあ普通に生きていけるだけの環境は揃ってはいるけど、地下にもの凄い楽しいものがあるから探してみてね。それと、私もリミアちゃんが島を出た時、会いに来るから、その時はよろしくね!親愛なる女神アリアより〜』


 ここで二枚目の手紙は終わっていた。

 リミアは少しの間その場で固まり、盛大に叫ぶ。


「絶対に来るなっ!」


 これは前世ですら出したことがないほどの、一瞬にして喉を痛めそうになったほどの絶叫だった。







「で、気づいたら2日目だよ…………」


 なんやかんやと時間が立ち、リミアが無人島に着いて約2日経った。その2日の間にリミアがした事と言えば狩りと探索、とそれだけである。


 この島は野球場6個分の広さがあり、探せば海の幸に山の幸が転がっていて、山菜は勿論手に入り、動物も何種類か生息していた。この2日で見かけたのは鳥と兎の大きくなったようなものだ。しかし、動物も地球の動物とは若干違っていた。地球と比べ攻撃的で、体色も茶色ベースではなく、色々な彩であった。


 狩りをする時にミリアが使ったのはアイテムポーチに収納されていた鉄製の帯剣だ。

 リミアがアリアから貰ったアイテムポーチとは、この異世界クレシアンで開発された魔法道具だ。魔法道具とは、地球でいえば科学の結晶と言うべきもので、道具に単略で省略された魔法をかけられ、安易にその道具を不思議なものに変えるものだ。あるものは魔力を使わずに暗闇を照らすランプを、あるものは物の収納を簡単にこなすカバンを、まあそんな感じである。

 

 そして、このアイテムポーチもその魔法道具の一つに入る。その効果は物により、アリアから受け取ったものは最上級に近いものなのだが、リミア自身は気づいてはいない。

 アイテムポーチは一言で言えば便利な四次元ポケットに似た何かだと考えれば良い。大抵のものはそのバックに入り、完全に生きたものは無理だが、死体や生命力の弱いものも収納出来るのだ。


 そして、アイテムポーチには鉄製の帯剣の他に無人島だけが書かれた地図が入っていた。気が聞いた話である。


 だが、しかし。

 未だにアタッシュケースの中に眠る説明書については手付かずの状態なのだ。

 理由は根本的、革新的、常識的なものなのだが、リミアはどうしてもそれを読む気にはなれなかった。

 嫌か予感と、嫌な気持ちが上回ったということだ。


 しかし、それも2日の終わりまでは続かなかった。それは、昼食の後の話である。

 その日の昼食は森でとってきたキノコと、川で釣った魚のスープもどきを作っていた。何を隠そう、アリアは料理ができる。そして出来上がったスープもどき(見た目はコンソメスープ)を一気にたいらげて、1時間の小休憩に入っていた時だった。


「お腹が、お腹が痛い……」


 突然、リミアのお腹に強烈な痛みが襲っだ。


「もしかして、当たった?毒だったの、あの紫色のキノコ」


 リミアがもしかしてと振り向いた先には禍々しいまでに紫色に染まってしまっているキノコが置かれていた。そのキノコが毒キノコなのは一目瞭然なのだが、同じ紫色と親近感が湧いてしまい採ってきたのだ。

 そしてそれが、質前的に当たったというわけだ。ちなみに、そのキノコはソクシノコと呼ばれたキノコで服用して1時間の後に必ず死んでしまう毒キノコだった。


「やばい、死んじゃう、死んじゃうよ。何か───」


 突然やってきた死の恐怖にリミアは、助かる方法はないかと、何かを探し始める。けれど運が悪くここには薬草の一つも置いてなどいなかった。薬草がこの島に存在していること自体はリミアも知るところなのだが、まだ要らないのだと何時でも取れるのだと放置していたのが周りに回ってきたのだ。


「やばい、頭もクラクラして、…………これって」


 頭痛や吐き気、視界の不慮に心臓の痛みが増えていき、とうとう地面を這いずることしか出来なくなっていた。そして、その時に目に入ったのが今まで放置してきた説明書の雑誌だった。


(もう、なりふり構ってなどいられない)


 そう頭をふり、生きるためにリミアは雑誌の表紙を捲っていく。雑誌は週刊誌と同等の薄さ、そして女神アリアの顔が印刷されていてとても迷惑なのだが、こういう事態を見越してかその対処も書かれていた。

 その対処とはリミア自身が女神アリアから授かったスキルを使うことである。


 固有スキル『技能創造(スキルクリエイト)


 これこそが、女神アリアから貰った二つのスキルの内の一つであり、リミアの無人島生活の苦労を切り開く希望(スキル)でもあった。



誤字脱字や、訂正箇所がありましたら感想にてお願い致します。

 感想、評価、追加待ってます。


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