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女神の娯楽に巻き込まれて  作者: 下記の種
1章→女神編
2/16

2話/ジャンケンは女神様の娯楽で

 

「もう1度、生きるだって?」


「ええ、哀れで可哀想な不運に愛されたような若い子供のあなたを転生転移担当の阿呆神から奪った権利で異世界に送ってあげる。もちろん生きた体でね」


 まず、突っ込みたいところは山ほど、海ほどあるが一応置いておくとしよう。

 

 このくそ女神が言うことが本当なら、僕はどうやら異世界転移に似た何かに出会ったようだ。

 うんこ女神の采配でだが。


 白くて広大な部屋、外見(が・い・け・ん)だけは地球にいた美女よりも上回るほどの美しさを持つ、この女神とこの状況を考えれば、異世界転移という話の真実は濃厚そうだ。

 無論、答えは決まっている。


「異世界に行く気なんてサラサラないよ。どうしても僕を生き返らせてくれるなら地球の方にして欲しいな。可愛い可愛い好きな女がいるんだからね」


 死んだことに未練はない、だが生き返るなら僕のことを好きだと言ってくれたナナの隣がいい。


「はっ?馬鹿じゃないの。地球にまた生き返るなんて無理に決まってるじゃない。それに異世界に向かってもらうのは強制だから」


 アリアは僕の話を聞くと、当たり前の様にそれを跳ね除けた。

 しかも“権利”と、選択肢を選べますよと暗に言っているような言葉を並べておきながら、強制ときた。


「君はそれでも女神か」


「何言ってるのよ。テンプレで出てくる女神なんて全員屑じゃない」


「自覚している!」


 尚タチが悪い。


「それに異世界に行くことが強制的なのは私の一存ではあるのだけれど、地球の地で生き返れないのは本当」


「どういうこと?」


「君は輪廻の話や、前世の話なんか知ってる?」


「まあ、少しくらいは」


 僕はこれでも読書家だ、輪廻や前世などの関連小説を読んだことは何度かある。



 輪廻とはこの世の生きかわり死かわりのことを指す。

 つまり、人は死んでもまた記憶を消去して1から生き直すことが出来るという意味だ。

 前世とは、その個人の生まれてくる前、その前の人生のことを指す。

 そして、輪廻は2回だけという条件があるだとかないだとか。


「そ、つまりあなたは2度輪廻を経験している。だから、もう地球で生き返って人としての人生を送るなんて100パーセント無理なんだから」


「そんな」


「付け加えるなら、例えできても私が面白くないからやらなーい。あ、それとあなたの前世はね面白いんだよ。時代は弥生時代、その時に何らかの儀式で生贄にされた赤ちゃん。前世は1年も立たない命だったわけね、ご愁傷さま」


 うざぃぃいいい!


 それに何なんだ、僕の前世とやらは。

 別に言わなくてもいいじゃないか、なんだよ赤ん坊って、しかも生贄にされちゃ恵まれなさすぎているだろう。

 笑えないよ。


「まあ、そんな可哀想なあなたにこの慈悲深い女神のアリア様が異世界に送ってあげるってわけ。いい?」


「……もし、僕が異世界に行かなかったらどうすのかな?」


「私が強制的に送るから、そんなの億が一にもないんだけど」


「おい」


 ふざけるな、なんで女神の一存なんだよ。

 さっき出てきた転生転移担当の神様はどこに行ったんだよ、その人の一存もあるんじゃないのか?


「送られなかったら、あなたの魂は再構築されるためにバラバラに破裂してクズゴミになって、誰かの魂と結合されるかな」


「よし、転移してやるよ」


 流石に粉々にされて他人とくっつけられるなんて嫌だ。


「してやるよじゃなくて、してもらえますか、でしょ?じゃあ、早速始めようかしら…………えーと、まずは世界の説明からだっけ?」


 アリアは僕の異世界行きを聞くなり突然現れた木製の椅子に体を預け1冊の辞典のような本を手元に取り出した。

 そして、ペラペラと目次と目標のページを行ったり来たりしながらホントにらめっこをしていた。


 じっとしていれば、可愛いんだけどな。


「もう、いいや!ほら説明してあげるからそこになおりなさい!」


「なおる?」


「座りなさい!」


 僕はとても、本当にとても癪だが、指を刺された椅子に座ることにした。

 僕も立っているのが辛いので妥協案だ。


「説明と言っても簡単にしかしないわよ。まずはこれから向かう世界は、クレシアンという場所で、地球と違って種族がたくさんいるわ。もちろん人間以外にもね。他にも剣と魔法の世界なんてのも書いてあるわね、覚えて起きなさい」


 どうやらこれから向かう異世界クレシアンは一般的なファンタジー世界のようだ。

 他種族あり、魔物もありだと言っていた。

 迷宮もあれば完璧だろうが、そこでアリアに迷宮は存在するのかを聞くとあると答えてくれた。

 むかつく応答だったが。


「後は…………まあ何とかなるでしょ」


「適当だね」


「あなたも男なら最低限の情報で生き抜きなさいよ。それはそうと面倒な説明は終わりいよいよメインイベントの開始よ。準備を」


 アリアが手のひらを合わせ2回ほど叩くと、転移部屋なるこの白い空間が歪み形を変えていく。

 椅子や辞典のようなものは消えてなくなり、僕とアリアの立つ白い地面は大きなステージに、周りはライトで怪しく光る観客席に。

 これではまるで某テレビの。


「これより、ドキドキ異世界優遇ジャンケン大会!ぱふぱふぱふ」


 また何か始まったようだ。


「このドキドキ異世界ジャンケン大会、略してジャンケン大会は」


「最初からジャンケン大会にしておけばいいじゃないか」


「シャラップ!」


 彼女の言っていることを指摘すると、怒ったようにこちらに向きに睨んで来る。

 あえて反抗はしない、後々が面倒だからだ。


「では、ルール説明を致します。こらからあなたは私とジャンケンをしてもらい、異世界で必要となる項目を勝った方が決めていけるというわけです」


「うん?つまりどういう事だ」


「つまり、勝った方があなたの今後を左右できるというわけ。ホワイトボードカモン」


 彼女が手を招くと、ステージの奥から地球でお馴染みのホワイトボードが現れた。

 ホワイトボードを持ってきたのは何故かバニーガールだ。

 もの凄く可愛い。


「こちらに書いてある項目を巡ってジャンケンをしてもらいます。よろしいですね?」


「なになに」


 僕はホワイトボードに顔を近づけ項目を見ると、このジャンケン大会の大切さを思い知ることになる。


・異世界での名前

・性別

・種族

・ボーナススキル

・ボーナスステータスup

・武器

・転移場所


 つまりだ、この項目ごとにジャンケンをして勝ったら方がその項目を自由にいじれるというわけだ。

 僕が勝てば安全安心の体とスキルを手に入れることが出来るが、もしこの女神が勝ったらと考えると頭が痛くなる。


「それじゃあ第一項目目『異世界の名前』を決めていこう!」


「別に名前はそのままでいいじゃないかな」


「あはは、異世界じゃ君たちの、特に日本人の名前は合わないのさ。聞いていると笑ってしまいそうになるほどにね。君もそう思うだろう?」


「思わなくもないけど、でも親から貰った名前を簡単に変えられない」


「まあ、勝てばいいんだし、文句を言いすぎるとこの項目もっと酷くするよ?」


「酷く?」


「例えば…………痛すぎる2つ名を付けよう!みたいなの?」


「よし、名前をさっさと決めていこう」


 2つ名とか嫌すぎる。

 なんてたって、僕の黒歴史の全盛期は中学2年生の頃なのだから。

 もう、あんな恥ずかしい思いをしたくはない。

 厨二退散。


「じゃあ、いっくよー!最初グー」


「最初はグー」


 アリアが手を出したので僕もそれにつられて手を出す。

 しかし、これって殆どは運となるんだよな?だったら全勝も出来るのではないか?


「「ジャンケンポン!」」


 2人は同時に出す。


「あ」


「うふふふ」


 僕は地球では必勝だったチョキを、相手のアリアはグーを出した。

 親友(たいち)は負けるわけがないと言っていたのに負けてしまった。

 それに、あの女神の笑顔が本当にやばい。一体どんな名前をつける気だ。


「何にしよっかな〜、何にしよっかな〜、ふふ、可愛い名前にしようかな?」


「せめて、まともなものにして欲しい」


「舐めてんの?まともな名前くらい私だってつけれるわよ。付けるかどうかは別だけど」


「この詐欺女神!」


 アリアは顎に手を当て考えるポーズをとって、僕の名前を考え出す。

 考えているその姿が意外にも真剣そのものであったので邪魔をする気にはなれなかった。

 もし、その真剣さがふざけ名前を作るためだったら後でぶん殴ろう。


「まだかい、女神?」


「うーむ、名前は保留にしておこう」


 保留?何でだ。


「ほら、ここで名前を決めちゃうと次の項目に影響が出るでしょ?」


「次の項目?」


 アリアの言葉に首を傾げ、僕は項目が書かれたホワイトボードに目をやる。

 すると、アリアの言っていることに納得が、同時に悪寒がした。


・性別


 なぜ男の僕にこんな項目が。


「な、なあ、別に性別は──」


「はい、出さない人が負け文句無しジャンケンポン!」


「え、あ、ポン!」


 僕はグーを出し、アリアはパーを出した。

 完全な不意打ちだ。

 この女神、僕を騙すためにわざとホワイトボードに注目させるような真似を、しかも得意げな笑顔だ。


「今のなしでしょ!」


「男が勝負に二言を残すの?」


「ねえ、神様仏様アリア様、貴女なら分かっておられますよね。性別は、な、ほら分かるよね、ね?」


「えー、そんなに煽てて調子に乗せても無理ですよ。私の性格はもうご存知なのでは?」


 ええ、ご存知ですよ、身をもって覚えたからな。

 それでも僕は賭ける、彼女があのトラックに轢かれそうになった男の子を助けた時の良心と慈愛を、僕に恵んでくれることを。


「まぁあ、あなたがどーしてもと言うのであれば考えなくもないですけど」


「あ、ああどうしても」


「本当に?」


「本当の本当だよ」


「全身全霊女神アリア様に誓って?」


「全身全霊の全てを賭けて女神アリア様に誓います!」


「それなら、日本人風の誠意を見せてください。分かりますよね?」


「…………ああ、見せてやるよ。日本男児の誠意を!」


 僕は腰を下げ、膝と手を地面に力強く叩きつけ、背筋を伸ばし、手を添え、頭を地面に付ける。

 見よ、これが日本男児の伝統『土下座』だ!


 恥や誇りは関係ない、男でいられなくなってはそれらも無くなってしまうのだから。

 一時の恥で済むのなら僕はその一時に全てをかける。


 さあ、どうだ女神、僕の決意は。


「いやぁ、ひくわ〜〜」


 僕が顔を上げると、アリアは微妙で嫌そうな表情を作ってそこに立っていた。

 ドン引きである。


「いや、ごめんね。本当に土下座なんてすると思ってなかったし。ほら、やめていいよ、もう見てらんないし。本当にごめんね」


「ぐ、ぐぬぬ」


 謝らないでくれよ!

 何でそんなに申し訳なさそうな顔をしないでくれよ、してしまったこっちが恥ずかしいだろ。

 あー、やめてくれよ、そんなしおらしい顔をしないでくれよ、こっちが悪いみたいじゃないか。


 僕は顔を背けながらゆっくりと立った。

 とてもじゃないがアリアと顔を合わせずらかった、凄く気まずい。


「じゃ、じゃあ約束通りにしてくれるんだよね」


「ええ、分かってるわよ。ついでに名前を決めちゃいましょうか」


「ああ!そうしよう!それがいいさ。でも、要求って訳じゃないが少しはかっこよくしてくれよ」


「分かってるわよ。私を誰だと思っているのよ。格好のいい名前の1つや2つはすぐに思いつくわよ」


「そうか、それは良かった」


 あまりの素直さに内心かなりビックリしてしまい、口元が疎かになってしまったが、素直ならば何も問題は無い。

 性別も男にしてくれると言ってくれたし、名前はあまり酷いものが来なければ何も言うまい。


 もし、頭を抱えてしまう程の駄作を作られたのならそれを名乗らずに新しい名前を自分で考えればいいはずだ。


 大丈夫だろう。


「決まった、あなたの名前」


「え、どんなの?」


「ふふ、あなたの異世界での名前は私の名前から少し取って、リミア。家名はオーデストと名乗っておきなよ」


「ぅん?」


 なるほど、家名はかっこいい。

 家名はこれ以上なくかっこいいが、はて名前は間違っていないだろうか。

 この名前はかっこいいと言うより可愛い寄りな気が、そうまるで女の子に付けてしまうような名前のような。


 あれれれれ?


「ねえアリア様、僕の名前間違えてない?」


「え?どの辺りが」


「あーいや、名前のところがですね、何故か女の子みたいな名前になってるんですけど」


「何言ってるの?みたい、じゃなくて、そうなのよ?」


「あはは、女神様も面白いジョークを言えるんだね。まさか、男の名前を女の子の名前と間違えようなんてレベルが違うな〜」


「いやいや、間違って無いから。君の名前はリミア・オーデスト、正真正銘の女の子だよ?」


「はっ!?君、僕の性別は」


「うん、君が言った通りにするのは面白くなかったから女の子にしておいた。有り難く思うんだね」


「な、いやいやでも僕は」


「それにもう女の子にしちゃったんだし。ほら、自分の姿を見なよ、鏡プリーズ」


 アリアがそう言って、手を二度叩くとステージの奥からホワイトボードを持ってきた同じバニーガールが鏡を持ってくる。

 何故バニーガールなのだろう、少し赤面しているし。


「どうぞ」


 そして目の前に置かれた鏡を見て僕は絶句する。

 鏡の中には紫色の髪を足元まで伸ばした超絶美少女がそこに立っていた。

 目は大きく少しつり目、それに反して口元は小さく顔の形は僕の母よりも整っていた。


 胸には2つの双丘があり、その膨らみは僕の通っていた高校の女子生徒にはない綺麗な形と、男子高校生が好みそうな大きさだ。

 出ているところは出て、引っ込むべきところは引っ込んでいる理想体型に、肌はスベスベで艶が出て、僕が少し動く度に体は艶めかしく色ついていた。


 簡潔に述べよう。

 鏡に映っていたのは超絶美少女になった僕だった。


 勿論、下の方をガッシリと触ったが変な感触と、変な声しか出なかった。

 

「な、何でこんな酷いことするだよ!君は女神なんだろ、だったらもう少し慈悲を」


「甘いよ、実に面白くないな。それは私の望む展開ではないよ」


 泣きかけた僕が女神に最後の訴えをすると、今までに無いほど畏怖を持ってしまう声に黙らされる。

 そこには今までの人間を遊んで楽しんでいた女神は居らず、威厳と慈愛に満ちた女神が立っていた。


 そして、女神は真面目な顔でこう言った。


「神は娯楽に飢えている、君は知っていたのかな?」


「は?」


 女神はこれまでに無い真剣な表情で続ける。


「永遠を生きる神はね、この天界という場所で娯楽に飢えているんだよ。体は永遠の精神体、だが心は初心を忘れない子供のようにね」


(それはそれで、質が悪い)


「だから私達は君達人間のことを玩具(オモチャ)としか認識をしていない」


「玩具だと?」


「ああそうさ玩具(にんげん)くん。今はちゃんなのかな?君達は私達の娯楽の為に存在している様なものなんだよ。それが理不尽なのは当たり前だしね。君を女の子にしたのだって、面白そうだから、だよ、それこそが|神様(理不尽)というものだからね。」


「それで僕は女の子に?」


「そうさ、だけどそうやって落ち込んで面白くない展開にはしないでよね。君は私に抗ってもらわなきゃ困るんだよ、自身のために、将来のために。何より私の娯楽のためにね」


 アリアは今まで通りに片手を出す。

 だが、それ以上に表情が真剣味を帯びていて、高がジャンケン、それなのにそう思えない。

 これが女神の本性なのか。


「ほら、ジャンケンだ。足掻いて私を楽しませてくれよ玩具(にんげん)ちゃん。」


「そ、そんな、君を楽しませるだけのジャンケンなんてする訳が!」


「ジャンケンをして私に勝たないと最後に君は強制的にネタキャラとなって異世界に送られてしまうよ?」


「なっ!?」


 言葉が詰まる。

 このままジャンケンを続けても彼女を楽しませてしまうだけだろう。だが、2度目の人生でネタキャラはそれ以上に嫌だ。


「あ、ああ、そんな事を言うならやってやるよ」


 そっちがその気なら僕だって使えるてはどんどん使っていく。


「ふふ、さぁ、私の娯楽の糧となってよね。飽きさせたら承知しないんだから」


「やだよ、史上最大のクソ女神。君はここで退屈にしていろ」


 僕は女神に対して拳を出し、勝負の続行を告げた。

 これは宣戦布告だ。


「僕は君の思い通りにならない」


 僕と女神の戦いはまだ続いている。

 残りの項目はあと、4つだ。

 


 誤字脱字や、訂正箇所がありましたら感想にてお願い致します。

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